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イベントレポート(AD)

Microsoft、データをビジネスの戦略的資産とするための分析プラットフォームを発表

オンラインイベント「Shape Your Future with Azure Data and Analytics」レポート

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 2020年12月3日(日本時間 12月4日)、Microsoftはオンラインイベント「Shape Your Future with Azure Data and Analytics」を配信し、Azure Synapse AnalyticsやAzure Purviewなどデータ分析に関する新しいAzureのサービスを紹介した。

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企業がDXで成功する鍵となるのがデータの分析力と予測力

 Microsoft CEO サティヤ・ナデラ(Satya Nadella)氏が画面に現れると「間違いなく、2020年は世界のすべての組織が困難に直面した年でした」と語り始めた。2020年の年明けとともに突然世界を襲ったパンデミックは、今もなお世界を苦しめている。欧米ではロックダウン、日本では自粛要請が繰り返され、誰もが公衆衛生と経済復興の狭間で難しい舵取りを迫られている。この難しい局面を乗り切るため、またコロナ禍後の復興と生き残りのためにイノベーションやデジタルトランスフォーメーションが欠かせないのは言うまでもない。

「Azure Synpse Analytics」を説明するMicrosoft CEO サティヤ・ナデラ氏
「Azure Synpse Analytics」を説明するMicrosoft CEO サティヤ・ナデラ氏

 近年Microsoftは繰り返し「テックインテンシティ(テクノロジー活用の強さ)」の必要性を呼びかけている。ナデラ氏によると、これには3つの側面に分解することができるという。1つ目はいかに自組織に最新テクノロジーを適用かつ統合するか、2つ目はいかに独自のデジタル能力を開発していくか、3つ目はテクノロジーとビジネスモデルの両方を信頼をもって調整し続けること。

 ナデラ氏は次のように力説する。「いまだかつてないスピードで物事が変化している今、テックインテンシティは組織で働く人々に力を与え、ハイブリッドな働き方ができる新しい文化を育成し、仲間とのコラボレーションを深めます。また顧客と従業員の安全確保、サプライチェーンの安全性向上、顧客との接点をスマートかつ仮想的に最適化し、新しいビジネスモデルを作ることにも寄与します。テックインテンシティで鍵となる要素が分析力と予測力です」

 過去のデータを収集して洞察を得る。さらに未来を予測し、計画を立てる。「分析力と予測力とは組織をリアクティブ(事後の受動的な行動)からプロアクティブ(事前の能動的な行動)に変え、現在の危機を乗り切り将来へと誘えるかどうかを左右するものです」とナデラ氏は説明する。実際にデジタルトランスフォーメーションの成功の主要な指標となるのが、組織の分析力と予測力を開発する能力とされている。

 大企業のリーダーの約半数がデータをビジネス資産と見なしていないという調査がある。ナデラ氏は「大事だと思っていないのではなく、資産として扱うプロセスや手段を持たないだけなのです。どんな組織もデジタルによるレジリエンス(回復力)や変革を実現するにはこの点を変えていかなくてはいけません」と話す。

 「Azureはデータと分析で無限のケイパビリティ(性能・可能性)を持つ、唯一のクラウドです」とナデラ氏は胸を張る。この1年でオペレーションと分析ストレージを再設計したという。そして満を持して正式版として発表したのが「Azure Synapse Analytics(以下、Azure Synapse)」。ビッグデータ、データウェアハウス、データインテグレーション、これらすべてを1つのソリューションとしてまとめた分析サービスだ。Azure Synapseは任意の規模で自由にクエリーをかけることができて、リアルタイムでの分析が可能となる。

 Azure Synapseは分析と洞察の土台という位置づけだ。マイクロソフトの各種サービスとも統合されている。Azure Machine Learningと使うことで高度なAIモデルを構築し、Azure Databricksと使うことでApache Spark環境でビッグデータ分析し、Power BIと使うことでインサイトにアクセスして可視化できる。なおDynamics 365 Customer InsightsのベースにAzure Synapseがある。最新鋭のSaaSアプリケーション開発にも役立ちそうだ。

 データ活用が進行していくと、課題として浮上するのがデータガバナンス。データがどこにあり、データがどんなデータが分からなければ、未来を正しく予測することはできない。加えて法令遵守も重要だ。こうしたデータガバナンスの問題を解決するためとして、ナデラ氏は「Azure Purview」を発表した。

 Azure Purviewは発見とカタログ作成のためのデータガバナンスサービス。オンプレ、マルチクラウド、SaaSのデータも含めてデータを発見できるようにマッピングする。加えてデータのガバナンスとコンプライアンスのリスクを評価するために必要な情報を提供する。ナデラ氏は「これまで不可能だった、エンドツーエンドのデータエステート(データを資産として活用する)を提供します」と話す。

 法令遵守に関してはAIを活用する。AIがデータを自動分類し、業界の規制などコンプライアンスに反していないかあたりをつける。Azure Purviewはマイクロソフトの機密情報保護のためのMIP(Microsoft Information Protection)と統合しており、すでにMicrosoft 365などで定義ずみの機密ラベルを適用することもできる。

Azure Synapseでペタバイト級のデータ分析を実施する企業が増加中

 データプラットフォームとしてのAzureの主要な強みとなるのが、データをビジネスの戦略的な資産とすることができる分析とAIの能力、それからビジネスニーズに応えるデータのガバナンスだ。この2つをより詳しく見ていこう。

 まずは分析とAI。先述したように、Azure Synapseはビッグデータ分析、データウェアハウス、企業のデータインテグレーションを統合し、1つのサービスとして提供する。クラウドネイティブの分析プラットフォームであり、開発のライフサイクル全体をカバーしているのも特徴だ。Microsoft Azure Data担当副社長のローハン・クマー(Rohan Kumar)氏は競合サービスに比べてAzure Synapseは「最大で14倍高速で、94%安価」と強調する。

「Azure Synpse Link」を説明するMicrosoft Azure Data担当副社長 ローハン・クマー氏
「Azure Synpse Link」を説明するMicrosoft Azure Data担当副社長 ローハン・クマー氏

 プラットフォームとして統合することで、運用がシンプルになることも期待できる。例えばデータのインジェスト(取り込み)、クレンジング、変換、あるいはセキュリティの許可をユーザーに与えるなど、単調だが運用に必要なタスクを簡単かつ直感的に処理できるようになる。

 サービスモデルが柔軟であるのも新たな特徴だ。サービスモデルには「サーバレス(Serverless)」と「専有ホスト(Dedicated)」の2種類があり、これをAzure Synapseはコスト効果が高いほうを自動的に選択して実行する。ユーザーがどちらかを選ぶ必要はない。

 マイクロソフトの既存サービスと深く統合され、利便性も高まるだろう。実際にAzure Synapseを使うには、AzureポータルからAzure Synapse Analyticsのワークスペースを作成してから、Synapse Studioを起動する。Synapse Studioからは直接Power BIを使えるだけではなく、自動でクエリー最適化が行われる。またAzure Machine Learningレジストリから直接Azure Synapseにデプロイできる。ここでデータを移動する必要はない。

 分析のデータと運用上のデータの隔たりを埋めることは長年の課題となっている。その解決策として出されたのがAzure Synapse Link。データがあるところからAzure Synapseへデータを橋渡しする。ETL不要、データベース側に負荷をかけることなく、ほぼリアルタイムの分析や洞察を得ることができる。現時点ではAzure Synapse Linkが使えるのはAzure Cosmos DBで、近いうちにSQL Databaseでも利用可能となる予定。

 クマー氏によると2019年にAzure Synapseが発表になって以来、ペタバイト級のワークロードを稼働させるユーザーは500%増加したという。Azure Synapseは大規模なデータをビジネスで活用するための土台となっていきそうだ。

 続いてデータのガバナンス。「私たちはデータガバナンスをデータアクセスの民主化ととらえています」とクマー氏は言う。マイクロソフトはデータがどこにあろうと、ユーザーが自社のデータをビジネスの戦略的な資産へと変換できることを目指し、Azure Purviewを発表した。

 クマー氏は事例としてポンプ製造の「グルンドフォス(Grundfos)」を紹介した。同社はAzure Purviewを全社的に活用し、社内の誰でもデータを活用できるような環境にしている。Azure Purviewで数十億ものデータ資産をスキャンして分類し、今では1万6000ものPower BIワークスペースがあるという。

 他にもデータ分析に関する数々の事例が紹介された。ファストファッションのスタートアップ「ミントラ(Myntra)」は顧客それぞれにカスタマイズしたおすすめを提供するために数千万セッションを運用し、小売の「ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(Walgreen Boots Alliance)」は2億もの品目の予測を毎日実施している。ヘルスケアの「フィリップス(Philips)」では病院や集中治療室にいる入院患者のバイタルサインや薬のオーダーなどのデータを収集することで、病気の致死率や治療期間や費用などの予測に役立てている。

 ナデラ氏は言う。「2020年を振り返ると、(パンデミックで)100%回復できるレジリエンスを持つ企業はないと分かります。しかし何が起きているか理解し、予測できて、リアルタイムに行動するために準備している企業がより早く回復できて、今後強くなれることでしょう」

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https://codezine.jp/article/detail/13355 2020/12/17 12:00

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