はじめに
ASP.NET 2.0とASP.NET AJAXにより、以前よりも作成できるWebページの幅が広がってきていますが、Visual Studio 2008では.NET Framework 3.5の機能が利用できるだけではなく、IDEとしての機能も大幅に向上しています。
そこで本稿では、正式版のリリースに先駆けて、Visual Studio 2008から利用できる新しいASP.NETの開発手法を予習していきます。前篇では、大きく進化したWebデザイナに触れ、後篇では、ASP.NET AJAXや、コーディングのサポート機能、LINQを扱うページの作成、新コントロールの利用方法などについて解説します。
対象読者
- ASP.NET 2.0を使ったことがある方
- Visual Studio 2008に興味がある方
必要な環境と準備
次のいずれかの環境が必要です。
- Visual Studio 2008 Beta 2(以下、VS 2008)
- Visual Web Developer 2008 Express Edition Beta 2(以下、VWD 2008)
インストーラの入手先
VS 2008およびVWD 2008は、マイクロソフト社のWebサイトからダウンロードできます。始めての方やExpress Editionをお使いの方は[Visual Studio 2008 Express Edition Beta 2 日本語版]を、Professional EditionやStandard Editionをお使いの方は、[Visual Studio Team System 2008 Beta 2 Team Suite 日本語版]を利用するとよいでしょう。
なお、VS 2008のインストーラはimg形式のイメージファイルで提供されるため、Daemon Toolsなどの仮想ドライブソフトを利用してインストールする必要があります。VWD 2008はexe形式のインストーラを入手できます。
ハードウェア要件
リリースノートによると、ハードウェア要件はそれぞれ次のようになっています。
- 最小 : CPU 1.6GHz、RAM 384MB、1024x768を表示できるディスプレイ、5,400RPMのハードディスク
- 推奨 : 2.2GHz以上のCPU、1024MB以上のRAM、1280x1024を表示できるディスプレイ、7,200RPM以上のハード ディスク
- Windows Vista上で実行する場合 : CPU 2.4GHz、RAM 768MB以上のハードウェアを推奨
- 最小インストールには、1.22GBの空きディスク容量が必要
- 完全インストールには、2GBの空きディスク容量が必要
- 最小 : CPU 1.6GHz、RAM 192MB、1024x768を表示できるディスプレイ、5,400RPMのハードディスク
- 推奨 : 2.2GHz以上のCPU、384MB以上のRAM、解像度1280x1024 のディスプレイ、7,200RPM以上のハードディスク
- Windows Vista上で実行する場合 : CPU 2.4GHz、RAM 768 MB
- 完全インストールには、1.3GBの空きディスク領域が必要
Visual Studio 2005からVisual Studio 2008へと進化した機能
VS 2008では、VS 2003からVS 2005へバージョンアップした時よりも大きなIDEの進化、機能拡張があります。中でも、ASP.NET開発を進める上で重要な項目を次にまとめます。
- .NET Frameworkのマルチターゲッティングサポート
- HTMLデザイナとフォームデザイナの変更点
- CSS管理/利用機能の向上
- マスタページの入れ子時のフォームビューア表示サポート
- JavaScriptのインテリセンスとデバッグ
- ASP.NET AJAXのサポート
- VS 2008上でのASP.NET AJAX Control Toolkitの扱い方
- インテリセンスの機能向上
- LINQ対応
- 新コントロールの追加(LinqDataSource、ListViewer、DataPager)
これから2回に分けて、これらの詳細を解説していきます。前篇では「.NET Frameworkのマルチターゲッティングサポート」から「JavaScriptのインテリセンスとデバッグ」までを紹介し、残りは後篇で紹介します。
.NET Frameworkのマルチターゲッティングサポート
VS 2002/2003/2005では、それぞれに対応するバージョンの.NET Frameworkでしか開発を進めることができませんでした。VS 2008で使用される.NET Framework 3.5は、3.0同様に2.0のCLR(共通言語ランタイム)を利用しているので、VS 2008では2.0、3.0、3.5の中から好きなバージョンの.NET Frameworkを選択して利用できます(マルチターゲッティングサポート)。
.NET Frameworkのバージョンは、VS 2008を起動後、スタートページから[Webサイトの作成](ASP.NET以外の場合は[プロジェクトの作成])を選択すると表示される[新しいWebサイト]ダイアログの、右上のドロップダウンリストで選択できます。
.NET Frameworkのバーションを選択することで、表示されるテンプレートの種類も変化します(図2)。
.NET Framework 2.0を選択した場合は、VS 2008のIDEの新機能を利用した開発ができるようになるのが最大の利点です(詳しくは後述)。
.NET Framework 2.0から3.Xへアップグレードする方法
.NET Framework 2.0で開発を進めていたけれども、途中で.NET Framework 3.Xへアップグレードする必要が生じた、というケースもあるかもしれません。VS 2008ではそれらに対しても柔軟に対応することができます。
メニューバーから[表示]-[プロパティ ページ]を選択すると、Webサイトのプロパティを設定するダイアログが表示されます。[ビルド]の[対象とする Framework]で、後から.NET Frameworkのバージョンを変更することができます(図3)。
目的のバージョンを選択して[適用]をクリックすると、VSが自動的にコンパイラや参照の設定を更新します。この際、「web.config」の記述も当然変更され(図4~5)、.NET Framework 3.5ではASP.NET AJAXやLINQを利用するためのアセンブリ参照なども追加されます。詳細は実際に確認してみてください。
また、.NET Framework 3.5を選択した場合は、ツールボックスの内容も変更されます(図6)。新コントロールとASP.NET AJAXの詳細は後篇で詳しく解説します。データに関するコントロールが新しく3つ追加されています。
お気づきの方も多いかと思いますが、.NET Framework 3.5から2.0へダウングレードさせることも可能です。ただし、この場合、.NET Framework 3.5のアセンブリ参照の削除やweb.configの修正などは、手動で修正しなければならない点に注意が必要です。