はじめに
Silverlight 3ではブラウザ外の実行、高度な画像処理機能、開発生産性といった内部的な変更はもとより、そのサイトを利用するエンドユーザーに最も深く関わってくるUIとそのデザインに関しても大きな追加と変更が行われています。
連載の2回目である今回は、Sliverlight 3で新たに追加されたコントロールについて、コントロールの概要とその使い方の解説を行います。
対象読者
Silverlightに興味を持っている方。
Silverlight 3で用意されているコントロール
Silverlight 3では多くのコントロールが事前に用意されているため、WindowsFormやWebFormのアプリケーション開発と同じように標準コントロールを中心としたユーザーインターフェイスの開発を行うことができます。
あらかじめ用意されたコントロールを利用することで、高い生産性の確保、リッチなUIの提供、統一されたアプリケーションの外観の提供といったメリットを受けることができます。さらにExpression Blendを使うことで簡単にコントロールのカスタマイズを行うこともできます。
ここではSilverlight 3で新たに追加されたコントロールについて、代表的なコントロールにフォーカスして解説を行います。
コントロールの提供形態
Silverlightのコントロールはその開発状況や利用頻度によって次の[表1]の3つの形態で提供されています。
提供形態 | 説明 |
Silverlight Toolkit | CodePlexで開発中のSilverlightのコントロール。品質はPreviewからStable(安定)を経て、Mature(成熟)となる。 |
Silverlight SDK | Silverlightの開発ランタイム。Toolkitで成熟のステータスになり、Runtimeに含まれなかったコントロール。 |
Silverlight Runtime | Silverlightのコアランタイム。Toolkitで成熟のステータスになり、かつ利用頻度の高いコントロール。 |
Silverlightのコントロールの採用ステップは[図1]のようになっています。
そのコントロールの機能が現在どの段階であるかは、Control Toolkitのソース上にあるドキュメンテーションコメントから確認することができます。
[リスト1]は、TabControlコントロールのドキュメンテーションコメントの一部です。
/// <summary> /// Handles the layout of <see cref="T:System.Windows.Controls.TabItem" /> /// objects on a <see cref="T:System.Windows.Controls.TabControl" />. /// </summary> /// <remarks> /// 略 /// </remarks> /// <QualityBand>Mature</QualityBand>
QualityBandがMature(熟成)にマークされていることが分かります。
Silverlight 3に含まれるコントロールが現在どの配布形態で提供されているかは、MSDNの「コントロールの機能別一覧」で確認することができます。
Silverlight 3で追加されたコントロールの一覧を[表2]に挙げます。
コントロール名 | 説明 |
AutoCompleteBox | テキストボックスにオートコンプリート機能を追加したコントロール。 |
TreeView | 木構造のデータを展開したり折りたたんだりしてツリー表示を行うコントロール。 |
SaveFileDialog | 保存するファイルの場所やファイルを選択するためのコントロール。 |
ChildWindow | 親画面の上に、モーダルダイアログを表示するためのコントロール。 |
Label | 画面に配置されたコントロールに対するキャプションやデータの検証結果、インジゲーターを表示するコントロール。 |
DescriptionViewer | 画面に配置されたコントロールに対するツールチップや、エラー情報の追跡を行うコントロール。 |
ValidationSummary | 検証結果の一覧を表示するためのコントロール。 |
DataPager | データのコレクションをページングするためのコントロール。 |
VirtualizingStackPanel | パネルに配置されるコントロールを仮想化し、表示対象のコントロールを効率よく実体化させるコントロール。 |
Frame | ナビゲーションフレームワークの各フレームを表すコントロール。 |
Page | ナビゲーションフレームワークのフレーム中に表示されるページを表すコントロール。 |
今回はいくつかのコントロールについて簡単に解説を行います。検証用のコントロールやナビゲーションフレームワーク関連のコントロールは今後の連載で詳しく触れていきます。
前にも述べましたが、今回追加されたコントロールはSilverlight Toolkitで開発されたものがほとんどです。Silverlight 3のBeta版までは、以下のコントロールも追加予定でしたが、完成度の問題から正式版のSilverlight 3には取り込まれませんでした。
- DockPanel
- WrapPanel
- Expander
- HeaderdContentControl
- Viewbox
- DataForm
- ExpandDirection
- ExpanderAutomationPeer
- LengthConverter
- StrechDirection
今回の採用は見送られましたが、どれも素晴らしいコントロールばかりです。特にDataFormコントロールはDataGridなどと組み合わせることでデータのメンテナンスページなどで大きな力を発揮します。
Silverlight Toolkitから派生したコントロールはSilverlight本体に組み込まれますが、新機能の追加やバグフィックスなどは変わらずSilverlight Toolkitでメンテナンスされます。Silverlight ToolkitはMsPLのライセンスで公開されているため、誰でもソースコードを見ることができます。
興味がある方はぜひSilverlight Toolkitのソースコードをダウンロードして確認してください。実際のコード以外にもコントロールのテストなども含まれているため、コントロールをカスタマイズする際などにとても参考になると思います。
Silverlight ToolkitはCodePlexで公開されています。