スマートフォンで遊ぶソーシャルゲームの
新たな形を目指した「忍者ロワイヤル」
DeNAでは、「Mobage」のゲーム開発者が利用できるクロスプラットフォームのスマートフォン向けゲームエンジンとして、「ngCore」を提供している。もちろん、自社でもngCoreを使ってソーシャルゲームを開発しており、これまでに「忍者ロワイヤル」「アクアコレクション」「牧場ホッコリーナ」「プティの王国」の4タイトルをリリース(2011年7月時点)。このうち小山氏が開発を担当したのは、アクションRPGの要素を取り入れた「忍者ロワイヤル」だ。
「忍者ロワイヤル」のベースはあくまで「ソーシャルゲームとしてスタンダードなスキーム」(小山氏)で、ミッションをクリアしてレベルを上げ、他のプレイヤーと協力したりバトルしながら、お宝を集めるというもの。しかし、スマートフォンならではのゲーム性やユーザエクスペリエンスが、ふんだんに盛り込まれている。
「今までにないような、スマートフォンで遊ぶソーシャルゲームの新たな形を目指した」と、小山氏は語る。
たとえば、タッチパネルの操作性を活かして、フリックで動かせるリストビューやポップアップなど、シーンに応じたインターフェイスを提供。従来のWeb版ソーシャルゲームのようなワンボタン操作の手軽さを「タップ」として残しつつ、スマートフォンの描画能力を活かしたシームレスなエフェクトなどの視覚効果を適用している。また、ユーザ同士のバトルでも、タップとスワイプによるアクションで、より臨場感のあるゲーム体験ができるように工夫。ほかにも敵から攻撃されるとカットインが入るプッシュ型の情報通知など、これまでのHTML/Flash/CSSでは踏み込めなかったインタラクションや“見た目の気持ちよさ”を大幅に向上させている。
制作期間は約5か月間、
エンジニア3~5人のコンパクトな体制で開発
ネイティブアプリやコンソールゲームなみのリッチな映像表現/インターフェイスを実現しながらも、「忍者ロワイヤル」の開発規模はかなりコンパクトに抑えられている。小山氏によれば、実質的な制作期間は5か月間ほど。エンジニアは当初3名でスタートし、β版完成後に増員して5名体制になったものの、小山氏を含む3名が新卒1年目(当時)エンジニアだった。他のゲームも同じような状況か、さらに少人数のチームもあったそうだ。しかも、当時はngCore自体がまだまだ開発途上であったため、ゲームそのものとゲームエンジンを同時並行で開発していたという。
「今のようにngCoreが安定していれば、次に新しいゲームを作るときにはもう少しスムーズに進められるはず」と、小山氏は振り返る。
なお、DeNAではngCoreの機能拡張を継続的に行っている。今年7月には、ゲーム開発用ライブラリの「ngGo」および、ngCore専用の統合開発環境「ngBuilder」をリリース。これらにはスマートフォン向けソーシャルゲーム開発でよく使う機能やツールが随時追加されていき、より効率的な開発が行えるようになるという。
最後に小山氏は、他のゲームエンジンに対するngCoreの優位性について触れた。
「マルチプラットフォームやハイパフォーマンス、プロダクティビティ(生産性)という点においては、ngCoreよりも優れた既存のゲームエンジンが存在する。重要なのは、開発するゲームのジャンルや規模にあったゲームエンジンを選ぶこと。たとえば、大規模で3Dを多用したコンソールゲームなどを開発するなら他のエンジンを使うべきだが、小~中規模で2DのゲームならngCoreのほうが小回りが効いて素早く開発できる。何より、スマートフォン向け、ソーシャルゲーム向けに最適化されていることが、ngCoreの最大の強み。今後も我々は、『スマートフォン向けのソーシャルゲームを作るのに一番役立つ』ゲームエンジンを目指して、ngCoreの機能強化を図っていく」
株式会社ディー・エヌ・エー