冒頭で、ガンホーの経営理念について「世界中の人が驚くような面白くて楽しいゲームをこれからも創っていきたいと思っている。ゲーム会社としてそれしかできることがない。これが本質で、正しいものだと信じてやっていきたい」と説明する森下氏。
森下氏が特に意識しているのが「チームが創る」ことだ。ゲーム開発では多くの人、モノ、金が動き、喜怒哀楽や成功失敗の場面が生まれる。それらをチームの皆で共有できるのがゲーム開発のすばらしさだと強調する。これを「ゲーム開発はドラマである。そしてゲームの数だけドラマがある!」と捉え、講演でも昨今のヒットドラマの名言を独自の解釈でアレンジしつつ、自身のゲーム開発に対する考えを示した。
ゲーム開発者にとって最大の楽しみは新作を考える事
まずは企画について。新しいゲームアイデアを考えるときは自由奔放で天邪鬼でなくてはいけないと語る森下氏は、自身の単純に面白さを追求する姿勢について小二病だとおどける。会議では笑い声が絶えず、いつも風穴をあけてやることを考えているそうだ。
遊びを創る上で大事な要素として、直感的な面白さ、常識に捉われない斜め上の思考、我が道を行くことを挙げた。特に3点目については、「業界ではデータ分析をしたがる人が多いが、それだけに流されてはいけない。マーケ活動は必要だが、あくまで人の言う事に流されず、自分が正しいと思う事を考える」ことが重要だとした。
また、開発者にとっての最大の楽しみは新作を考える事だという森下氏。それを裏付けるように、ガンホーでは計画的に年間何点ゲームを制作するというプロセスがなく、基本的に欲求ベースで、つくりたくなったときに予算外で創るという。そして「企画はプランナーだけのものではなく、デザイナーでもプログラマでも皆がやればいい。常に考えるクセさえ身につけておけば、自然とでてくるようになる」と補足した。
一歩踏み込んだところでは、検討しているゲームがどうなっていくかという成功のストーリー、いわば勝手な妄想を実現できそうな形でどんどん掘り下げていくことを勧めた。ヒットしそうだなというレベルまで昇華できたものは、実際にヒットしたとも述べている。
そして、森下氏が意識して避けているのが、成功体験に引きずられないこと。天邪鬼な発想にも通じるが、革新的なゲームデザインを生み出すには、パズドラといった成功した既存のフォーマットをぶち壊すくらいの考え方が必要。破壊と創造をしなければ、お客様の驚きに変わらない。必ず成功するとは限らないし、時代の流れやタイミングに当然左右されるが、常にこのスタンスは保ちたいとした。