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話題のあの人にインタビュー!

アジャイルアカデミー「アジャイルサムライの見積りと計画づくり」はどうやってうまれたのか?

アジャイルアカデミー講師:角谷信太郎氏インタビュー


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ここから先は分かるヤツだけ分かればいい

――ここから先は余談なんですけど、過去の角谷さんのインタビューはRubyに関するものが多くて、アジャイルの話をがっつりしているのは@ITのインタビュー「スーパーマンである必要はない」くらいなんですよね。最近はスーパーマンも悩んでましたけど(笑)。

角谷:「Even Kryptonians Get the Blues(*5)」ですよ。大きい正義みたいなのがないから、スーパーマンも悩んじゃう時代ですよ。スーパーマンじゃない僕らはどうすればいいのかと。スーパーマンですら定職にはつけないし、いろんな声が聞こえてきてお前らうるさい、とか(笑)。

――育てのお母さんに教えてもらった方法を使うしかない(笑)。

角谷:目の前のことにフォーカスして他人の声をシャットアウトしないとやってられない、と。きびしい時代ですね(*6)。

――でも、アジャイル開発ってプログラマがスーパーマンになることを求めているというか、見積もりもするし、計画づくりもするし、ステークホルダーとの調整もするし、テストも書くし、当然プログラムも書くし、いわゆる「フルスタック」な役割が必要になってきますよね。

角谷:大変ですよね。だからチームを作るんだと思っています。どうしたって得意/不得意はあるし、独りで全部を全部やるよりもチームで補完し合ったほうがいいと思っています。

――技術の高度化の問題もあると思います。例えば、機械学習なんかを扱う開発になると、短期間のイテレーションでは成果を出せない場合がありますよね。

角谷:そういうケースはカンバンのほうが向いてますよね。ちょうど私が監訳したカンバンの本が10月に出るんですよ(笑)。

――リンクを張っておきましょうか(笑)。『リーン開発の現場―カンバンによる大規模プロジェクトの運営』(オーム社)ですね。

角谷:イテレーション開発は、それまでの数か月とか年単位みたいな作業スケジュールへのカウンターとして2週間みたいな単位になっていると思うんですが、もちろんそこに収まらない領域はありますよね。2週間で作りきれない複雑なものもあれば、逆に2週間も待ってられない、作ったらどんどん出していきたい、みたいな現場もあります。状況にあわせて「イテレーションレス」で価値を届けるのはもちろん良い作戦だと思います。

――2010年代はカンバンですか。

角谷:そういうのが流行ってきた背景はよく分かります。

*5

 映画『カウガール・ブルース』(原題:Even Cowgirls Get the Blues)のもじり。

*6

 ここまでずっと映画『マン・オブ・スティール』の話です。

アジャイル開発で影響を受けた人物

――私の最後の質問としては、アジャイル開発で影響を受けた人はいますか?

角谷:ケント・ベック以外だと、誰だろうなあ。マーティン・ファウラーなんじゃないかなあ。ぶりきですよぶりき(笑)(*7)。

*7

――コプリエンは?

角谷:アジャイル開発を学んでた頃は、ケント・ベックとかマーティン・ファウラーとか、自分が翻訳を手がけたマイク・コーン、アンディ・ハント、ジョナサンとかが書いた本の影響を受けてますが、コープが「本に書かれていないこと」のロールモデルかもしれない。

――例えば、どんな感じですか?

角谷:ソフトウェアでパタンとかパタンランゲージをどう捉えたらいいかは、いろいろ本を読んでも確信を持てなかった。コープはどうもあれを本気でやろうとしているっぽいんですよね。彼に会って話をして「ソフトウェアでパタンってやれるんやなあ」ということがだんだん分かってきた。

――読者のみなさんがその気づきを得るにはどうすればよいですか?

角谷:うーん。コープと直接話をすればいいのかな?

――よく日本に来てますからね。今度も「Rakuten Technology Conference 2013」に来るらしいですから、そこで感染するといいと思いますね。

角谷:そうそう。直接会いに行けばいいんですよ。

――アジャイルのレジェンドみたいな人たちって、まだみんな生きてますからね(笑)。そういえば、デイヴ・トーマスも来るらしいですよ。って、なんだか楽天の宣伝みたいになっていますけど。デイヴからは影響は受けてないんですか?

角谷:デイヴは僕の人生にとって重要な人物なのですが、アジャイルに関して薫陶を受けたって感じじゃないんですよねえ。もっと広いコンテキストの話かなあ。Rubyだったり『達人プログラマー』だったり。『達人プログラマー』自体はアジャイル宣言の前ですよね。

これからのアジャイルの世界

――最後に事務局から無茶な質問が来てまして……「世界はどう変わりますか?」(笑)。

角谷:えっ。うーん。「何をやるか」を決める人が偉くて、プログラマは「キーボード叩くだけの要員」というソフトウェア開発に対する考え方は、変わりつつあるんじゃないでしょうか。XPの思想の実現に少しずつ近づいていっているのでは。

――ビジネスのスピードが変化していますからね。

角谷:まだまだいろんな取り組みは必要ですね。アジャイルな開発をうまくやりたかったら、当り前かもしれませんが、プロジェクトが始まる前から段取りをしなきゃいけないんですよ。プログラマがコードを書く段階になって「じゃあアジャイルでお願いします」だと遅い。

――こういう企画があって、予算が決まっていて、納期がココで、みなさんにお願いするので、アジャイルでお願いします、みたいな(笑)。

角谷:プログラマが自信を持ってプロジェクトを進められるようにしようと思ったら、そういう状況を盛り返すところからやらないといけないので、結局はオーバーヘッドが大きくなっちゃうと思います。

――その具体的なやり方については、角谷さんの研修を受けていただければと。

角谷:そうですね。私もまだ生きていますから(笑)。スーパーマンではないけれど「会いにいけるアジャイル開発実践者」ということで。

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この記事の著者

アジャイルアカデミー事務局(アジャイルアカデミージムキョク)

翔泳社の主催するアジャイルアカデミー事務局の中の人です。アジャイルアカデミーは、4半期に1度のペースであなたの現場に合ったアジャイルをスタートさせるための実践型ワークショップを1週間開催します。それぞれ1日完結コースですので、プログラマからマネジメントまで、皆様のご参加心よりお待ちしております。イベント詳細は公式ページから参照ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/7462 2014/01/17 10:36

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