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エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業

人材不足のIT業界が抱える課題と、エンジニアが生き残るために必要な2つの武器とは?

エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業 第1回


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慢性的な人材不足

 少し話は逸れますが、IT業界は慢性的に人材不足といわれています。経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、IT人材の不足数は17万人となっています。しかも、「IT人材白書2016」の調査結果を見ると、「不足している」という回答の割合は年々増えている状況です(図3)。

図3 IT人材の不足は拡大している(引用元:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果「日本のIT企業の人材の
図3 IT人材の不足は拡大している
(引用元:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果「日本のIT企業の人材の"量"の過不足【過去5年間の変化】」)

 そんな中、人材の獲得・確保方法についての調査を見ると、ユーザー企業やIT企業では「社内人材の活用」が占める割合が多くなっています。

図4 不足人材は自社で育てる傾向(引用元:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果「実施または検討中の事業変革・新事業・新サービスに必要な人材の獲得・確保方法」)
図4 不足人材は自社で育てる傾向(引用元:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果「実施または検討中の事業変革・新事業・新サービスに必要な人材の獲得・確保方法」)

 つまり日本のIT企業では、社内の人材不足を、社内の人間を育成することで解決しているのです。ではもう少し深堀りして、その育成される人とはどのような人か、見てみましょう。

IT業界は誰を育成しようとしている?

 プログラマやSEは理系出身者だけではありません。実際、文系出身でも現場で活躍しているエンジニアはたくさんいます。ここでも「IT人材白書2016」を見ると、IT企業におけるIT技術者の最終学歴で情報系を専攻している人は、半分にも満たない状況です。これは、ユーザー企業ではさらに少なくなります。

図5 IT企業の「情報系」出身者は約4割にすぎない(引用元:IT人材白書2016「IT企業IT技術者の最終学歴での専攻」)
図5 IT企業の「情報系」出身者は約4割にすぎない
(引用元:IT人材白書2016「IT企業IT技術者の最終学歴での専攻」)
図6 ユーザー企業の「情報系」出身者はもっと少ない(引用元:IT人材白書2016「ユーザー企業IT技術者の最終学歴での専攻」)
図6 ユーザー企業の「情報系」出身者はもっと少ない
(引用元:IT人材白書2016「ユーザー企業IT技術者の最終学歴での専攻」)

 IT企業であっても、新卒の入社時に求められる技術知識のレベルは低く、未経験でも特に問題ないことが多いです。就職活動の段階ではそれほど知識や経験を気にする必要はなく、ITに関する技術を学ぶのはOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が中心かもしれません。学生の頃にIT技術を学んでいない人の中には、業務で使ったことがない技術をまったく知らない人がいます。理系出身者でも、自分が日常業務で触れない分野は「知っているとは言えない」という人が多いのではないでしょうか。

 例えば、データベースエンジニアとして働いていると、ネットワークの構築については意外と知らないものです。しかし、本来はネットワークのことを理解していないと、しっかり性能を発揮するデータベースは設計できないものです。

 プログラミングは得意でも、社内システムばかり開発していてセキュリティに関する知識がほとんどない。コンピュータはソフトウェアとハードウェアが一体となっているにもかかわらず、片方しか分からない。組み込みソフトウェアの開発が中心でデータベースを使うことがなく、SQLを知らない。残念ながら、これらはよくあることです。

 しかし、社会人として経験を積んでくると、「知らなかった」では済まされない仕事が増えてきます。「学校で習っていないから知らない」といった言い訳も、もちろん通用しません。

変わらないITの知識×ビジネス視点

 人材不足のIT業界は、専門知識のない人でも採用し、場当たり的に育てる文化が根付いてしまっています。このような状況では、知識に偏りのあるエンジニアが増えるのは必然といえます。それにもかかわらず、これからのIoT時代には「事業全体を俯瞰できる能力」が欲しいなどと言います。

 さて、ここで話を元に戻します。不公平な気はしますが、業界にこのような問題がある以上、自分がしっかりしないといけません。事業全体を俯瞰できるようになる前に、まず自分を俯瞰してみましょう。IT業界で生き残るには、「自分にはどのような知識があり、どのような分野が苦手なのか」といったことを理解するのが第一歩です。自分のレベルや立場が分からないと、何が足りないのか気がつきません。自己スキルの棚卸し、つまり再確認することが重要です。

 ITに関する技術だけでなく、世の中のビジネスも変わっていきます。その中でも古びない知識を持っておくと、変化に対応できる可能性が高まります。さらには、社会全体を「ビジネス目線」で見て、あらゆる技術を組み合わせて「課題を解決できる力」があると理想的です。

 本連載では、今後のIT社会で生きていく中で求められる、ITに関する基本的な知識や考え方を、ビジネスと関連づけて考えていきたいと思います。

単行本化のお知らせ

 2016年12月17日に、この連載をベースにした新刊『エンジニアが生き残るためのテクノロジーの授業』が発売されました!

 ITとビジネスの関係、コンピュータ、ネットワーク、プログラミング、データベース、セキュリティ、人工知能など、本連載で解説した内容も含め、エンジニアなら誰もが知っておくべきテーマを一冊で学ぶことができます。

 IT業界でずっと活躍するために、本物の力を身につけよう。

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この記事の著者

増井 敏克(マスイ トシカツ)

増井技術士事務所 代表。技術士(情報工学部門)、テクニカルエンジニア(ネットワーク、情報セキュリティ)、その他情報処理技術者試験に多数合格。 ITエンジニアのための実務スキル評価サービス「CodeIQ」にて、情報セキュリティやアルゴリズムに関する問題を多数出題している。 また、ビジネス数学検定1級に合格し、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://codezine.jp/article/detail/9666 2016/12/20 15:51

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