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知っておきたいエンジニア豆知識

【2025年最新】インフラエンジニアの仕事内容とは?年収や必要スキルも解説


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 デジタル化が進む現代社会で、ITインフラはサービスやビジネスを支える不可欠な基盤です。インフラエンジニアは、この重要な基盤の設計から運用までを担う専門家であり、その需要は高まる一方です。この記事では、インフラエンジニアの仕事内容、必須スキル、年収、キャリアパス、そして効果的な学習法までを網羅的に解説。あなたのキャリアの可能性を広げるためのヒントを提供します。

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インフラエンジニアの仕事内容とは

インフラエンジニアが担当する具体的な業務

 インフラエンジニアは、企業や組織のITシステムを動かすための基盤(ITインフラストラクチャ)を設計、構築、運用、保守する専門家です。私たちの日常生活に例えるなら、電気、ガス、水道といった生活に不可欠なインフラを支える技術者と言えるでしょう。ITの世界では、この「生活基盤」がサーバー、ネットワーク、データベース、クラウド環境にあたります。

 主な業務は大きく3つのフェーズに分けられます。まず、要件定義・設計です。顧客のビジネス要件やシステムの規模、性能、セキュリティ要件などをヒアリングし、最適なインフラ構成を設計します。たとえば、Webサービスなら、アクセス集中に耐えられるサーバー構成や、データの安全性を確保するストレージ設計を考えます。

 次に、構築・テストです。設計書に基づき、実際にサーバーやネットワーク機器をセットアップし、配線や設定を行います。物理的な機器の設置だけでなく、OSやミドルウェアのインストール、ネットワーク設定、セキュリティ対策なども含まれます。構築後は、設計通りに動作するか、パフォーマンスに問題はないかなどを厳密にテストします。

 最後に、運用・保守です。構築したインフラが安定して稼働するように、24時間365日の監視や定期的なメンテナンスを行います。システムのパフォーマンス監視、障害発生時の原因特定と復旧、セキュリティパッチの適用など、安定稼働を維持するための多岐にわたる業務を担います。これらの業務は、システムの安定性を直接左右するため、非常に重要な役割です。

クラウド技術の進化とインフラエンジニアの変化

 かつて、企業のITインフラは、自社で物理的なサーバーを管理する「オンプレミス」が主流でした。しかし、今ではAWSやGoogle Cloudのようなクラウドサービスが一般的です。これにより、インフラエンジニアは物理的な機器の管理から解放され、より効率的な仕事に集中できるようになりました。

 クラウドでは、インフラの構築や設定をコード(プログラム)で自動的に行うことができます。これをInfrastructure as Code(IaC)と呼び、手作業のミスを減らし、よりスピーディにサービスを展開できるようになりました。

 また、開発と運用を連携させるDevOpsの広まりにより、インフラエンジニアは開発チームと協力し、スムーズにサービスをリリースできる環境を整える役割も担います。このように、インフラエンジニアの仕事は、単なる管理業務から、より高度で戦略的なものへと変化しています。

プロジェクトにおけるインフラエンジニアの重要性

 どんなに優れたサービスも、それを動かす土台が不安定では意味がありません。インフラエンジニアは、サービスが安定して動くための土台を築き、維持する極めて重要な役割を担います。

 例えば、Webサイトへのアクセスが急増した際、インフラがその負荷に耐えられなければ、サービスは停止してしまいます。インフラエンジニアは、こうした事態に備えて、事前に負荷に耐えられる設計を考え、テストを繰り返します。

 インフラエンジニアは、まるで建物の基礎や柱のように、サービスの安定性を陰で支える「縁の下の力持ち」です。インフラエンジニアの存在なくして、現代のデジタルサービスは成り立ちません。

代表的なインフラエンジニアの職種

サーバーエンジニア

 サーバーエンジニアは、ITインフラの中でも特にサーバーの設計、構築、運用、保守を専門とするエンジニアです。サーバーは、Webサイトやアプリケーションのデータ、プログラムを保存し、ユーザーからのリクエストに応じて情報を提供する「心臓部」にあたります。物理的なサーバーラックへの設置から、OS(LinuxやWindows Serverなど)のインストール、Webサーバー(Apache、Nginx)、データベース(MySQL、PostgreSQL)などのミドルウェアの設定まで、幅広い業務を担います。

 近年では、クラウド環境でのサーバー管理が増えており、AWSのEC2、AzureのVirtual Machinesといった仮想サーバーの構築・運用が主な業務となっています。これらの仮想サーバーは、必要に応じて柔軟にリソースを増減できるため、サーバーエンジニアは、パフォーマンス監視やコスト最適化を考慮した運用が求められます。

 また、サーバーのセキュリティ強化も重要な役割です。不正アクセスやマルウェアからサーバーを守るため、ファイアウォールやIDS(不正侵入検知システム)の設定、脆弱性診断、セキュリティパッチの適用などを継続的に行います。サーバーエンジニアは、システムの安定稼働を直接的に支える、非常に責任の重い職種です。

ネットワークエンジニア

 ネットワークエンジニアは、サーバーやコンピューター、その他のデバイスを相互に接続し、データ通信を可能にするネットワークの設計、構築、運用、保守を専門とするエンジニアです。ネットワークは、情報が流れる「道路」のようなもので、この道路がなければ、どんなに優れたアプリケーションも機能しません。ルーター、スイッチ、ファイアウォールといったネットワーク機器を扱います。

 具体的な業務には、ネットワークの要件定義、IPアドレス設計、機器の選定と設定、ケーブルの配線、そしてネットワークの監視とトラブルシューティングが含まれます。たとえば、オフィス内のLAN構築や、インターネットに接続するためのWAN構築、データセンター内のネットワーク設計などを行います。

 ネットワークエンジニアは、データの送受信速度や安定性、セキュリティを確保することが使命です。通信プロトコル(TCP/IPなど)に関する深い知識を持ち、ネットワークのボトルネックを解消したり、セキュリティポリシーを策定したりすることで、システム全体のパフォーマンスと安全性を高めます。クラウド環境では、VPC(Virtual Private Cloud)のような仮想ネットワークの構築や、ロードバランサーの設定も重要な業務です。

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そのほかのインフラエンジニアの種類

 インフラエンジニアの仕事は、サーバーとネットワークに留まりません。専門性に応じて、さまざまな職種が存在します。

 データベースエンジニアは、データベースの設計、構築、運用、チューニングを専門とします。大量のデータを効率的に管理し、高速に処理するためのスキーマ設計や、バックアップ・リカバリの計画策定などが主な業務です。Oracle、SQL Server、MySQL、PostgreSQLなどのデータベース管理システム(DBMS)に関する深い知識が求められます。

 セキュリティエンジニアは、ITインフラ全体をサイバー攻撃から守ることを専門とします。システムの脆弱性診断、セキュリティポリシーの策定、監視システムの導入・運用、インシデント発生時の対応などが主な業務です。最新のサイバー攻撃手法やセキュリティ技術に関する知識を常にアップデートする必要があります。

 クラウドエンジニアは、AWS、Azure、Google Cloudといったクラウドプラットフォーム上でのインフラ構築・運用を専門とします。サーバーレスアーキテクチャやコンテナ技術(Docker、Kubernetes)など、クラウド特有の技術を駆使して、スケーラブルでコスト効率の良いインフラを設計・構築します。IaCツール(Terraform、CloudFormation)のスキルも不可欠です。

 SRE(Site Reliability Engineer)は、開発と運用を横断する、比較的新しい職種です。自動化とソフトウェアエンジニアリングの手法を用いて、サービスの信頼性と可用性を高めることを目指します。運用作業の自動化、パフォーマンスの最適化、障害対応の仕組みづくりなどを通じて、サービス全体の品質向上に貢献します。

インフラエンジニアに求められるスキル

ネットワークとサーバーの知識

 インフラエンジニアにとって、ネットワークとサーバーの知識は最も基本的なスキルであり、土台となる部分です。ネットワークの知識では、データの送受信の仕組みを理解するために、TCP/IPなどの通信プロトコルに関する深い知識が不可欠です。

 例えば、インターネットに接続する際にどのプロトコルが使われ、どのようにデータがやり取りされているかを把握することで、ネットワークのトラブルシューティングやセキュリティ対策に役立ちます。

 また、ルーターやスイッチ、ファイアウォールといったネットワーク機器の機能や設定方法、さらにはサブネット化やルーティングといった概念も理解しておく必要があります。

 サーバーの知識では、OS(オペレーティングシステム)の理解が重要です。特にLinuxは、サーバーOSとして圧倒的なシェアを誇るため、Linuxコマンドラインでの操作、ファイルシステムの管理、ユーザー・グループ管理、プロセス管理などのスキルは必須です。

 加えて、ApacheやNginxといったWebサーバー、MySQLやPostgreSQLといったデータベースサーバー、そしてそれらのミドルウェアの設定やチューニング方法も知っておく必要があります。

 最近では、仮想化技術(VMwareなど)や、クラウド環境(AWS EC2など)でのサーバー構築・運用が主流であるため、これらの知識も求められます。これらの基礎知識がなければ、システムの設計、構築、そして何より障害発生時の迅速な対応は困難になります。

スクリプトやプログラミング言語のスキル

 インフラエンジニアの仕事は、かつてのように手作業で機器の設定を行うだけではありません。現代では、スクリプトやプログラミング言語のスキルが非常に重要になっています。特に、インフラの自動化や運用効率化の観点から、このスキルは欠かせません。

 例えば、日々のバックアップ作業やサーバーのログ分析、セキュリティパッチの適用といった定型的な作業を、スクリプトを使って自動化することで、人的ミスを減らし、作業時間を大幅に短縮できます。

 よく使われるのはシェルスクリプト(Bashなど)やPythonです。シェルスクリプトはLinuxのコマンドを組み合わせて、単純なタスクを自動化するのに適しています。一方、Pythonはより複雑なタスクや、AWS・AzureといったクラウドのAPIを操作する自動化スクリプトを書くのに非常に強力です。

 また、近年注目されているIaC(Infrastructure as Code)では、インフラの構成をコードで記述し、バージョン管理することで、再現性の高いインフラ構築が可能になります。TerraformやAnsibleといったツールを使いこなす能力も、現代のインフラエンジニアには必須のスキルとなりつつあります。これらのスキルを持つことで、インフラエンジニアは単なる運用担当者から、サービス全体の効率と信頼性を高めるソフトウェア開発者へと進化できるのです。

セキュリティに関する理解と対応力

 ITインフラは、サイバー攻撃の主な標的となります。そのため、インフラエンジニアにはセキュリティに関する深い理解と対応力が不可欠です。システムの脆弱性を放置すれば、情報漏洩やサービス停止といった重大なインシデントにつながり、企業の信頼を大きく損なう可能性があります。

 具体的なスキルとして、まずファイアウォールやIDS(不正侵入検知システム)/IPS(不正侵入防御システム)の適切な設定と運用が挙げられます。これにより、外部からの不正アクセスを防ぎ、システムの防御を固めます。また、SSL/TLSによる通信の暗号化や、VPN(Virtual Private Network)を利用した安全なリモートアクセス環境の構築も、重要な業務です。さらに、サーバーやアプリケーションの脆弱性診断を定期的に行い、発見された脆弱性には迅速にパッチを適用する必要があります。

 インシデント発生時には、ログを分析して原因を特定し、迅速に復旧させるためのインシデントレスポンスの知識も求められます。インフラエンジニアは、最新のサイバー攻撃のトレンドを常に把握し、防御策を講じることで、システムの安全を確保する「盾」としての役割を担います。

問題解決能力と論理的思考

 インフラエンジニアの仕事は、突発的な障害対応と切っても切り離せません。システムが停止したり、パフォーマンスが低下したりした際、迅速に原因を特定し、復旧させるための問題解決能力が最も重要なスキルの一つです。例えば、Webサイトの表示が遅くなった場合、サーバーの負荷、ネットワークの遅延、データベースのボトルネックなど、考えられる原因は多岐にわたります。

 この時、論理的思考が大きな武器となります。まずは、どこに問題があるのかを切り分けるために、システム全体を俯瞰して、段階的に原因を絞り込んでいきます。ネットワーク、サーバー、アプリケーション、データベースといった各レイヤーを一つずつ検証し、仮説を立て、それを検証する作業を繰り返します。

 また、日々の運用業務においても、常に効率化や改善の余地がないかを考え、より堅牢でスケーラブルなインフラを構築するための改善提案を行うことが求められます。複雑な問題を体系的に捉え、解決策を導き出す論理的な思考力は、インフラエンジニアとして成長する上で不可欠なスキルです。

インフラエンジニアに役立つ資格

おすすめの資格一覧

 インフラエンジニアのキャリアを築く上で、資格は必須ではありませんが、スキルを客観的に証明する強力なツールとなります。特に未経験からインフラエンジニアを目指す場合や、特定の技術分野で専門性を高めたい場合に有効です。

 まず、サーバー関連ではLinuC(Linux技術者認定試験)LPIC(Linux Professional Institute Certification)がおすすめです。これらは、サーバーOSとして主流であるLinuxの基礎知識から応用スキルまでを体系的に学べます。未経験者向けのレベル1からスタートできるため、学習のロードマップを立てやすいのが特徴です。

 ネットワーク関連では、CCNA(Cisco Certified Network Associate)が定番です。ネットワーク機器メーカーであるCisco Systemsが認定する資格で、ネットワークの基礎からルーターやスイッチの設定、トラブルシューティングまでを網羅的に学習できます。ネットワークの基礎を固める上で、非常に役立ちます。

 クラウド関連では、AWS認定資格が最も人気です。特に初心者向けにはAWS Certified Cloud Practitionerが、技術者向けにはAWS Certified Solutions Architect – Associateがおすすめです。これらの資格は、クラウドサービスの基本的な概念から、アーキテクチャの設計、運用まで、実践的な知識を問われます。Google Cloud PlatformやMicrosoft Azureにも同様の認定資格があります。

 セキュリティ関連では、情報処理安全確保支援士やCompTIA Security+が有名です。情報処理安全確保支援士は国家資格であり、高度なセキュリティ知識を証明できます。CompTIA Security+は、ベンダーニュートラルな資格で、セキュリティの基本的な概念から実践的な技術まで幅広くカバーしています。

資格取得のメリット

 インフラエンジニアが資格を取得するメリットは多岐にわたります。

 まず、知識の体系的な習得です。資格試験の学習を通じて、これまで断片的にしか理解していなかった技術や概念を、体系的に学ぶことができます。これにより、業務の全体像を把握しやすくなり、スキルアップにつながります。

 次に、スキルの客観的な証明です。資格は、履歴書や職務経歴書に記載することで、採用担当者や顧客に対して、一定以上のスキルレベルを持っていることを客観的にアピールできます。特に未経験からの転職や、フリーランスとして活動する場合に大きな武器となります。

 また、市場価値の向上にもつながります。特定の技術領域の資格を持つことで、その分野の専門家として認知され、より高い年収や良い条件での転職・契約が可能になるケースも少なくありません。多くの企業では、従業員に資格取得を推奨しており、報奨金制度を設けているところもあります。

 最後に、自信につながるという精神的なメリットも挙げられます。資格試験という目標に向かって努力し、合格することで、自身のスキルに自信を持つことができます。これは、日々の業務に取り組む上でのモチベーション向上にもつながります。

インフラエンジニアの年収・キャリアパス

経験年数別平均年収

 インフラエンジニアの年収は、経験年数、スキル、担当する業務、そして勤務する企業によって大きく異なります。

 まず、未経験から経験3年目のジュニアレベルでは、平均年収は350万円から500万円程度が一般的です。この時期は、サーバーやネットワークの基本的な構築・運用・保守業務を中心に担当し、基礎知識と実務経験を積むことが主な目標となります。クラウド環境での経験を積むことで、年収の伸びが期待できます。

 次に、経験3年から5年目の中堅レベルになると、平均年収は500万円から700万円程度に上昇します。この段階では、小規模なインフラ設計や、トラブルシューティングのリーダー的な役割を任されることが増えてきます。特定の技術分野(クラウド、セキュリティ、データベースなど)での専門性を高めることで、さらに年収を上げることが可能です。

 そして、経験5年以上のシニアレベルになると、平均年収は700万円から1,000万円以上も目指せるようになります。このレベルのエンジニアは、大規模なインフラプロジェクトの設計・マネジメント、技術選定、あるいは技術コンサルタントとして活躍します。SRE(Site Reliability Engineer)やDevOpsエンジニアといった専門職にキャリアアップすることで、年収1,000万円を超えるケースも珍しくありません。

スキルや資格による年収の違い

 インフラエンジニアの年収は、保有するスキルや資格によって大きく変動します。

 まず、クラウドスキルは、年収アップに最も直結する要素の一つです。AWSやAzure、Google Cloudといったクラウドプラットフォームの認定資格を保有し、実際に実務経験を積んでいるエンジニアは、非常に市場価値が高く、高待遇で迎えられる傾向にあります。特に、IaC(Infrastructure as Code)やサーバーレスアーキテクチャの設計・構築経験は、高い評価を受けます。

 次に、セキュリティスキルも年収に大きく影響します。サイバー攻撃が巧妙化する現代において、セキュリティに精通したインフラエンジニアの需要は非常に高まっています。ファイアウォールやIDS/IPS、WAF(Web Application Firewall)の運用経験や、脆弱性診断、インシデントレスポンスのスキルを持つエンジニアは、高額な年収を提示されることが多いです。

 さらに、自動化スキルも重要です。PythonやGoといったプログラミング言語を用いた運用自動化の経験や、Ansible、Terraformなどのツールを使いこなす能力は、業務効率化に直結するため、企業の評価が高くなります。

 これらの専門スキルに加えて、プロジェクトマネジメントスキルコミュニケーション能力も年収アップには不可欠です。チームを率いてプロジェクトを成功に導く能力や、顧客や開発者と円滑にコミュニケーションを取る能力は、より上位のポジション(ITマネージャーなど)を目指す上で必須となります。

キャリアアップのためのポイント

 インフラエンジニアがキャリアアップするためには、単に技術スキルを磨くだけでなく、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

 まず、専門性の深化です。サーバー、ネットワーク、クラウド、セキュリティ、データベースなど、インフラの各領域は非常に広範です。そのすべてを極めるのは現実的ではありません。自分の興味や市場の需要を踏まえ、特定の分野に専門性を深めることが重要です。例えば、「AWSのセキュリティに強いエンジニア」や「Kubernetesを使った大規模コンテナ環境の専門家」といった、独自の強みを持つことで、市場価値を高めることができます。

 次に、ビジネス視点の獲得です。インフラエンジニアは、サービスの安定稼働を支えるだけでなく、ビジネスの成長にどう貢献できるかを考えることが重要です。例えば、インフラのコストを最適化したり、新しい技術を導入して開発サイクルを短縮したりするなど、ビジネス目標に合わせた提案ができるエンジニアは、企業から高く評価されます。

 さらに、マネジメントスキルの習得もキャリアアップには欠かせません。技術的な専門家としてチームをリードするテクニカルリードや、プロジェクト全体を管理するプロジェクトマネージャー、あるいは組織全体のIT戦略を担うITマネージャーへとキャリアパスを広げるには、チームメンバーの育成、スケジュール管理、予算管理といったマネジメントスキルが必要です。

 最後に、情報発信も有効な手段です。技術ブログを書いたり、勉強会で登壇したりすることで、自身のスキルや知見を社内外にアピールできます。これにより、専門家としての信頼を築き、新たなキャリアの機会を引き寄せることができます。

他職種からの転職のケーススタディ

 インフラエンジニアは、IT業界の様々な職種から転職しやすい職種の一つです。ここでは、代表的なケーススタディをいくつか紹介します。

開発エンジニアからの転職 Web開発者やアプリケーション開発者が、インフラエンジニアに転職するケースは多く見られます。開発の過程でインフラの重要性を実感し、よりサービスの基盤に深く関わりたいと考えるエンジニアが多いです。開発経験があるため、DevOpsSREといった開発と運用の両方に精通する職種で強みを発揮できます。
ヘルプデスク・サポート担当者からの転職 企業のITヘルプデスクやシステムサポートの担当者が、インフラエンジニアにキャリアアップするケースも一般的です。日々のトラブル対応を通じて、サーバーやネットワークの基礎的な知識が自然と身についているため、スムーズに学習を進めることができます。
営業職・コンサルタントからの転職 ITソリューションの営業やコンサルタントが、より技術的なスキルを身につけたいと考えて転職するケースもあります。顧客との折衝経験やビジネス視点を持っているため、要件定義やインフラの提案といった上流工程で強みを発揮できます。

 いずれのケースでも、最も重要なのは、サーバーやネットワーク、OS、セキュリティといったインフラの基礎知識を体系的に学習することです。独学で書籍やオンライン教材を活用したり、インフラ環境を実際に構築してみるなど、実践的な学習を積み重ねることで、転職の可能性を大きく広げることができます。

インフラエンジニアの学習方法とリソース

オンライン講座と教材のおすすめ

 インフラエンジニアの学習を始めるにあたり、オンライン講座は非常に効果的なリソースです。多くのオンライン学習プラットフォームでは、サーバー、ネットワーク、クラウドといった各分野に特化した体系的なコースが提供されており、初心者でも一歩ずつスキルを身につけることができます。

 特におすすめなのは、UdemyやCoursera、edXといったグローバルなプラットフォームです。これらのサイトでは、世界中の専門家が作成した質の高い講座が豊富に揃っています。例えば、Udemyでは、「Linuxの基礎」「AWSの認定資格対策」「ネットワークの基礎」など、具体的なスキルを学べる実践的なコースが多数あります。動画形式で講師が丁寧に解説してくれるため、視覚的に理解しやすく、分からない点があれば質問することも可能です。

 また、国内のプラットフォームでは、Progateやドットインストールなどもおすすめです。これらは、インフラ自動化で使われるシェルスクリプトやPythonといった言語の基礎を、実際に手を動かしながら学べるのが特徴です。特にProgateは、スライド形式で直感的に学べるため、プログラミングやインフラに初めて触れる方でも楽しく学習を進められます。

 オンライン講座を選ぶ際は、コースのレビューや評価、講師の実績などを参考に、自身のレベルや目的に合ったものを選ぶことが重要です。

自習に役立つ書籍とリソース

 オンライン講座と並行して、書籍を活用することもインフラ知識を体系的に深める上で非常に有効です。書籍は、一度購入すればいつでも手元で参照でき、特定のテーマについて深く掘り下げて学習するのに適しています。

 クラウドに関しては、AWSやAzureの公式ドキュメントが最も信頼できる情報源です。しかし、最初から公式ドキュメントを読むのはハードルが高いため、入門書から始めるのが良いでしょう。また、CodeZineを運営する翔泳社からも、インフラに関する専門性の高い書籍が多数出版されています。

 書籍以外にも、技術ブログQiitaのような技術情報共有サイトも貴重なリソースです。現役のエンジニアが、実務で得た知見や新しい技術の検証結果を共有しているため、最新のトレンドや実践的なノウハウを学ぶことができます。

実践的なスキルを身につけるための方法

 インフラエンジニアは、座学だけでなく、実際に手を動かして経験を積むことが最も重要です。理論だけでは、実際の障害対応や設計はできません。

 最も手軽な方法は、クラウド環境の無料枠を利用してインフラを構築してみることです。AWSやAzure、GCPには、初心者向けの無料利用枠が用意されており、これを利用して仮想サーバーを立てたり、ネットワークを設定したり、簡単なWebサイトを公開してみることで、実践的なスキルを養えます。

 また、仮想化ツール(VirtualBox、VMwareなど)を使って、自分のPC内に仮想環境を構築し、Linuxサーバーを複数立ててみたり、ネットワークを組んでみたりするのも良い練習になります。自宅サーバーを構築してみるのも、非常に良い経験になります。

 さらに、ポートフォリオの作成もおすすめです。自分で考えたWebサービスを、企画からインフラ構築、公開まで一貫して行ってみましょう。例えば、簡単なブログサイトを構築し、そのインフラ構成をGitHubで公開するだけでも、転職活動の際に大きなアピールポイントになります。

コミュニティや勉強会の活用法

 学習のモチベーションを維持し、実践的な知見を得るには、コミュニティや勉強会への参加が非常に有効です。

 オンラインやオフラインで、インフラエンジニア向けの様々な勉強会やミートアップが開催されています。ここでは、最新技術の動向や、実際に現場で直面した課題とその解決策について、他のエンジニアと情報交換ができます。特に、CodeZineが主催する「Developers Summit(デブサミ)」のような大規模なカンファレンスでは、最先端の技術動向や開発事例に触れる貴重な機会が得られます。

 また、XなどのSNSを活用して、インフラエンジニアのコミュニティに参加することもおすすめです。同じ興味を持つ仲間を見つけたり、質問を投げかけたり、最新の技術情報が共有されたりします。

 コミュニティや勉強会に参加することで、一人で学習するよりも早く、深く知識を習得できるだけでなく、同じ目標を持つ仲間や、現役エンジニアとの人脈を築くことができます。これは、将来のキャリア形成において、非常に大きな財産となります。

まとめ

 インフラエンジニアは、Webサービスやアプリケーションが安定して稼働するためのITインフラの設計、構築、運用、保守を担う、極めて重要な役割を果たす専門家です。彼らの仕事は、サーバー、ネットワーク、データベースといったIT基盤を支え、サービス全体の信頼性とパフォーマンスを確保することにあります。

 近年、クラウド技術の普及により、インフラエンジニアの仕事は物理的な機器の管理から、より高度で抽象的なレイヤーへとシフトしています。Infrastructure as Code(IaC)やDevOpsといった新しい概念が重要となり、スクリプトやプログラミング言語を用いた自動化スキルも不可欠となっています。

 インフラエンジニアに求められるスキルは多岐にわたりますが、Linux、ネットワーク、セキュリティといった基礎知識に加え、問題解決能力論理的思考力が非常に重要です。また、資格の取得は、知識を体系的に学び、自身のスキルを客観的に証明する上で役立ちます。

 キャリアパスは多様で、経験を積むことでプロジェクトマネージャーやテクニカルリード、SREといった上級職へとステップアップでき、年収1,000万円以上も目指すことが可能です。

 インフラエンジニアへの道は、決して平坦ではありませんが、オンライン講座や書籍、コミュニティを活用し、実際に手を動かして学習を続けることで、着実にスキルを身につけることができます。もし、あなたがITの「縁の下の力持ち」として、サービスの基盤を支え、安定稼働に貢献することに魅力を感じるなら、インフラエンジニアは非常にやりがいのあるキャリアとなるでしょう。

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この記事の著者

ITエンジニア研究所(アイティーエンジニアケンキュウジョ)

ITエンジニアやソフトウェア開発にまつわる情報や豆知識をまとめて発信します。

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