はじめに
2010年9月15日、東京・新宿の翔泳社セミナールームにて、CodeZine編集部主催のセミナー「iPhoneゲームアプリ開発セミナー 人気ゲームアプリから見る3つの成功ポイント」が開催された。本連載では、セミナーの内容を企画編・プロモーション編・開発・製作編の3回に分けレポートする。
連載記事一覧
本稿では連載第3回目として、「iPhoneゲームアプリ開発セミナー 人気ゲームアプリから見る3つの成功ポイント~開発・製作編」の内容をレポートする。
「セッション3:開発・製作編」クオリティの作り込みが高評価を呼ぶ
最後のセッションは「クオリティアップ開発・製作編」と題して、宮川氏がiPhoneゲームを実際に製作するに当たって実践しているクオリティ向上策について説明が行われた。
「僕が考えるクオリティの条件とは、ユーザーの7割が『イケてる』と思うこと。これが必須条件になる」(宮川氏)
この「7割」という数字には、れっきとした根拠がある。App Storeでのユーザーレビューの平均評価は星の数で表されるが、これが「星3つ」だとランキングは下がっていってしまう。逆にこれが「星4つ」だと徐々に上がっていく。この「3つ」と「4つ」の境目が、7割のユーザーによる高評価なのだ。
こうした高評価を獲得するためには、ユーザーにネガティブな印象を与える要素を、徹底的に排除しなければならない。ユーザーのネガティブな反応には、大きく分けて3種類のものがあると宮川氏は言う。
ユーザーのネガティブな反応『分からない』『ダサい』『使いずらい』
「『分からない』『ダサい』『使いずらい』。この3つを言われるのが、一番こたえる。従って、そう言われないための具体的なクオリティアップの施策を講じなければいけない」(宮川氏)
1)「分からない」の改善策
まず「分からない」と言われないためにはどうすればいいか? 「何といっても、自分が作ったものを実際にいろんな人に見てもらうこと。これに尽きる」と宮川氏は説く。他人に自分が作ったアプリを実際に使ってもらい、どういう反応を示すかつぶさに観察する。そのとき、もし途中で操作が詰まってしまったとしたら、そこが「分からない」ポイントになるので、逐次改善を施していく。
こうして第三者による客観的な評価に自分の作品を積極的にさらすことで、操作性を洗練していくのだという。事実、宮川氏はiYamatoをリリースした際、一度はアップルの審査に完成品を提出したものの、猿楽庁の橋本氏から操作インタフェースの分かりずらさを指摘されたため、急きょ審査を中止して修正作業を行ったという。
2)「ダサい」の改善策
次にクリアしなければいけないのが「ダサい」だ。ダサいと言われないためにはどうすればいいのか? 卓越した腕前を持つ「神デザイナー」に頼んで、素晴らしい絵を描いてもらえばいいのだろうか? 残念ながら、答えは「No」だ。
「僕の経験から言うと、神デザイナーがすべてを解決してくれることはない。では、何をすれば『ダサい』と言われなくなるか? それは、徹底的に『アプリの振る舞い』を磨くことだと思う」(宮川氏)
具体的には「ロード時間を短縮する」「操作の手順数を極力減らす」「画面変化の見た目をスマートにする」。この3つのポイントを丁寧に作りこんでいけば、大抵の場合は「ダサい」とは言われないだろうと宮川氏は言う。
3)「使いずらい」の改善策
最後が「使いずらい」。こう言われないためには、逆に言うと「使いやすい」と思われるための工夫を凝らせばいいわけだ。
「使いやすいということは、長く使われるということ。では、長く使われるアプリにするためにはどうすればいいか? これも、実際に他人にアプリを使ってもらい、継続して使い続けてもらえるかどうか、実地検証してみるのが最も確実な方法だ」(宮川氏)
こうしたトライアルテストを行うことで、リリース前にバグを発見して事前につぶしておくこともできる。致命的なバグが残ったまま市場にリリースしてしまうと、使いやすさ云々以前の段階でネガティブな評価を付けられてしまう。
宮川氏がゲームを開発する際には、まずはこれら3つのポイント「分からない」「ダサい」「使いずらい」を徹底的につぶした後に初めて、グラフィックとサウンドを入れていくのだという。