はじめに
ASP.NET MVCはリリースから1年ごとにバージョンアップを実施し、遂に先日ASP.NET MVC 3(以下、MVC 3)がリリースされました。本連載ではASP.NET MVC 2から強化された点を紹介します。使用するVisual Studioのバージョンは2010です。
なお、ASP.NET MVCの基本的な開発については過去の連載を参照してください。
必要な環境
次の環境が必要です。
- Visual Studio 2010(Visual Web Developer 2010でもOK)
- ASP.NET MVC 3 RTW版
- Pubsデータベース
Visual Studio 2010(以下、VS 2010)のインストールは、Visual Studio 2010 Beta 2と変わりありませんので、『Visual Studio 2010 Beta 2を使ってみよう』を参考に行ってください。
ASP.NET MVC 3 RTW(Relase To Web)はマイクロソフトのページからダウンロードできます。インストールはウィザードに従って進めるだけです。
Microsoftが提供しているWeb PI(Web Platform Installer)は、マイクロソフトが提供する無償のOSSインストールサポートツールです。Web PIを利用することで、WordPressやDotNetNuke Community Editionなど無償で利用できるソフトウェアを選択してクライアント端末やサーバーに展開できます。Web PIはソフトウェアだけでなく、MVC 3や、WebMatrixなどのフレームワークや開発環境も簡単にインストールできるので、サーバー構築時やクライアント端末でのインストールに利用するのも1つの手です。
ASP.NET MVCはソースコードも確認できます。ソースコードはCodePlex上にあるので、気になる方はこちらも併せてダウンロードしてみるとよいでしょう。ダウンロードはCodePlexからできます。
今回触れる内容
本稿では、次の内容に触れます。
- ASP.NET MVC 3とは?
- MVC 2からの移行について
- 各種機能の簡易紹介
ASP.NET MVC 3とは?
MVC 3は、MVC 2の機能拡張版です。MVC 2との一番の違いはターゲットとなるフレームワークです。MVC 2は.NET 3.5でも開発ができましたが、MVC 3は.NET 4がターゲットになります。そのため、MVC 3の開発を実施したければ、Visual Studio 2010か、Visual Web Developer 2010を用意する必要があります(図1)。
注目点として、MVC 3では新機能や最新のライブラリを標準で利用できますが、それらは別パッケージとしても用意されているのでMVC 3開発以外でも利用できます。具体例を挙げると、jQueryやパッケージマネージャーのNuGet(詳細は後述します)はASP.NET Web FormやASP.NET Dynamic Dataアプリケーションでも利用可能です。MVC 3ひいてはASP.NET自身が拡張しやすく作られているため、このような独立したパッケージによる機能拡張が実現されています。また、RazorはMVC 3以外でもWebMatrixなどで利用できます。
それでは、続いてMVC 2からのマイグレーションについてご紹介します。
MVC 2からの移行について
MVC 2からMVC 3への移行はツールが用意されています。
ツールによるアップグレード
ASP.NET MVC 3 Application Upgraderをダウンロードし、実行します。このツールは、VS 2010で、.NET 4版のMVC 2で作成しているアプリケーションのみサポートしています。VS 2010を使用していても、.NET 3.5版のMVC 2アプリケーションはサポート対象外です。この方法を利用したい場合は、プロパティで.NET 3.5から.NET 4へとターゲットフレームワークを変更した後にツールを実行する必要があります。