リッチなUXの実現に大切なのは「技術を自由に選べる」こと
コンテンツ提供の潮流は、スタティックなものを一方的に送りつける形式から、インタラクティブな(双方向性のある)ものを前提とするようになってきており、開発者の重要性はさらに増している。そしてアプリケーションも、ブラウザ上、特にモバイルデバイス向けに提供されることが多くなってきた。これらを踏まえ、現在ウェブでこのようなニーズを満たすために広く使われている技術「HTML5」と「Flash」に、話の焦点を絞ると前置きした。
「会社設立以来、最もリッチなユーザー体験を追及してきており、その実現のための技術は開発者が自由に選択できる必要があると考えてきた」と、Adobeのスタンスを説明するWinokur氏。現在のミッションには、広範なプラットフォームやデバイスにアプリを配信することを据えており、その意味でFlashを使うことは非常にエキサイティングであるし、同様にHTMLの将来を推し進めることも重要だという考えを示した。
HTML5は、いずれユビキタスなものに
Adobeは、一貫した開発スタイルで、さまざまな環境向けのアプリにおいて、同様にリッチなユーザー体験を提供できる環境の整備を、Flash技術を中心に進めている。一方、HTML5でも、既にリッチなユーザー体験が実現できつつあり、参画しているAdobeを含めた広範なコミュニティに対して大きな利益を与えている。Adobeでは、進化を続けるHTML5は、いずれどこにでもあるユビキタスなものになると予想しており、今後も貢献・投資を続けていくと方針を示した。
取り組んでいるHTML5関連の技術としてまず紹介されたのは、3日に買収が発表されたNitobi Software社の「PhoneGap」。モバイルアプリ開発フレームワークの1つで、HTML・CSS・JavaScriptという標準的なWeb制作の技術で、さまざまなモバイルデバイス向けアプリの開発を可能にする。PhoneGap創設者の1人、Andre Charland氏は「オープンソースのPhoneGapは、無料でこれからもオープン。PhoneGap 1.1のリリース以後、Apacheソフトウェア財団への移行を考えていたが、Adobeが色々とコーチしてくれ、買収後もPhoneGapのソースコードはApacheソフトウェア財団に寄贈されることになった。非常に素晴らしいと感じている」と述べた。
PhoneGapを利用したものとして、Travelocityのアプリ(旅行者向け)、Orbium(パズルゲーム)、xero.comの会計ソフトアプリ、Untaped(ビール好きのためのアプリ)と、多彩な事例が紹介された。
また、モバイルデバイスごとに開発環境を構築する手間を省く手段として用意されている、有料のクラウドサービス「PhoneGap Build」も紹介された(こちらは提供元がAdobeになる)。あらかじめGitレポジトリに登録しておいたソースコードを同サービスが取り込み、各デバイス向けアプリを生成してバイナリで配信するという仕組みだ。昨日発表された新サービス「Adobe Creative Cloud」に、PhoneGap Buildのサービスも含まれることが併せて発表された。