IT機器が高度にネットワーク接続された我々の社会では、日常的に情報が発信消費されています。情報社会ではネットワークは不可欠であり、災害時には情報収集と発信が行える心強いツールです。東日本大震災を教訓として、災害時にITでは何ができたのかをここでは学んでいきます。
この文章には、東日本大震災当時を想起させる記述が含まれます。お読みいただく前にご留意ください。
リアルタイム情報が災害復旧を早める
前回『災害によるITインフラへの影響と情報発信の在り方(3)』では、震災後に何が起こっていたかについて見てきました。当時の情報と現在の情報を交えながら、災害を紐解いていきます。
災害時に通信事業者は被災した設備を迅速に復旧する必要があります。我々にとって通信手段は不可欠であり、さまざまな復旧活動を支える情報をやり取りするからです。しかし、まずは通信網を復旧させなければ始まりません。今回は、東日本大震災の発生直後に行われた通信事業者による通信網の復旧と、その情報支援について当時の情報から紐解いていきましょう。
災害復旧の作業担当者は、業界の違いに関わらず、被災状況を理解するための情報が必要になります(図1)。
しかしすべての情報を把握できることは少なく、また最初から情報の存在を知らない場合もあります。
当時の記録を紐解くと、2011年3月12日時点の都内交通網は完全に麻痺状態にあり、長距離移動が行えない状況であることが分かるでしょう(図2)。
災害発生当時、もっとも感動的だったデータ公開としてGoogle Crisis Reponse自動車・通行実績情報マップがあります(図3)。このマップでは24時間に通行実績のあった道路とそうではない道路を色分けしてくれていました。災害復旧のために遠距離移動が必要となる通信事業者の作業担当者にとって、移動できる道路の情報は災害復旧を早める貴重な情報であり、私自身もこの情報により作業担当者への情報支援が行えたことを記憶しています。