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PMがユーザーと向き合うための3つの視点とは?

プロダクトマネジメントの基本を学ぼう 第10回

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2020/08/06 11:00

 「プロダクトマネージャーはユーザーについて深く考えなければならない」と言われることも多いが、どのような観点でユーザーと向き合うと良いのであろうか。ただユーザーのニーズに応え続けるだけの、ユーザーの言いなりになっているプロダクトは成功しているとは言えない。本記事では、プロダクトの成功を念頭に置いたユーザーとの向き合い方について解説をする。

目次
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第9回「プロダクトグロースのいろは――PMが押さえておくべき成長戦略

プロダクトの成功にユーザーは必須

 どれだけ優秀なチームを集め、どんなに実装が優れていて、UIデザインが素晴らしいプロダクトであったとしても、ユーザーが価値を感じるものでなければ良いプロダクトだとはいえない。

 第3回で述べたとおり、「プロダクトが成功している」状態には一般的に3つの軸がある。

  1. ビジョンが実現されている
  2. 事業収益の最大化
  3. 顧客価値の最大化

 そして、この1~3の項目全てに共通するのが「ユーザー」である。上記の軸を言い換えると以下のようになる。

  1. ビジョンが実現されている →「ユーザー」の集合体である世界が、どうなっているか
  2. 事業収益の最大化 → 「ユーザー」が何にいくらを支払う、もしくは貢献するか
  3. 顧客価値の最大化 → 「ユーザー」が受け取る価値

 そのため、プロダクトの成功について考える上で、ユーザーについて考えることは避けて通れない。

ビジョンからユーザーを導き出す

 プロダクトをつくるときに、一般的には、マーケットインとプロダクトアウトの2つの考え方があると言われている。

 マーケットインは市場を分析し、既存のプロダクトで解消されていないユーザーの課題を探し、市場から競合とは別のアプローチでより良い解決策を提案する方法であり、市場すなわちユーザーが主語である。

 対して、プロダクトアウトはプロダクトを作る側が主語に立ち、自社の強みを活かして作ることができるものや、先にアイディアがあるものを作ることを指す。

 この2つは両極端に語られがちであるが、どちらかを選ぶものではなく、両方の視点で検討し、プロダクトとマーケットが適合する落とし所を探す必要がある。

 そして、どの道筋をたどったとしても、最終的に達成しなければならないのはビジョンである。ビジョン、すなわちそのプロダクトで達成する世界観とは、「誰を」「どんな状態にしたいか」の集合体であると言える。そして、そのビジョンを達成するための手段となるのがプロダクトである。

 ユーザーの言いなりになって必要だと言われたものを作ることも、ただ収益を最大化できる選択肢を取り続けることも、間違っている。プロダクトマネージャーはビジョンから「誰を」「どんな状態にしたいのか」の軸で、どのユーザーのどんな課題を解決するのかについて優先度をつけることが必要だ。

ユーザーにとっての価値を仮説検証する

 ビジョンから分解した「誰を」「どんな状態にしたいのか」といったプロダクトとしての要望を持つことも大切だが、もちろんそれがユーザーにとって価値がないものであっては絵に描いた餅でしかない。そのビジョンがユーザーにとって価値のあるものとなるように、ユーザーの課題と向き合う必要がある。

 ユーザーの課題と向き合うためのフレームワークには、バリュープロポジションキャンバス(下図)がある。ビジョンの分解となる「誰を」「どんな状態にしたいのか」の「誰を」に当たるのが下図の右側、「どんな状態にしたいのか」を実現するためのプロダクトについてが左側に当たる。

出典:https://www.strategyzer.com/canvas/value-proposition-canvas
出典:https://www.strategyzer.com/canvas/value-proposition-canvas

 バリュープロポジションキャンバスをもとに、ペルソナごとにユーザーの行動をマッピングするものには、カスタマージャーニーマップやサービスブループリントなどがある。ユーザーの課題は時間軸と共に変化するので、ユーザーの体験は点ではなく線で検討することが重要だ。ユーザーがプロダクト上で行動を次から次に続けていくことができるように、そして他のプロダクトではなく、そのプロダクトを使い続けてもらう理由を提供し続けなければならない。

 カスタマージャーニーマップやサービスブループリントといったフレームワークは横軸が時間の経過になっており、時間に沿ってユーザーとプロダクトがどのように行動するのかを記すことができる。ユーザーの課題を理解しているつもりになっていても、可視化してみることで新たな気づきが生まれることがあるだろう。また、プロダクトチーム内でユーザー理解に差があることにも気がつくかもしれない。

 そして、これらのマッピングで検討した「そのプロダクトを使い続けてもらう理由」はプロダクトチームに閉じた検討であるうちは仮説である。ユーザーインタビューや、MVPでのユーザーリリースを通して仮説検証を繰り返し、本当にユーザーにとって価値を提供できているのかを確認する。


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著者プロフィール

  • 及川 卓也(オイカワ タクヤ)

     早稲田大学理工学部を卒業後、外資系コンピューターメーカーに就職。営業サポート、ソフトウエア開発、研究開発に従事し、その後、別の外資系企業にてOSの開発に携わる。その後、3社目となる外資系企業にてプロダクトマネージャーとエンジニアリングマネージャーとして勤務後、スタートアップを経て、独立。2019年...

  • 曽根原 春樹(ソネハラ ハルキ)

     Fortune500系外資企業に入社後、SE、カスタマーサポート、マーケティングなど様々な役職を日米で従事。その後シリコンバレーでプロダクトマネージャーに転身。B2B、B2C領域で米系大企業・スタートアップの双方でプロダクトの世界展開に携わる。現在はSmartNews社米国法人にて日本のスタートア...

  • 小城 久美子(コシロ クミコ)

     toC向けサービスを提供するWeb系企業に入社し、その後いくつかの企業で新規事業の立ち上げなどにエンジニア、スクラムマスターとして携わる。どう作るかより何を作るかに興味関心が移り、プロダクトオーナー/プロダクトマネージャーに転身。プロダクトマネジメントについてより深めるために、2019年よりTab...

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