組織的にUXリサーチを活用できるようにするには?
プロダクトマネージャーに贈る、UXリサーチの入門と実践~ユーザーとともに価値あるサービスをつくるヒント~ 第7回
UXリサーチの事例を紹介した前回で、具体的なUXリサーチの実践がどのように進むのかをイメージできたのではないでしょうか。最終回となる第7回では応用編として、UXリサーチに関わる人を増やして組織的に活用し続けられるようにする方法を紹介します。まずは一度引き込む、継続的な関係を構築する、より広く・多くの人に認知してもらう、UXリサーチを文化にする、という段階に分けて仲間の増やし方を見ていきましょう。
本連載について
この連載は翔泳社から8月に刊行された書籍『はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために』の一部を先出しする形で2021年6月から開始したものです。この連載を読んで実践してみたいと思った方は、ぜひ書籍も手にとっていただければうれしいです。
UXリサーチを始めたばかりのころに、いきなり多くの人を引き込むことは難しく、たとえ引き込めたとしてもあなたの負荷が増えてしまうこともあります。あなたの状況や組織には、どの段階が適しているかを考えながら少しずつ引き込んでいくことを考えましょう。

まずは一度引き込んでみよう
どの段階を目指すにしても、まずは UXリサーチの活動に一度引き込んでみることから始まります。そのために3つの方法を活用できます。

UXリサーチという単語を使わず、相手の視点から説明する
サービスを作りたい人にとって、UXリサーチは手段の一つです。なぜUXリサーチという手段を用いると良いのかを引き込みたい相手の視点から語りましょう。例えば「事業上に◯◯という課題があり、それを解決するには◯◯を明らかにする必要がある(からUXリサーチを活用する)」といった具合です。
関係者が「目的を達成できそうな手段だから使ってみたい」と思えれば良いのです。「なぜ、何のためにやるから価値があるのか」を関係者に理解してもらうことを優先します。自分の抱えている課題解決につながると分かれば、やってみようという気持ちになりやすいものです。その理解を妨げるぐらいならUXリサーチという単語を積極的に使わなくても良いでしょう。
小さく実績を作って共有しながら、おすすめする
UXリサーチの効果を体感してもらうには、まずは小さくても実績を作ってから共有することも効果的です。例えば、ある目標数値を達成するためにサービスの改善案を考えているチームがあるとします。まずは小さくユーザビリティテストをして、見つけた課題に対して改善案を考えていきます。さらに、A/Bテストをして改善案のほうが良いという結果を量的に示せれば、ユーザビリティテストがチームの悩みの解消に役立つことを実感できるはずです。
ただ、1回で大きい実績を作ろうとせず、小さく繰り返し試せるようにしましょう。そのほうがUXリサーチの実績も、引き込み方のノウハウも蓄積しやすくなります。小さく繰り返しながら、あなたなりのうまく引き込めるやり方をつかんでいくことがおすすめです。
キックオフとラップアップで関わりやすい雰囲気を作る
関係者がUXリサーチにさまざまな関わり方ができるようにしておくことも大事です。それによって、関係者がUXリサーチに関わってみようと思える雰囲気を作れます。いきなり全部に関わるのではなく、最初は部分的に参加してもらえるだけでも良いのです。ここでは、UXリサーチに関わりやすい雰囲気作りにつながるキックオフ・ミーティングとラップアップ・ミーティングという方法について見ていきましょう。
まず、UXリサーチのプロジェクトを立ち上げるときに行うのがキックオフ・ミーティングです。UXリサーチが必要な状況を理解し、関係者との期待値をすり合わせ、スケジュールも具体化し、プロジェクトの始まりと終わりを明確にします。その上で、UXリサーチにはさまざまな関わり方と、それぞれにメリット・デメリットがあることを共有します。関係者の都合を考えず、何でも深く関わってもらえば良いというわけではありません。誰がどのような関わり方をするとUXリサーチを有効に活用できるかを考え、適切な関わり方をおすすめできるように心がけましょう。
次に、UXリサーチを実施した後に行うのがラップアップ・ミーティングです。これは調査結果を共有し、活用を促すために行います。UXリサーチに積極的に関わる時間がなかなか取れなかった人にも、「結果共有の場だけでも参加しませんか?」と広く呼びかけましょう。ラップアップ・ミーティングに参加してもらうことで、UXリサーチへの参加度合いによる情報や解釈の差を減らす効果もあります。ミーティングを準備したり、共有するための情報をまとめたりすることは手間がかかりますが、調査結果の活用を促す上で欠かせない部分です。
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草野 孔希(株式会社メルペイ)(クサノ コウキ)
電気通信大学大学院修士課程修了後、通信事業会社の研究所に入社し、デザイン方法論の研究および研究知見を活用したコンサルティングに従事。同時に社会人博士として慶應義塾大学院大学システムデザイン・マネジメント研究科にて博士後期課程を修了 博士(SDM学)。2018年11月にUXリサーチャーの一人目として...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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松薗 美帆(株式会社メルペイ)(マツゾノ ミホ)
ICUで文化人類学を専攻し、2014年株式会社リクルートジョブズへ新卒入社。HR領域のデジタルマーケティング、プロダクトマネージャーを経てUXリサーチチームの立ち上げを経験。2019年より株式会社メルペイにUXリサーチャーとしてジョイン。JAIST博士前期課程在学中。
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