「調査」と「仮説検証」を混同して扱っていませんか?【はじめてのプロダクト・ジャーニー】
ストーリーで学ぶプロダクトづくり「はじめてのプロダクト・ジャーニー」 第6回
この連載では、書籍『カイゼン・ジャーニー』『チーム・ジャーニー』『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー』をもとに、「プロダクトマネジメント」と「プロダクトチームの運営」について、ストーリーと解説を織り交ぜた形でお伝えしていきます。これらの書籍ではまだ語られていない、プロダクト作りに必要なプラクティス(工夫)や観点についても扱っていきます。第6回は、「調査」と「仮説検証」との違いについて詳しく解説します。
- 書籍『カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで』
- 書籍『チーム・ジャーニー 逆境を越える、変化に強いチームをつくりあげるまで』
- 書籍『デジタルトランスフォーメーション・ジャーニー 組織のデジタル化から、分断を乗り越えて組織変革にたどりつくまで』
- 連載一覧(目次)
「調査」と「仮説検証」は別のもの
この物語の主人公は、プロダクトマネージャーを志望する名越(なごし)さん。新たにプロダクトを作り始めるために結成されたチームのリーダー的な役割です。

名越(なごし)
この物語の主人公。もともとは大きな企業にいたが、プロダクトマネジメントの経験を積みたくて転職してきたプロダクトマネージャーの見習い。開発の経験はほとんどない。
チームメンバーは同期の小袋(こぶくろ)くんと、後輩の朝比奈(あさひな)さんの3名。3人のメンターとして袖ヶ浦(そでがうら)さんというマネージャーもチームに参画しています。名越さんたち3人は、実践を通してプロダクトマネジメントを学ぶ日々を送っています。
「だいぶ、調査が進んだようですね」

袖ヶ浦(そでがうら)
チームの面倒を見ることになったマネージャー。冷たい雰囲気が漂う。
僕たちのリサーチ資料を眺め終えた後の、袖ヶ浦さんの一言に僕たちは目を丸くさせた。はじめて袖ヶ浦さんからポジティブなフィードバックが返ってきた。
「はい! この3か月デスクトップリサーチに社内ヒアリングをひたすら続けてきた甲斐があるというものです」

朝比奈(あさひな)
チームの中では最年少。プロダクト開発もソフトウェア開発の経験もなく、デザイン制作を少しかじっている。明るくて通りの良い声がチームのムードメイカーになっている。
僕たちが袖ヶ浦さんに出会ってから、もう半年以上経っている。特にこの3か月は朝比奈さんが言うとおり、プロダクトの仮説を掘り下げるためにリサーチにかなりの時間を割いてきている。
「こんなにもコードを書いていない時期が続くなんて初めてです……」

小袋(こぶくろ)
名越より年下だが同じ時期に転職してきたプログラマーで、同僚。口数は少ないが、自分の意見はしっかり言うタイプ。
小袋くんの声は若干不安そうだった。確かにこの半年ろくにプロダクト作りは進んでいない、というかまだ開発は何も始まっていない。プログラマーを生業としてきた小袋くんには今の状態は居心地が悪いようだった。
「どんなリサーチを行ってきたのですか」
「あ、はい。まずは、僕らが想定しているユーザーの情報を集めるために、ChatGPTで壁打ちに取り組みました。僕らがテーマにしているバックログ管理ツールの利用者として、どんなユーザー・ペルソナが考えられるか、候補出しを行いました」
「その後は、ChatGPTで得られたペルソナ候補について、Webやその他の文献・書籍もあたって、内容の補強に務めました」
「エキスパートインタビューや社内ヒアリングは行いましたか」
「社内にあたると、すでにバックログを3年も運用している部署があって、この部署の人たちをエキスパートとして見なし、話を聞いています」
僕らの答えに満足はしたのだろう、袖ヶ浦さんは、にこりともせず小さく頷いた。こういう反応ですら、これまでほとんど得られたことはない。僕は3人だけのチャットに「👍(いいね)」アイコンをあげた。
(チャットで)「😭(泣いている顔)」
(チャットで)「よっしゃああ!」
喜びはほんの束の間だった。
「これで喜んで終わっていてはダメですよ。ここから 『仮説』 を立ててください」
調査と仮説検証との違い
3人が行ってくれたのは「調査」です。「仮説検証」ではありません。
調査:物事や状況の実態、動向などを把握するために調べること。「すでにある情報」を取得するための活動。ゆえに、調べる方法や場所の多様さ、その分量がポイントになる。
- 例)Web上での調査、文献書籍による調査、ChatGPTを用いた把握、アンケート調査、エキスパートインタビュー、関係者ヒアリングなど
仮説検証:あるテーマについて、仮説を立て、その仮説が正しいか否かを確かめることで、次に取るべきことの判断を導き出すこと。ゆえに、まずもって仮説を立てていることが前提となる。
- 例)インタビュー検証、プロトタイプ検証、MVP検証など
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市谷 聡啓(イチタニ トシヒロ)
ギルドワークス株式会社 代表取締役/株式会社エナジャイル 代表取締役/DevLOVEコミュニティ ファウンダー サービスや事業についてのアイデア段階の構想から、コンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイル開発の運営について経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクト...
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松永 映子(マツナガ エイコ)
イラストレーター・プロダクトデザイナーです。記事やコンテンツに合うイラストを提案していくスタイルが得意。 作るプロダクトで人を笑顔にしたい。趣味は登山とキャンプ。ゲームと愛猫。 Webサイト
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