プロダクトアウト幻想と顧客価値のねじれ──技術が強い会社ほど陥る顧客視点の欠如
「大企業病」を乗り越えろ! 再現性がある新規事業の「迷宮」脱出ガイド 第2回
大企業の新規事業やプロダクト開発では、その特性からメリットとデメリットが存在し、スタートアップとは異なるマインドセットが必要とされます。本連載では、自身でも大企業で新規事業に取り組んだ経験があり、現在は独立して多くの大手企業の伴走支援をされているブルーグラフィーの伊藤景司さんが、それらのハードルを乗り越える具体的な思考法やアクションについて、詳しく解説します。第2回は、プロダクトアウトの発想が陥りがちなワナと具体的な解決策について。(編集部)
はじめに
皆さん、こんにちは。ブルーグラフィー株式会社の伊藤景司です。さて、新規事業やプロダクト開発の現場で、こんな言葉が聞こえてくることはないでしょうか?
「うちの技術は世界一だ。このすごさが分かれば、絶対に売れるはずだ!」
「競合のA社製品にある機能は全部盛り込んだ。さらに、うち独自の機能も追加したぞ!」
「今までにない新しい技術が開発できた! これは多くの人が求めているはずだ!」
こうした声が聞こえるチームは、とても熱意にあふれています。その情熱は、ものづくりにおいて本当に大切なものです。
ですが、もしその素晴らしい技術や機能が、思うように顧客に届いていないとしたら。もし、開発者の熱意とは裏腹に、ユーザーの反応が鈍いとしたら。それはもしかすると、私たち作り手側が「プロダクトアウト」という、心地よくも危険な幻想にとらわれているサインなのかもしれません。
「良いもの」を作っているはずなのに、なぜか売れない
プロダクトアウト。これをものすごくざっくりいうと、「作り手が『これが良いものだ』と信じるものを、その想いや技術を起点に作っていく」アプローチのことです。もちろん、このアプローチが常に間違いというわけではありません。世の中を大きく変えた革新的なプロダクトには、強い作り手の意志から生まれたものもたくさんあります。
とはいえ、それは時として大きな賭けになります。なぜなら、作り手の「良い」と、顧客が「欲しい」は、必ずしも一致しないからです。

例えば皆さんの身の回りにもありませんか?
ものすごく多機能で、ボタンがいっぱい付いているけれど、実際に使っているのは「電源」と「音量」だけ、みたいなリモコンが。また、たくさん機能がある最新の家電を買って満足はしたものの、実際に使っている機能はほんの一部で、まったく使いこなせていないなど。実は私たちの周りにあるプロダクトには、そういったものがたくさんあります。
あれこそが、プロダクトアウトの小さな具体例です。作り手は「あれもできる、これもできる」という価値を詰め込んだつもりでも、使い手にとっては「よく分からないものがたくさん付いている、使いにくいもの」になってしまっているのですね。
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- この記事の著者
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伊藤 景司(ブルーグラフィー株式会社)(イトウ ケイジ)
ブルーグラフィー株式会社 代表取締役社長兼CEO新規事業・プロダクトマネジメントのコンサルティング事業と自社プロダクト開発を展開。ローンディールメンター。以前は、ソニーにて新規事業・プロダクトマネジメント・海外マーケティングに従事。新規事業チームにて、プロダクトマネージャーとしてLED電球スピーカーとグラス...
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