プログラミング力は独学でも向上できる
「プログラミングは独学で学べるものなのか?」「プログラミングスクールに通わないと身につかないのでは?」━━そう考えている方もいるかもしれません。しかし、独学でもプログラミングを習得し、仕事や趣味の開発ができるだけの力をつけることは十分可能です。実際に独学でスキルを習得したい方向けの書籍が書店に多く並んでいたり、第一線で活躍する現役エンジニアが新たな言語を独学で学んでいたりするのもその裏付けといえるでしょう。
独学でプログラミング力をつける上で重要なのは、正しい学習方法を理解した上で最短距離で知識を身につけていくことです。適切な情報源を見つければ、それらの実現は困難ではありません。この記事では、学習を継続するモチベーション維持の秘訣もお伝えします。
独学でプログラミングを学ぶメリット・デメリット
プログラミング学習を進めるには、主に「独学」と「プログラミングスクール・専門学校」の2つの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、自身の状況や目標に合わせて最適な方法を選んでいきましょう。
独学のメリット
費用を抑えられる |
スクールに通う場合と比較して、教材費や学習ツールにかかる費用を大幅に抑えることができます。無料のオンライン教材やコミュニティを最大限に活用すれば、ほとんど費用をかけずに学習を進めることも可能です。 |
自分のペースで 学習できる |
決まったカリキュラムや時間に縛られることなく、自分の理解度やライフスタイルに合わせて学習を進められます。苦手な部分はじっくり時間をかけ、得意な部分はスピーディーに進めるなど、柔軟な学習が可能です。 |
主体性が養われる | 疑問点や不明点を自分で調べ、解決する力が自然と身につきます。これは、実際の開発現場で問題解決能力として非常に役立つスキルとなります。 |
幅広い分野に挑戦できる | 興味のある分野や最新技術など、スクールでは扱わないようなニッチな領域にも自由に挑戦できます。 |
独学のデメリット
モチベーションの維持が難しい |
独学は一人で進めるため、学習の進捗が滞ったり、壁にぶつかったりした際にモチベーションが下がり、学習から遠ざかってしまう可能性があります。相談できる相手がいないことによる孤独感も、挫折の原因となることがあります。 |
質問できる環境が少ない | 疑問やエラーに直面した際に、すぐに質問して解決できる環境が少ない点が挙げられます。自己解決能力が求められる一方で、時には解決に時間がかかり、学習効率が落ちることもあります。 |
学習の方向性を 見失いがち |
膨大な情報の中から、自分に合った学習方法や教材を見つけるのが難しい場合があります。何から手をつけていいか分からず、遠回りをしてしまうことも少なくありません。 |
客観的な評価が得にくい | 自分のスキルレベルがどの程度なのか、客観的に評価してくれる機会が少ないため、成長を実感しにくいことがあります。 |
プログラミングスクール・専門学校で学ぶメリット・デメリット
一方、プログラミングスクールや専門学校での学習には、次のようなメリット・デメリットがあります。
スクール・専門学校のメリット
体系的なカリキュラム |
プロの講師が作成した、未経験者でも効率的に学べるよう設計されたカリキュラムに沿って学習できます。基礎から応用まで段階的に知識を習得できるため、学習の方向性を見失う心配が少ないといえるでしょう。 |
質問・相談しやすい環境 | 疑問点やエラーが発生した際に、すぐに講師に質問して解決できる環境が整っています。これにより、自己解決に費やす時間を短縮し、スムーズに学習を進められます。 |
モチベーションを 維持しやすい |
同じ目標を持つ仲間や講師がいるため、刺激を得られる環境が手に入りやすいといえます。定期的な課題や発表会なども、学習の継続を後押しするでしょう。 |
就職・転職サポート | 多くのスクールでは、ポートフォリオ作成支援や企業紹介、面接対策など、就職・転職に特化したサポートを提供しているため、学習後のキャリアパスの明確化がしやすいといえます。 |
最新技術に触れる機会 | 業界のトレンドや現場で求められる最新技術を反映したカリキュラムにより、実践的なスキルが習得できます。 |
スクール・専門学校のデメリット
費用が高額になる傾向 |
最大のデメリットは、独学と比較して受講料が高額になる点です。数十万円から百万円以上かかるケースもあります。 |
学習ペースが固定 されがち |
カリキュラムの進行速度や受講時間が決まっているため、仕事やプライベートの予定との両立など、自分の都合に合わせた柔軟な学習が難しい場合があります。 |
受講内容のミスマッチ | 自分の学びたい内容や目指す分野とスクールの提供内容にミスマッチがあった場合、支払った受講料が無駄になるなどの機会損失が起きてしまいます。 |
講師の質に ばらつきがある可能性 |
スクールによっては、講師の経験や教え方にばらつきがある可能性もあります。相性の良い講師に出会えなかった場合、学習効率が落ちることも考えられます。 |
調査結果から見える独学でプログラミング力を上げるハードル
独学でプログラミング学習を進めるには、費用負担が軽く済む、自分のペースで学べるといったメリットがある一方で、前述のように自分でスケジュール管理をする主体性が欠かせません。これらをプログラミングを学ぶ上でのハードルと感じる方も多いでしょう。
実際に、プログラミングスクール「SAMURAI ENGINEER」を運営するSAMURAIの調査でも、プログラミングの勉強を始められない理由として「難しそう(48%)」「忙しくて時間がない(35%)」「途中で挫折しそう(13%)」といった項目が挙げられています。半数以上の人が「いますぐ」「できるだけ早く」始めたいと考えている一方で、学習の難易度や挫折への懸念が払拭できない方も多くいるようです。
また、実際に独学でプログラミングを勉強している方を対象としたキラメックスの調査では、独学で身につけることができない知識として「技術やノウハウに関する情報」「働く現場や企業に関する情報」「最新情報」「プログラミングの知識を仕事で活かすための情報」といった項目が挙げられていました。
確かに、独学ではこうしたリアルタイムな情報や生の声のキャッチアップが難しい側面もありますが、今はインターネットで様々なエンジニアが情報を発信している時代です。情報収集の仕方を工夫すれば、これらのハードルを乗り越えることも可能でしょう。次のセクションでは、独学でプログラミングを始めるための準備や目標設定の方法を詳しく解説していきます。
独学でプログラミングを始める前の準備や目標設定
プログラミング学習を独学で始める前に、まず考えてほしいのが「何のためにプログラミングを学ぶのか」という目標を明確にすることと、学習に適した環境を整えることです。こうした準備を怠ると、学習のモチベーション維持が難しくなったり、非効率な学習をしてしまったりする可能性があります。
プログラミングを習得して何をしたいのか決める
プログラミング学習において、最も強力なモチベーションとなるのが「作りたいもの」や「やりたいこと(就きたい仕事)」を具体的にイメージすることです。「プログラミングを会得したい」「コードを書けるようになりたい」と漠然とした目標を掲げるよりも、「こんなWebサイトを作りたい」「こういった機能が実装されたアプリを開発したい」「業務を自動化するツールを作りたい」といった具体的な目標があるほうが、学習の方向性が定まり、必要な知識や技術を効率的に習得できます。
目標の方向性としては、こうした例が挙げられます。
Webサイト開発 | 自分のブログサイトやポートフォリオサイト、ECサイトなど |
Webアプリケーション開発 | 予約システム、チャットアプリ、タスク管理ツールなど |
スマートフォンアプリ開発 | ゲームアプリ、ToDoリストアプリ、写真加工アプリなど |
データ分析・AI開発 | 株価予測ツール、画像認識システム、自然言語処理システムなど |
業務自動化ツール | Excel作業の自動化、データ収集スクリプトなど |
作りたいものが明確になれば、それに必要なプログラミング言語やフレームワーク、学習リソースがおのずと見えてきます。最初は簡単なものから学び始める形でかまいません。「これを作ってみたい!」というワクワクする気持ちを大切にしましょう。もし具体的なアイデアが出てこなくても、世の中にある様々なサービスやアプリを見て「自分ならこうしたい」と考えてみるところから始めてみると、やってみたいことが言語化できるはずです。
プログラミング学習に必要なPCスペック・環境
プログラミング学習を進める上で、快適なPC環境は欠かせません。高価なゲーミングPCが必要というわけではありませんが、ストレスなく学習を進めるには、ある程度のスペックを確保しておくほうが安心です。
PCのOS
Windows、macOS、Linuxのいずれでもプログラミング学習は可能です。一般的にはmacOSが人気ですが、Windowsでも開発環境は十分に構築できます。重要なのは、自分が慣れているOSを選ぶことです。
推奨されるPCスペック
CPU |
Intel Core i5以上、または同等のAMD Ryzenプロセッサ。複数のアプリケーションを同時に動かすことを考えると、Core i7やRyzen 7以上であればより快適です。 |
メモリ(RAM) | 最低8GB、推奨16GB以上。特にWebブラウザ、統合開発環境(IDE)、仮想環境などを同時に使用する場合、メモリは多ければ多いほど快適に動作します。 |
ストレージ(SSD/HDD) | SSD 256GB以上、推奨512GB以上。HDDでも可能ですが、OSやアプリケーションの起動速度、ファイルの読み書き速度が格段に速いSSDを強く推奨します。開発ツールやプロジェクトファイルは容量を消費するため、余裕を持った容量を選びましょう。 |
ディスプレイ | 13インチ以上。可能であれば、外部ディスプレイを追加すると作業効率が大幅に向上します。コードと実行画面、資料などを同時に表示できると便利です。 |
その他、あると便利なもの
安定したインターネット環境 |
オンライン教材の利用、情報検索、開発ツールのダウンロードなどで必須です。 |
テキストエディタ/ 統合開発環境(IDE) |
多くのプログラマーに利用されているのは、無料かつ高機能な「Visual Studio Code(VS Code)」です。学ぼうとする言語によっては、専用のIDE(例:JavaならIntelliJ IDEA、PythonならPyCharmなど)も検討すると良いでしょう。 |
Git/GitHubアカウント | コードのバージョン管理や共同開発に必須のツールです。学習の初期段階から慣れておくことをおすすめします。 |
こうした環境を整えてから学習を始めると、スムーズなスタートダッシュが切れるだけでなく、その後の学習効率を大きく高められます。
関連記事
独学でマスターしやすいプログラミング言語トップ5
世の中には数多くのプログラミング言語が存在しますが、ここでは独学で学習しやすく、かつ将来性や需要も高い主要な5つの言語を厳選してご紹介します。それぞれの特徴と、なぜ独学に適しているのかを理解し、あなたの「作りたいもの」や「やりたいこと」に合った言語を選びましょう。
Pythonの特徴と独学のススメ
Python(パイソン)は、シンプルで読みやすい文法であることから、プログラミング言語として世界中で高い人気を誇っています。汎用性が高く、非常に幅広い分野で活用されているため、様々な業務や用途に対応できる点が魅力です。
Pythonが主に用いられる領域 |
|
独学に適した理由 |
|
Python独学に適したおすすめ書籍
CodeZineで読めるPython入門コンテンツ
JavaScriptの特徴と独学のススメ
JavaScript(ジャバスクリプト)は、Webサイトに動きをつけるために開発されたプログラミング言語で、Web開発には欠かせない存在です。Webブラウザ上で動作する唯一のプログラミング言語であり、近年はWeb以外の領域にも活用が広がっています。
JavaScriptが主に用いられる領域 |
|
独学に適した理由 |
|
JavaScript独学に適したおすすめ書籍
CodeZineで読めるJavaScript関連コンテンツ
Rubyの特徴と独学のススメ
Ruby(ルビー)は、日本人であるまつもとゆきひろ氏によって開発されたオブジェクト指向スクリプト言語です。「プログラマーのストレスを最小限にする」ことを重視しており、直感的で記述しやすい文法が特徴です。
Rubyが主に用いられる 領域 |
|
独学に適した理由 |
|
Ruby独学に適したおすすめ書籍
CodeZineで読めるRuby/Ruby on Rails関連コンテンツ
Javaの特徴と独学のススメ
Java(ジャバ)は、世界中かつ多様な分野で利活用されているプログラミング言語の一つであり、「Write once, run anywhere(一度書けば、どこでも動く)」という理念のもと、OSに依存しない高い汎用性が特徴となっています。特にエンタープライズ領域での需要が高いです。
Javaが主に用いられる 領域 |
|
独学に適した理由 |
|
Java独学に適したおすすめ書籍
CodeZineで読めるJava関連コンテンツ
PHPの特徴と独学のススメ
PHP(ピーエイチピー)は、動的なWebページを作成するために開発されたサーバーサイドのスクリプト言語です。HTMLに直接コードを埋め込んで記述できる手軽さが特徴で、Webサービス開発の現場で長年にわたり世界中で広く利用されています。世界的に有名なCMS(コンテンツ管理システム)のWordPressもPHPで構築されています。
PHPが主に用いられる 領域 |
|
独学に適した理由 |
|
PHP独学に適したおすすめ書籍
CodeZineで読めるPHP関連コンテンツ
独学でチャレンジしたいプログラミング言語
ここまで紹介した言語と比べると難易度は上がりますが、次に紹介するプログラミング言語も需要は高く、将来性や需要が高いものとなっています。就きたい業種やなりたい職種、開発したいものに応じて、独学にチャレンジしてみても良いでしょう。
C言語の特徴と独学のススメ
C言語は、1970年代に開発された歴史あるプログラミング言語で、OSや組み込みシステムなど、コンピュータのハードウェアに近い部分を制御する際に用いられます。他の多くのプログラミング言語の基礎となっている言語です。処理速度が非常に速く、メモリを直接操作できるなど、低水準での制御が可能となっています。C言語を拡張して開発された言語「C++」とも互換性をもっています。
C言語が主に用いられる 領域 |
|
独学に適した理由 |
|
C言語を学習する上での 注意点 |
|
C言語独学に適したおすすめ書籍
CodeZineで読めるC言語/C++関連コンテンツ
挫折しないためのプログラミング独学ロードマップ
独学で挫折してしまうプログラミング初学者の多くは、明確なロードマップがないまま手探りで進めて失敗しています。せっかく学習を始めるのなら、確実にスキルを習得し、目標達成まで走り切れる4つのステップを事前に把握して進めていきましょう。
ステップ1:学習計画を立てる
成功への第一歩を踏み出すには、いきなり書籍を読んだり手を動かしたりするのではなく、目標を明確にし、学習計画やスケジュールを組むところから始めましょう。目標に向けた成長の仕方を具体化していくことで、その後の学習を効率的に進められます。
学習スケジュールの作成方法
学習スケジュールは、挫折を防ぐためにも無理なものにせず、現実的かつ継続可能なものにすることをおすすめします。
目標からの逆算 |
最終的な目標(例:〇月までにWebサイトを公開する)から逆算し、中間目標(例:〇月までにHTML/CSSの基礎を習得する)を設定します。 |
学習時間の確保 | 毎日〇時間、週に〇時間など、具体的に学習に充てる時間を決め、カレンダーや手帳に書き込みましょう。通勤時間や休憩時間などの隙間時間も有効活用できると理想的です。 |
休憩とリフレッシュ | 長時間の学習は集中力を低下させます。適度な休憩やリフレッシュの時間をスケジュールに組み込むことで、効率を維持できます。ポモドーロテクニック(25分集中+5分休憩)なども有効です。 |
柔軟性を持たせる | 予期せぬ予定が入ることもあります。計画通りに進まない日があっても落ち込まず、翌日以降で調整するなど、柔軟に対応できる余地を残しておきましょう。 |
目標設定とその管理方法
目標設定は、プログラミング学習のモチベーションを維持し、進捗を可視化するために不可欠です。
SMART原則で設定 |
|
短期・中期・長期目標 | 大きな目標を達成するために、短期(1週間)、中期(1ヵ月)、長期(3ヵ月〜半年)の目標を設定し、それぞれをクリアしていくことで達成感を積み重ねましょう。 |
進捗の記録と振り返り | 毎日もしくは週に一度、学習の進捗を記録し、目標に対してどの程度達成できたかを振り返ります。達成できたことは自分を褒め、できなかったことは原因を分析して次回の計画に生かしましょう。 |
ステップ2:基礎をインプットする
学習計画を立てたら、いよいよプログラミングの基礎知識をインプットする段階です。様々な学習リソースを組み合わせることで、効率的に知識を吸収できます。
オンラインのプログラミング学習サービス・プラットフォームを使って休日や空き時間に学習する
「Progate(プロゲート)」や「Udemy(ユーデミー)」「ドットインストール」といった体系的かつ隙間時間で学べるオンライン学習サービスは、独学の強い味方です。動画や演習問題を通じて、効率的に基礎を固められます。
無料で利用できる学習教材を最大限に活用する
費用を抑えたい場合は、無料で利用できる教材も多数存在します。
公式ドキュメント |
各プログラミング言語やフレームワークの公式ドキュメントは、最も正確で最新の情報源です。 |
専門メディアや 技術ブログ |
CodeZineのような技術に関するニュース・記事を配信するWeb媒体や技術ブログにも、プログラミング初学者に向けたノウハウやスキルアップ術は多数掲載されています。 |
Qiita(キータ)/ Zenn(ゼン) |
エンジニアが技術的な知見を共有するプラットフォームで、実践的なノウハウやエラー解決策が見つかります。 |
GitHub | オープンソースプロジェクトのコードを読んだり、自分のコードを公開したりすることで、実践的な学習ができます。 |
プログラミング学習に役立つYouTubeチャンネルを観る
動画で視覚的に学ぶことは、理解を深める上で非常に有効です。YouTubeには、プログラミング学習に役立つチャンネルが多数あるため、「プログラミング 初心者」「(言語名) 講座」「Web開発 チュートリアル」といったキーワードで検索してみると良いでしょう。「テックアカデミー公式チャンネル」「しまぶーのIT大学」「とらゼミ」といった、初心者向けの解説や実践的な開発チュートリアル動画が見つかるはずなので、自分にとって相性の良いチャンネルを見つけられると、学習を進めやすくなります。
アプリを使って隙間時間に学びを深める
「Progateアプリ」「Swift Playgrounds(Swift学習アプリ)」のようなスマートフォンアプリを活用すれば、移動中などの隙間時間を有効活用して学習を進められます。
本や電子書籍を活用して効率的に学習する
体系的に基礎を学ぶには、書籍が最適です。各言語の基本的な文法や概念を学べる「入門書」、実際にWebサイトやアプリを作りながら学べるハンズオン形式の「実践書」など、自分のプログラミング力に応じたテキストを見つけましょう。タブレットやスマートフォンで手軽に読める電子書籍もおすすめです。CodeZineを運営する翔泳社も、スキルに応じたコンピュータ書を多数刊行しています。
コーディング練習サイトを利用してスキルを磨く
インプットした知識を定着させるには、実際にコードを書く練習が不可欠です。競技プログラミングサイトの「AtCoder(アットコーダー)」、転職活動のコーディングテスト対策もできる「LeetCode(リートコード)」、オンラインハッカソンの開催もしている「paiza(パイザ)」などの中から、自分に合うサイトを見つけられると良いでしょう。
ステップ3:手を動かして実際に開発をしてみる
インプットした知識を「使えるスキル」にする最短ルートは、実際に手を動かしてアウトプットすることです。
最初は簡単なものでOK、難しいところから始めない
完璧を目指すよりも、まずは「完成させる」ことを目標にしましょう。
写経から始める |
教材のコードをそのまま書き写す「写経」は、コードの書き方に慣れるための第一歩です。 |
簡単な機能の実装 | たとえば、Webサイトなら「お問い合わせフォームの作成」、アプリなら「計算機能の追加」など、小さな機能から実装に挑戦してみましょう。 |
既存サービスを 倣ってみる |
既存のWebサイトやアプリを真似して作ってみるのも良い練習になります。見た目だけでなく、裏側の仕組みを想像しながら実装することで、理解が深まります。 |
ステップ4:開発から得た知見をアウトプットし、フィードバックを得る
開発の成果や学習で得た知見は、技術ブログやコード管理プラットフォーム、Webサイトなどで積極的に発信しましょう。こうした行為は、学習効果を最大化する上で大きな意義があります。
知見共有・フィードバックを得る経験は非常に重要
独学の難点は、客観的な視点やアドバイスをもらいにくい状況であることです。しかし、オンラインコミュニティでコードレビューを依頼してみれば、より良いコードの書き方や見落としていた改善点を教えてもらえます。ツール開発して終わりではなく、アウトプットの機会を自発的に作るとどんなメリットがあるのか、下記にまとめてみました。
知識の定着 |
インプットした知識を自分の言葉で説明したり、コードとして表現したりすることで、より深く理解し、記憶に定着させることができます。 |
問題解決能力・技術力の向上 |
実際にコードを書いてみると、エラーに多く直面します。そのエラーを解決する過程で得た知見を言語化すると、類似した案件にも対応しやすくなり、問題解決能力や技術力が飛躍的に向上します。 |
達成感の獲得 | 自分の手で何かを作り上げた達成感を形に残しておくと、次の学習への大きなモチベーションとなります。 |
ポートフォリオとして 活用 |
アウトプットを集約しておくと、就職活動・転職活動時にポートフォリオとして活用することができます。 |
CodeZineでも、再現性のある学びや課題解決の方法、アクションのきっかけを提供できるような企画技術的知見について寄稿したい方を常に募集しているので、興味があればチャレンジしてみてください。
フィードバックによってリアルな業界標準に触れられる可能性も
独学では得にくい現場の「生きた知識」に触れることも、成長につながります。たとえば、こんな場や手段を活用してみると良いでしょう。
オープンソースプロジェクトへの貢献 |
小さな修正からでも良いので、GitHubなどで公開されているオープンソースプロジェクトに貢献してみましょう。実際の開発プロセスや、チームでの開発を経験できます。 |
インターンシップや アルバイト |
短期間でも良いので、実際に開発現場で働く経験を積むことで、独学では得られない実践的なスキルや、業界の標準的な開発手法を学べます。 |
勉強会やハッカソンに 参加する |
コードを書くなど、実践的な体験ができる勉強会やハッカソンへの参加も、フィードバックの機会を得るには有効です。CodeZineが主催する「Developers Summit(デブサミ)」「Developers Boost(デブスト)」のようなカンファレンスに参加し、信頼できるエンジニアの先輩や仲間からこうした情報を得るのも良いでしょう。 |
プログラミング独学には適切なマインドセットと定期的なレベルチェックも必須
自身の成長を実感しながら学習を続けるには、適切なマインドセットとレベルチェックの習慣化が欠かせません。
マインドセットの持ち方 |
「自分には才能がない」「難しい」といった固定観念にとらわれず、「努力すれば必ず成長できる」と前向きに考えましょう。完璧主義を手放し、失敗やエラーが続いてもそれらは学習の機会であり、成長のための糧であると捉えると心が折れにくくなります。「完成させること」を目標にする、「今日は〇〇の関数を理解できた」「〇行のコードを書けた」「エラーを一つ解決できた」と小さな成功体験を見逃さずにいると、達成感やモチベーションを得られ、長期的な学習継続につながります。 |
定期的なレベルチェックのやり方 |
学習の節目ごとに、自分のスキルがどの程度向上したかを確認しましょう。自身の弱点を発見し、今後の学習計画に活かすことができます。具体的なレベルチェックの仕方は、次のとおりです。
|
プログラミング独学でモチベーションを維持するには?
プログラミングを独学するか悩む方にありがちな懸念点が、「モチベーションの維持」です。熱意をもって学習を始めても、自力で解決できないエラーに直面したり進捗が停滞したりすると、やる気を失ってしまうことがあります。ここからは、独学を成功させるためのモチベーション維持の方法をお伝えします。
日々の学習を阻む「よくある悩み」とうまく付き合う方法
独学を阻む要素は多岐にわたりますが、それらを認識し、適切に対処することで、学習の継続性を高められます。
よくある悩み1:時間が足りない
- 実際には、まとまった時間が取れなくても、15分や30分といった短い時間でも学習は可能です。通勤時間や休憩時間など、日々の隙間時間を有効活用する意識を持つことが重要です。
- 25分集中+5分休憩を繰り返す「ポモドーロテクニック」のように、集中作業と休憩のメリハリをつけると、集中力を維持しつつ効率的な学習ができます。
よくある悩み2:エラー解決で心が折れる
- プログラミングにエラーはつきものです。エラーは「バグ」ではなく「解決すべき課題」と捉え方を変えましょう。
- エラーメッセージを正確に読み解き、Google検索やQ&Aサイト(Stack Overflowなど)を活用して自力で解決する力を養うことが大切です。
- 一定の時間をかけても解決できない場合は、オンラインコミュニティや知人に質問するなど、適切なタイミングで助けを求めるのも重要です。
よくある悩み3:進捗が見えにくい
- 学習の進捗を記録し、可視化することで、自身の成長を実感しやすくなります。学習時間や達成した内容を日誌やスプレッドシートに記録する、GitHubでコミット履歴を残すなどが有効です。
- 小さな目標を細かく設定し、一つ一つクリアしていくことで、達成感を積み重ね、モチベーションを維持できます。
よくある悩み4:孤独を感じる
- オンラインの学習コミュニティやSNSを活用して仲間を見つけると、孤独感を感じにくくなります。
- 同じ目標を持つ仲間と交流して、情報交換や励まし合いをしましょう。
- オフラインのカンファレンスや勉強会に参加して、実際に人と会う機会を作るのも有効です。
時間管理戦略と生活習慣を見直そう
仕事や学校など、日々の生活を送りながら学習時間を捻出するには、時間管理の仕方や生活習慣の見直しも不可欠です。
学習時間を固定化して スケジュールに組み込む |
「時間があればやる」ではなく、「この時間はプログラミング学習の時間」と固定してしまいましょう。PCやスマートフォンのカレンダーに学習時間を登録し、開始時間前にアラートが表示されるようにするのも効果的です。 |
生活習慣を見直す | 朝活や夜活など、自分が最も集中できる時間帯に学習時間を組み込めないか検討してみるのもおすすめです。「SNSの閲覧時間」「テレビを見る時間」「ぼーっとしている通勤時間」など、無駄な時間を特定していくと学習に充てられる時間が見えてきます。長期的に継続するためにも、睡眠時間を削るなど無理な計画は避けましょう。 |
タスクに優先順位を 付ける |
転職活動や資格取得などプログラミング力の向上に期日を設けたい場合は、生活全体のタスクに優先順位をつけ、重要なものから取り組むようにしましょう。「緊急度」「重要度」といったマトリクスでタスクを整理するのも有効です。 |
独学でプログラミングを学んだ著名なプログラマー・成功事例
プログラミングの世界では、大学や専門学校で情報科学を学んだ人だけでなく、独学でスキルを習得し、第一線で活躍しているエンジニアや、異分野でプログラミングスキルを活かす著名人も多く存在します。ここでは、そうした事例をまとめてみました。
まつもとゆきひろ氏(プログラミング言語Ruby開発者)
Rubyの開発者であり、その思想家としても知られているまつもとゆきひろ氏のプログラマーとしての歴史は、中学3年生から始まっています。父親に買ってもらったポケコン(ポケットコンピューター)を動かすため、「BASIC」というプログラミング言語を独学し、情報系の大学に進学。プログラミングの大部分は独学で習得したと語っています。世界的な影響を及ぼした彼の成功は、独学が世界を変える可能性を秘めていると言っても過言ではないでしょう。
まつもとゆきひろ氏についてもっと知りたいなら
岩田聡氏(元任天堂代表取締役社長)
かつて任天堂の代表取締役社長を務め、「ニンテンドーDS」や「Wii」といった大ヒット商品を世に送り出した岩田聡氏も、独学でプログラムを学んだ人物です。高校時代にプログラム電卓の存在を知り、プログラミングにのめり込んだ岩田聡氏は、HAL研究所の社長就任後もプログラマーとして活動し、『MOTHER』シリーズの開発や『ポケットモンスター』シリーズの海外ローカライズ にも携わってきました。独学で得た実践的なスキルが、経営者としての手腕にもつながった稀有な例と言えるでしょう。
野田クリスタル氏(お笑いコンビ「マヂカルラブリー」)
お笑いコンビ「マヂカルラブリー」の野田クリスタル氏は、自身のネタのためにゲームを自作するのをきっかけに、プログラミングを独学で学び始めました。独学で培ったプログラミングスキルをM-1グランプリやR-1グランプリのネタに取り入れ、お笑いの世界で唯一無二の存在感を確立しています。「何かを作りたい」という純粋な欲求が、本業と結びつき大きな成果を生む可能性を示しています。
若宮正子氏(世界最高齢プログラマー)
世界最高齢のアプリ開発者として、アメリカのApple本社で行われた世界開発者会議に参加した経験も持つ若宮正子氏は、60歳を過ぎてからパソコンを習い始め、81歳でスマホ向けアプリ「hinadan」を開発しました。世界的にも注目を集めた彼女の活動は、年齢に関わらず、独学で新しいスキルを習得できることを証明していると言えるでしょう。
プログラムを独学で始めるのに遅すぎることはない
プログラミングを独学して成功した人物の経歴は多岐にわたり、学び始めた年齢も関係ありません。彼らの共通項は、特定の「作りたいもの」や「解決したい課題」を原動力に学習を始め、試行錯誤を繰り返しながら実践的なスキルを磨いてきたことに加え、旺盛な知的好奇心と粘り強さです。
こうした独学プログラマーの成功事例は、プログラミング学習が誰にでも開かれた道であることを示しています。これからその道を進みたい方に向け、CodeZineや翔泳社では様々なインプットやアウトプットの手段を用意しています。プログラミング学習に役立つ最新情報や技術トレンド、実践的なノウハウの収集にはぜひCodeZineを、そして各言語の基礎から応用まで体系的に学ぶには翔泳社から刊行されている『独習』シリーズをぜひご活用ください。