Hackの楽しさをマネジメントでも感じよう
萩原氏は「理解」→「設計」→「実装」のステップにのっとり、実際にHackを用いた具体的な取り組みとして、2つのケースを紹介した。
ケース1:機能する組織をつくっていく
背景:約半年間でチームメンバーを6人から21人まで大幅に増員する計画が発足した。しかし、マネジメント業務に不安を覚えていた萩原氏は、何をすべきか考えあぐねていた。
理解:機能する組織にするために、米国の経営学者であるチェスター・バーナード氏が提唱する「組織の3要素」に当てはめて、今の組織に足りないものを考えてみた。組織の3要素とは、「共通の目的を持っていること(共通の目標)」「互いに協働する意思があること(協働の意欲)」「円滑な情報共有を図れること(コミュニケーション)」である。
設計:チームメンバーが増えると同時に、プロジェクトが増えても、チームとして協働の意欲を維持するための仕組みが必要であり、コミュニケーションの希薄化を避けながら、チームとして追い続ける共通の目標を定める必要があることが見えてきた。
実装:組織の方針を定め、チームメンバーで意見を出し合い、自らの行動指針を定めた。この過程を通じて、互いの価値観を理解し合うことができ、透明性を担保すると同時に、心理的安全性を高めることもできた。
「価値を素早く提供し、将来の価値低下を防ぐことを目指す組織でありたいという思いを込め、『More Value, Keep Value』という基本方針を定めました。また、行動指針として『N-Dev Spirits』を定め、社内に掲示しています。これらができたことで、それぞれ携わるプロジェクトはバラバラでも、メンバー全員で向かう方向は1つになり、組織の3要素を備えたチームになっていると自負しています」(萩原氏)
ケース2:エンジニア組織を会社の武器にしていく
背景:うるるの経営層には技術畑出身者が少なく、今後の開発組織のあるべき姿を考えてほしいと萩原氏に依頼があった。
理解:「開発という役割は、ユーザーに価値を届けるプロダクトづくりのための役割の1つにすぎない」という考えに至った萩原氏は、エンジニアだけでなく、その他の役割も含め、プロダクトづくりに必要な役割を整理するために、プロダクトマネジメントについて学ぶことにした。そして、プロダクトマネジメントトライアングルに当てはめて、不在役割をすり合わせればいいと思うに至ったのだが、その過程でさまざまなスキマが見えてきた。
設計:そもそも役割を整理できておらず、不在役割についてどのようにカバーし合うのかについて、経営層とすり合わせられる状況になかった。萩原氏は自分の考えで、自社の役職をプロダクトマネジメントトライアングルに当てはめた図を作成し、経営層との会話を始めることにした。
「実際には、このトライアングルを用いながら、まだ経営層と会話をしている最中で、成果を発表できる段階にはありません。僕の個人的な考えとしては、不在の役割を埋めていくときに、外から人を採ってくるのではなく、今、社内にいる人間のキャリアアップに向けた育成に力を入れるべきではないかと思っています」(萩原氏)
このように2つのケースを挙げながら、Hackの考え方をマネジメント業務に当てはめられることを示した萩原氏。
「エンジニアのみなさんは、構造を理解してスキマに入り込む『Hack』は得意ですよね。この考え方をすると、マネジメントのしんどさの原因がはっきり見えてきて、モヤモヤすることも減るはずです。僕らの得意な領域に引き込むことで、マネジメントもきっと楽しくなると思います」とエールを送り、講演を締めくくった。
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