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DevinではじめるエンタープライズAI開発

AIソフトウェアエンジニア「Devin」とは? エンタープライズ特有の課題を解決するDevinの主要機能

DevinではじめるエンタープライズAI開発 第1回

 「要件変更のたびにリリースが遅れる」「属人化したレガシーコードを触れるエンジニアがいない」——エンタープライズの開発現場では、AIツールを導入してもなかなか解消しない課題が重なり合っています。こうした課題の突破口となりうるのが、2024年に登場したCognition AI社の「Devin」です。本連載では「AIソフトウェアエンジニア」と呼ばれるDevinがエンタープライズ開発にどう効くのかを全5回で解説します。第1回は、エンタープライズが抱える構造的課題を整理したうえで、Devinとはどんな存在かを主要機能とあわせて紹介します。

はじめに:エンタープライズIT開発が直面する構造的課題

 「技術的負債のチケットが、Backlogに何百件も積まれ続けていた」。エンタープライズで開発に関わる読者なら、驚く話ではないでしょう。やるべきだと分かっていても、目の前のリリースや障害対応に追われて手が回らない。これは特定の現場の話ではなく、エンタープライズ開発の日常です。

 なぜこうなるのか。背景には、開発を遅らせ、手数を奪い、やるべき仕事を後回しにさせる要因が幾重にも重なっています。代表的なものを次の8つに整理しました。

  1. 要件が固まらない・変化が多い:仕様凍結後も「最後にもう一点」が積み重なり、手戻りが常態化する
  2. レガシーシステムのブラックボックス化:COBOL、独自フレームワーク・仕様書なし・影響範囲が読めない
  3. 品質とスピードのトレードオフ:障害影響の大きいシステムほど慎重になり、スピードが犠牲になる
  4. 人材不足・スキル偏在:2030年にIT人材が最大79万人不足。多重下請けでスキルが偏り、属人化が深まる
  5. 開発プロセスが重い(Toil):Excel設計書の更新、進捗報告資料、多段の承認会議など、価値を生まない作業が一日を埋める
  6. 環境・ツールの分断:Git / Backlog / Excel / メール / Slackが分断し、CI/CDが未整備
  7. ガバナンスと開発スピードの両立:変更管理(CAB)承認、リリース承認、監査エビデンス作成が積み上がりスピードを削る
  8. AI活用のガバナンス:外部AIにコードを渡せない、社内ポリシーが厳しく現場導入が進まない

 突き詰めると、これらは3つの本質的問題に集約されます。

  • 不確実性 — 要件は変わり続け、システムは中身が見えず、把握が追いつかない
  • 組織の手数不足 — やるべきことに対して人手と時間が決定的に足りない
  • 信頼性とスピードのトレードオフ — 品質や統制を担保するほどスピードが落ちる構造的なジレンマ
図1:8つの課題から3つの本質的問題への集約
図1:8つの課題から3つの本質的問題への集約

 3つに共通するのは、人間がボトルネックだということです。要件や既存システムを把握するのも、実装するのも、品質をチェックするのも、人が動かないと前に進みません。

 ならば問いはシンプルです。それらの作業そのものをAIに任せられないか。GitHub CopilotやClaude Codeは普及してきましたが、いずれも人間が逐次指示し続ける設計で、タスクを丸ごと預けることはできません。

Devinとは何か?「AIソフトウェアエンジニア」という新しいカテゴリー

 では、Devinは他のAIツールと何が違うのでしょうか? その特徴を見ていきましょう。

Cognition AI社は2024年3月のDevin初公開時、次のように述べました。

 Devin is a tireless, skilled teammate, equally ready to build alongside you or independently complete tasks for you to review.

 Devinは、疲れ知らずで有能なチームメイトです。あなたと一緒に開発することも、タスクをまるごと任せてあなたはレビューだけ行うこともできます。

——"Introducing Devin"(Cognition AI公式ブログ、Scott Wu)

 ポイントは「independently(独立して動ける)」という言葉が示す自律性です。コード作成・修正・ビルド・テスト・デバッグまでを、人間と同じように自分で完遂する。だからこそDevinは「AIソフトウェアエンジニア」と呼べるのです。

既存のAI開発支援ツールとの違い

 GitHub Copilot・Cursor・Claude Codeといった既存ツールは、開発者の手元で動き、人間が逐次指示・確認しながら使うものでした。一方Devinは、クラウド上の独立環境で非同期に動くことを前提に設計されています。端末を占有しないので、大規模な並列実行も可能です。

 Devinの新規性は「クラウド」「非同期」「並列」「タスク完遂まで」の4軸に集約されます。次の表で、その位置づけを比べてみましょう。

表1:代表的なAI開発支援ツールとDevinの比較

観点 コード補完 IDE/CLI型エージェント クラウド型自律エージェント(Devin)
代表例 GitHub Copilot Cursor / Claude Code / Codex 等 Devin
実行環境 開発者のPC 開発者のPC クラウド上の独立環境(Workspace)
同期/非同期 同期 同期 非同期
自律スパン 数秒(補完単位) 数分〜十数分(監督下) タスク完遂まで
並列性 同時実行は1つ(PCを占有) 複数タスク並列
役割分担 人間主導、AIが補助 人間が逐次指示・確認、AIが実行 AIが実行、人間が設計・検証

 Devinのイメージは、自分の席で黙々と作業を進める、自分専用の環境を持ったエンジニア。まさに、エンジニアを1人増やす感覚で人手を足せます。手元で動くエージェントが開発者の張り付き(同期)を求めるのに対し、Devinは完了時にレビューを返すだけ(非同期)なので、「チームメンバーの一人」として扱えるのです。

次のページ
エンタープライズ開発の課題に対するDevinの基本機能

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この記事の著者

山河 征紀(ULSコンサルティング株式会社)(ヤマカワ マサキ)

 ULSコンサルティング株式会社  AI駆動開発推進室 室長、AI駆動開発コンサルタント 独立系ソフトウェアハウスでプロジェクトマネージャーとして基幹システム開発を率いたのち、2008年にULSコンサルティングに参画。 ミドルウェア開発とITアーキテクチャ設計を専門とし、インメモリーデータグリッドを...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

青木 美春(ULSコンサルティング株式会社)(アオキ ミハル)

 ULSコンサルティング株式会社  AI駆動開発推進室 AI駆動開発コンサルタント 2025年10月に発足したAI駆動開発推進室の立ち上げメンバーとして、大規模導入を進めるクライアント企業の伴走支援を担当。 リポジトリーアクセスやセキュリティ要件を踏まえた環境構築・インフラ整備から、開発チームへの初...

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