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ProductZine Day 2026

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「Product Engineering Conference 2026」レポート

AIで開発は速くなった。なぜアウトカムは増えないのか──BASE柳川氏が語る「拡大解釈」と練習の回数

「Product Engineering Conference 2026」レポート

 AIでコードを書く速度は劇的に上がった。作られるものの量も、たしかに増えている。それでも、それが顧客に届くまでの速度と、届いたあとの成果は変わっていない。そう感じている現場は少なくないだろう。9月5日に開催されたProduct Engineering Conference 2026で、BASEの柳川慶太氏は、この詰まりの正体を「引き受ける人がいないこと」だと言い切った。エンジニアから金融事業の責任者になるまで、氏は責任の範囲を一段ずつ広げてきた。その体験から差し出されたのは、「責任感は才能なのか、それとも練習で手に入るのか」という問いである。

書く速度は爆速になった。それでも顧客に届くまでの速度は変わらない

BASE株式会社 執行役員 金融事業責任者 柳川慶太氏
BASE株式会社 執行役員 金融事業責任者 柳川慶太氏

 柳川氏がスクリーンに映したのは、一本の詰まった通路だった。左端に「書く」があり、AIによって爆速になったと注記されている。右端には「出す」がある。その間を埋めているのは、ハンコが3つ並んだ「確認と承認の列」だ。手元で書き上がる量がどれだけ増えても、この列が短くならなれば、それが世に出るまでの速度は変わらない。

書く工程はAIで爆速になったが、確認と承認の列が残るため、出す速度は変わらない(出典:柳川慶太氏の登壇資料)
書く工程はAIで爆速になったが、確認と承認の列が残るため、出す速度は変わらない(出典:柳川慶太氏の登壇資料)

 「列を速く捌く工夫では解けません。列に並ばずに、自分で引き受けて出す。ここができる人、つまり当事者意識のある人を増やすしかないんです」

 氏はBASE(ベイス)の執行役員で、金融事業の責任者を務める。同社のECプラットフォームの加盟店向け金融プロダクト「YELL BANK」を、エンジニアとして立ち上げた人物だ。立ち上げ期は実装する側にいて、そこからプロダクトマネージャーになり、いまは事業の数字に責任を負っている。

 そのキャリアを、氏は「拡大解釈」と呼ぶ。出発点は、プロダクトエンジニアという言葉そのものへの引っかかりだった。

 「コードを書く人だったはずのエンジニアを、プロダクトに責任を持つ人まで広げて呼び直している。プロダクトエンジニアという言葉が流行り始めたときは、やられたと思いました。これは自分がやりたかったことだし、やってきたことだなと」

 では、その解釈はどこまで広げられるのか。氏の答えは事業責任者までで、そのうえで「すべての人にお勧めはしません」と付け加えている。

広げているのは、スキルではなく責任の範囲だ

 拡大解釈で広がるのはスキルではなく、引き受ける範囲だ。スライドでは、それが4段の階段として示された。

責任の範囲は、コードが動くかから事業が続くかまで4段で広がる(出典:柳川慶太氏の登壇資料)
責任の範囲は、コードが動くかから事業が続くかまで4段で広がる(出典:柳川慶太氏の登壇資料)

 「最初は、書いたコードが動くかどうかだけを見ていました。次に、その機能が使われるかを見るようになった。いまは、事業として続くかを見ています。でも、やっていることは自分の中では地続きで、変わらないと思っています」

 地続きだと言い切れる理由として、氏はエンジニアという職種の性質を挙げた。

 「エンジニアは、もともとラストマンです。インシデントが起きたとき、最後に直せるのは自分しかいない。普通はテンパりますし、エンジニアもテンパるんですが、すぐに『どうにかするしかない』に切り替わる。責任を持つことに、とても敏感な職種だと思っています」

 であれば、あとはその範囲をコードから事業の数字まで広げるだけだ。実際、事業の数字はエンジニアの言葉に翻訳できる、と氏は言う。

 「事業計画は、予言書ではなくテストコードです。『こう動くはず』を先に書いておくもの。実行して数字で確かめて、通っていれば続行、落ちていたら直す。最初は赤字でもいい。RedをGreenにしていくのは、いつもの開発と同じです」

 この比喩の先に、氏は自分の職務の定義を置いた。事業責任者の仕事とは、落ちているテストを通しにいく仕事である。

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レビューが「ハンコ」になった瞬間、責任は誰のものでもなくなる

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

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