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ProductZine Day 2026

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「Product Engineering Conference 2026」レポート

AIで開発は速くなった。なぜアウトカムは増えないのか──BASE柳川氏が語る「拡大解釈」と練習の回数

「Product Engineering Conference 2026」レポート

拡大解釈とは、心技体を割らずに範囲だけ広げることだった

 ここで、AIに渡せなかった2つに名前がつく。現場感覚が「体」で、実感が「心」である。技はスキルにあたり、ここはAIが代替する。

手を動かすから実感が溜まり、実感が技を磨く。技をAIに使われるだけだと、この循環が止まる(出典:柳川慶太氏の登壇資料)
手を動かすから実感が溜まり、実感が技を磨く。技をAIに使われるだけだと、この循環が止まる(出典:柳川慶太氏の登壇資料)

 3つは循環している。手を動かすから実感が溜まり、溜まった実感が技を磨く。この輪が回り続けるかどうかは、AIをスキルの部分でうまく使えるか、使われるだけかで大きく変わる、と氏は指摘した。

 「拡大解釈とは、心技体を割らずに範囲だけ広げることでした」

 スライドには、その反対のケースも書き添えられていた。技だけ広げると、ハンコになる。3つがつながっている範囲が、責任を持てる範囲である。

 そして冒頭の問いに戻る。プロダクトエンジニアとは、責任の範囲をプロダクトまで広げた人だ。コードだけでなくプロダクトまで、心技体を割らずに。氏はこれを「冒頭の答え合わせ」と呼んだ。

 なぜ、そこまでして広げるのか。心技体を割らずに広げるのは、正直しんどい。単純に仕事の範囲が増えるからだ。それでも氏が広げ続ける理由は、自分の成長ではなく、誰と組むかにあった。知らないまま分けるのではなく、知ったうえで分ける組織は、心技体の通った人が集まってはじめて成り立つ。

 「心技体の通った人どうしで組むチームが、いちばんいいチームだと思っているのです。そしていいチームを保つには、事業が成功しないといけない。成功しないと、プロダクトも育たないし、人が成長する機会も作れませんから」

「柳川さんだからでしょう」に、本人はこう答えた

 広げた先でいちばんきつかったことも、氏は正直に話した。エンジニアは普段、動くか動かないかの世界にいる。広げた先は、正しい対正しいの世界だった。短期と長期。事業の数字とプロダクトの理想。どちらも正しく、どちらも間違っていない中で、決めて進むのが仕事になる。

 だから、無理に広げる必要はないとも言う。ラストマンの感覚を持ちたいと思えないなら、この道でなくていい。自分の担当範囲をきっちりやることに誇りを持つ人はいるし、それで価値を出している人もいる。全部を引き受けたい人だけが偉い、なんてことはない。

 そのうえで氏は、想定される疑いを自分から口にした。柳川さんだから、事業責任者まで広げられたんでしょう、と。

 「そのとおりです。僕は、運が良かっただけです。新規事業に関われて、しかもそれが伸びた。1人で責任を持たざるを得ないタイミングが、いいタイミングで巡ってきました」

 ただし、そこで話は終わらない。

 「でもいまは、運が良くなくても手に入ります。作るコストが極小化されたということは、極小化された分だけチャレンジできる回数が増えたということですから」

 足りないのは覚悟ではなく、練習の回数だ。一回、自分のものを作って出してみてほしい、と氏は会場に求めた。しょぼくていい。半径3メートルの人に使ってもらえれば十分だ。作って、出して、触られて、ダメ出しを食らう。その一周が、言葉ではどうしても渡せなかったものをくれる。

 セッション後、柳川氏はX上でこう補足している。責任感を持つという才能を持っているのに、扱い方が分からず拗らせてしまっている人を救いたい。その気持ちも込めての登壇だった、と。扱うほうには練習とスキルが必要なのだ、とも書いている。

 スライドの終盤には、講演全体を一行にまとめた言葉が置かれていた。人格と分かちようのないレビューを、取りにいってください。責任は外から課されるものではなく、作った瞬間にもう発生している。だから、持てるかどうかではなく、気づけるかどうかである。

 「1人でもプロダクトが作れるこの時代に、私は、あなたとプロダクトを作りたいのです。そう言い合えるような関係に、皆さんがなれたらいいなと思っています」

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

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