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ProductZine Day 2026

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「Product Engineering Conference 2026」レポート

作る力を、利用者の成果につなげる──デジタル庁・岡田康豊氏が語る「使われる」サービスへの視点

「Product Engineering Conference 2026」レポート

 行政手続きをオンラインで利用できるようにすることと、利用者が必要なサービスに気づき、円滑に目的を果たせることは、同じではない。2026年9月5日に開催された「Product Engineering Conference 2026(PdE Conf 2026)」の招待講演で、デジタル庁の岡田康豊氏は、マイナポータルのプロダクトマネジメントに携わる経験を踏まえ、利用者に価値を届けるための考え方を紹介した。AIによって開発や試作が速くなる中、作る力をどのように利用者の成果につなげるのか。職種を越えた協働、ドメインへの理解、成果の捉え方から考える。

補足

 本記事で紹介するプロダクトマネジメント上の考察・提案は、岡田氏個人の見解を含み、政府・デジタル庁の公式見解や決定済みの施策を示すものではありません。サービスの提供状況等は、デジタル庁の公表情報をご確認ください。

オンライン化の先にある、利用者が目的を果たせる体験

 マイナポータルでは、自己情報の確認、行政への申請・届出、外部サイトとの連携などを利用できる。2026年8月25日には、マイナポータルアプリにデジタル認証アプリの機能を統合した「マイナアプリ」の提供が始まった。マイナンバーカードの保有者は、マイナアプリを使ってマイナポータルにログインできる。

 規模も小さくない。マイナンバーカードの保有枚数は1億枚を上回り、マイナポータルには毎月1000万件を超えるログインがある。サービス内のフォームには月に数万件から数十万件のユーザーフィードバックが寄せられる。「『使いにくい』『これは何だ』というお叱りも含め、各領域で分担して改善に充てています」と、デジタル庁 国民向けサービスグループ マイナポータル班の岡田康豊氏は言う。

デジタル庁 国民向けサービスグループ マイナポータル班の岡田康豊氏
デジタル庁 国民向けサービスグループ マイナポータル班の岡田康豊氏

 マイナンバーカードの普及が進む一方、個々の手続きではオンライン利用をさらに広げる余地がある。引っ越し手続きの2025年度(令和7年度)のオンライン利用率は15.7%で、総手続数約500万件に対し、オンライン利用は約75万件。旅券(パスポート)は、2025年(令和7年)の旅券統計でオンライン申請率36.0%、オンライン申請約158万件に対し総発行数約360万件だった(出典:外務省「令和7年の旅券統計」)。最新の数字は、「マイナンバーカードの普及と利活用に関するダッシュボード」で確認できる。

 岡田氏は、オンラインで利用できる環境の整備に加え、利用者がサービスを知り、実際の利用につながるようにすることの重要性を指摘した。

 岡田氏は、自身で調べた海外の状況として、エストニア、韓国、シンガポールでは行政手続きのオンライン利用が広く定着していることも紹介した。海外の状況も参考にしながら、オンライン化と利用促進の両面から、利用者が目的を果たせる体験を整えていくという考え方だ。

 岡田氏は前職の求人・採用領域でプロダクトマネージャーを務め、執行役員・開発組織責任者も担った。デジタル庁に入ったのは約1年前。民間でプロダクトを伸ばしてきた人物が、整備されたサービスをどう使ってもらうかという課題に向き合うことになった。

 では、「使われる」とは何か。岡田氏が入庁して最初にぶつかったのは、デジタル庁のミッションそのものだった。

「誰一人取り残されない」を、プロダクトとして実装できるか

 デジタル庁はミッションに「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」を掲げている。岡田氏はこの一文を映し、会場へ問いを投げた。

 「これ、プロダクトとして実現しようとすると、めちゃくちゃ難しくないですか」

 民間のプロダクトマネジメントの作法が、そのままでは効かなかった。

 「ターゲットやコアユーザーを決めて、費用対効果の合うところを狙い撃ちする。そういう民間の考え方で臨んだのですが、それではやはりダメだと思いました」

 全員に同じ使い方は求められない。どんな状況でも必要なサービスにたどり着き、目的を最後まで完了できること。施策を一つずつ積むより、全体として「使われる」方法が要る。

 置いたのは、「使える」から「使われる」への転換だ。整備済みの手続きの認知を広げる「利用促進」、未整備の手続きをオンライン化する「手続整備」、ユーザビリティとアクセシビリティを高める「基盤強化」。この3本柱を、岡田氏は「気づける」「使える」「完了できる」と言い換える。

 「使われる=気づける×使える×完了できる。これが私なりの解釈です」

 掛け算にしたことには意味がある。どれか一つでも欠ければ、結果はゼロになる。

「使われる」を「気づける×使える×完了できる」に分解した3本柱(出典:岡田氏の講演資料)
「使われる」を「気づける×使える×完了できる」に分解した3本柱(出典:岡田氏の講演資料)

 見る単位も変える必要があった。

 「国民がやりたいのは、別に引っ越し手続き(自体)をしたいわけじゃないですよね」

 行政から見える単位は転出・転入届であり、社会保障であり、免許である。住民が直面しているのは、何が必要かを調べ、状況ごとに異なる手続きを把握し、バラバラな期限と書類と窓口をさばくという現実だ。手続きではなく、その先で何を終わらせたいのか。岡田氏はこれをJobs to be Done(ジョブ理論)の観点として整理した。

 ジョブを完了させようとすると、越えざるを得ない壁が3つ立ち上がる。職種、制度・省庁、そしてシステムの境界だ。「入って分かったのですが、システムがめちゃめちゃ多くて、めちゃくちゃ複雑なんです」。行政サービスでは、制度や業務、情報の取り扱いが異なる関係者と協働し、安全性と利便性を両立した体験を考えることが重要だ。

 この3つのうち、いま最も速く溶け始めているのが職種の境界だ。溶かしているのはAIである。

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AIがエンジニアを「実装の先」へ押し出した

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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