編注
原文:「We’re not normal: What the AI adoption gap means for the products you’re building」。翻訳にあたり若干加筆修正を行っています。
AI導入格差と0.04%
おそらく、みなさんは今朝、9時前にAIツールを使っていたはずです。その一方で、みなさんのプロダクトを使うユーザーの多くはAIを使っていないと思われます。
これは単純な対比ですが、デビー・マクマホン氏(イギリスのオンライン旅行サービスLoveholidays(ラブホリデーズ)のプロダクト担当副社長)は、5月21日にMXP London 2026において、この対比と格差がプロダクトにおける意思決定にどのような意味を持つかについて語りました。彼女はこれを「AI導入格差」と名付け、この格差が自身の判断をいかにゆがめてしまうか、驚くほど冷静かつ明快に述べています。
マクマホン氏がステージ上で共有したチャートでは、AIとの関係において、世界の人々は4つのカテゴリに分類されています。
- 84%がAIを一度も使ったことがない
- 16%が無料のチャットボットを試したことがある
- 0.3%がAIに課金している
- 0.04%がAIを活用して積極的に開発を行っている
この最後のグループこそが、MXP London 2026の会場を埋め尽くす人々です。この状況が根本的な乖離を生み出している、とマクマホン氏は指摘します。AIプロダクトを設計している人々は、それを使う人々よりも、AIについてはるかに経験豊富で慣れ親しんでいます。
マクマホン氏は友人アグネスの話を紹介し、その状況を具体的に説明しています。
小学校の教員であるアグネスは、家庭環境が厳しい子どもたちが学校生活に馴染めるよう、日々支援に励んでいます。知的で多忙な毎日を過ごす彼女ですが、AIの利用状況については、無料のChatGPTアカウントを持っているだけで、一度も使ったことがありません。その理由は、働いている学校が、仕事用の端末でAIツールを使うことを禁止しているからです。また、有料サービスを利用する予算もありません。たとえ、明日から禁止が解除され、予算をもらえたとしても、スタッフの中にはAIに対しての知識を持ち、自信を持って始めることのできる人が誰もいません。
アグネスは特別だったのではありません。アグネスこそがLoveholidaysの典型的な顧客です。マクマホン氏がMXP Londonの参加者に心に留めておくよう求めたのは、まさに彼女のような人物でした。
「私たちはバブルの中に生きています。全体の0.04%に過ぎません。私たちが日々体験していると思っているAIは、ユーザーの現実とは実質的にまったく無関係なのです」(マクマホン氏)
実際のプロダクトにおけるAIエンゲージメント動向を把握できるよう、Mixpanelの「2026年AIベンチマーク」では、26億台のデバイスから収集された約2900億件のAIイベントデータを分析しています。その実態は、ここまでのAI導入格差についての情報が示唆するよりもはるかに複雑です。
バブルが意思決定をゆがめる3つの仕組み
マクマホン氏は、自身や業界全体に見られる3つの傾向を挙げました。
AI機能を過度に優先すること
「単に『簡単だから』という理由だけで、何かをローンチしたことはありませんか?」
彼女はこう問いかけつつ、自身も手を挙げました。プロダクト公開のプレッシャーは現実です。取締役会はロードマップにAIを盛り込むことを求め、投資家もロードマップにAIを盛り込むことを求め、競合他社はすでにプロダクトをリリースしています。そして、ツールのおかげですばやく構築できます。しかし、スピーディに構築できることと、構築する価値があるかどうかはまったく別の問題なのです。
摩擦を過小評価すること
現在、多くの人が、AIについて理解を深めるためのプロダクトコミュニティやカンファレンスのセッションといったサポートのないまま、AIに対する見解を自分で作り上げています。これはユーザーを非難しているわけではなくて、ユーザーは、その技術を使うよう求められているまさにその瞬間に、その技術を信頼すべきかどうかを判断しようとしています。
「AIによって生成されたため、正確ではない可能性があります」といった免責事項を結果に添えたとしても、アウトプットされた内容にすでに不安を抱いている人にとっては何の意味も持ちません。
ユーザーに行動変容を求めること
行動変容は、たとえ本人が変えたいと思っていても極めて困難です。習慣が根付いている中で、そのユーザーが行動を変える明確な理由がない場合はほぼ不可能です。AIに対して混乱や懐疑心を抱いている顧客であれば、求めてもいない機能のために検索行動全体を根本から変えることはないはずです。ユーザーが求めているものがキーワード検索とフィルター機能であるなら、欲しいものはそれになります。
さらに詳しく知りたい方へ
AI機能が価値を生み出しているのか、それとも単に利用されているだけなのかを確認してみましょう。
