人事・財務などの基幹業務向けクラウドを提供するワークデイは11月4日、開発者向けプログラム「Workday Developer Program」の日本での提供開始と、国内開発者コミュニティの始動を発表した。契約企業とパートナーに限っていた開発用テナントを、ベータ版として一般の開発者にも無償で提供する。認定・表彰制度やコミュニティと組み合わせ、国内のエコシステム拡大を図る。
ERPから「エージェントのためのプラットフォーム」へ
Workdayは世界で1万1,500社超が利用し、人事や財務のデータを扱う記録システム(System of Record)として企業の中核業務を支えてきた。ワークデイ 常務執行役員 テクノロジーコンサルティング担当 バイスプレジデント 兼 CTOの小今井裕氏は、その開発の軸足がいま、AIエージェントのためのプラットフォームへ移っていると説明した。直近の四半期だけで約300のAPIを追加するなど、オープン化も急速に進めている。
開発の中核となる「Workday Trusted Agent Platform」は、アプリとエージェントの開発基盤「Workday Extend AI」、エージェントの実行基盤「Agent Harness」、エージェントを従業員と同じ枠組みで管理する「Agent Governance」、外部とゼロコピーでデータを共有する「Data Cloud」の4つで構成される。
Extend AIで本番稼働中のアプリは4,200以上、開発者は10月末時点でグローバル3万4,000人を超える。自然言語でアプリやエージェントを構築できる「Developer Agent」は、Claude CodeやCodex、Cursorなどから利用でき、10月に一般提供を開始した。6月からのアーリーアダプタープログラムでは、日本企業を含む125社が6,000以上のアプリを構築したという。外部のエージェント向けには、MCP(Model Context Protocol)ベースの「Agent-Ready Tools」を400以上提供している。
小今井氏は「エージェントを構築すること自体は、もはや難しいことではなくなってきている。一番難しいのは、構築したエージェントが状況を適切に把握し、ガバナンスを維持しながら安全にプロセスを実行できるかだ」と述べ、自社エージェントで用いてきた実行の仕組みを、顧客やパートナーのエージェントにも開放したと説明した。
デモでは、Workday Inc. 開発者リレーションズ マネージャーのニック・モアズ(Nick Moores)氏が、Claude CodeからDeveloper Agentを使い、通勤交通費を申請するエージェントを構築した。
自然言語で要件を伝えると、Developer Agentがデータモデルやタスク、セキュリティ設定を生成する。テナントにデプロイしたエージェントは「Agent System of Record」に登録され、アクセス権限を設定したうえで有効化される。
開発用テナントを無償開放、顧客以外も広く利用可能に
背景として小今井氏は、経営データ基盤のオープン化が求められていること、AI支援ツールで人事部門のHRIS(人事情報システム)担当者のような非開発者もアプリを作れるようになったこと、国内の導入企業が増え、日本固有の商習慣や既存システム連携へのニーズが高まっていることを挙げた。
最大の投資と位置付けるのが開発者テナントの無償提供だ。アプリをエンドツーエンドで検証できるテナントは、従来は契約企業とパートナーにしか提供していなかった。今後は顧客やパートナーでない開発者も、個人のメールアドレスで無料の開発者アカウントを登録し、ベータ版の専用テナントの利用を申請できる。
キャリア支援では「Workday Pro認定」の取得を後押しする。日本ではWorkdayを扱えるエキスパートが少なく、顧客からも人材を増やしてほしいという要望があるという。最優秀開発者を年1回選ぶ「Developer MVP」(現在グローバルで19名)と、地域コミュニティを推進する「Developer Ambassador」(同5名)の国内展開も視野に入れる。
コミュニティ「Workday Developer Community Japan」は、ユーザー企業やパートナーに加え、Workdayを使ったことのない開発者や学生も対象とする。開発環境を広く開くことで、新規顧客の獲得やエージェント管理の仕組みへの理解につなげる狙いもある。説明会当日の午後には国内初のDeveloper Meetupを開催し、約30人の開発者がDeveloper Agentでのアプリづくりに取り組む予定だ。11月5日・6日には「Workday Developer Days Tokyo」を開き、11月中に「Innovation Lab」も開設する。
国内パートナーも「Built on Workday」でアプリ開発へ
パートナーがExtend AIで開発したアプリを「Workday Marketplace」で提供する「Built on Workday」も国内で広がりつつある。コーン・フェリーは自社の「Success Profiles」をWorkdayに組み込み、PwCは日本市場向けアプリの開発を開始した。チームスピリットは、36協定や変形労働時間制といった日本固有の労務要件に対応するアプリを検討している。
顧客自身も、製造業の工場向けスキル管理や小売業の従業員割引管理といったアプリを開発している。Marketplaceは現状、パートナーのアプリを一覧できるカタログで、利用企業はパートナーに個別に問い合わせる形だ。開発者がパートナーとしてビジネスを構築できる施策もパイロット中だという。小今井氏は「日本のお客様、パートナー様、開発者の方と、日本の新しい働き方を作っていきたい」と締めくくった。
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近藤 佑子(編集部)(コンドウ ユウコ)
株式会社翔泳社 CodeZine編集部 編集長、Developers Summit オーガナイザー。1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科、東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了。フリーランスを経て2014年株式会社翔泳社に入社。ソフトウェア開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集・企画・運営に携わる。2018年、副編集長に就任。2017年より、ソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers...
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