生成AI活用により本番インシデントは242%増──ソニーグループが考えるAI時代の「統制と自由」
【GitLab Epic Tour 2026 Japan】統制と自由度の両立で加速するAI駆動開発
ソニーグループの法人向けICT中核企業であるソニービズネットワークスは、AI駆動開発をソニーグループの厳格なセキュリティ基準の内側で回そうとしている。GitLab Epic Tour 2026 Japanのセッション「統制と自由度の両立で加速するAI駆動開発」で、執行役員の平山智史氏が示したのは、2015年のGitLab導入から2025年のUltimate統合までの10年と、その上に載せたAIエージェントの役割分担だった。レビュー工数は50%減り、マージリクエストの待ち時間は消えた。
AIエージェント関連のマージ済みPR数は2025年の28倍に
「本日のテーマである統制というのは、つまりソニーグループの基準をクリアすることです」。ソニービズネットワークス執行役員で開発本部長を務める平山智史氏は、セッションの冒頭でそう定義した。ソニーグループのサービスリリースには、毎回きわめて厳格なセキュリティ基準が求められる。
同社はソニーグループの法人向けICTソリューションの中核企業で、NURO Bizをはじめとするネットワークサービスや、AWSを中心としたマネージドクラウドサービスを展開する。平山氏はNTTに新卒入社後ソニーへ転じ、一貫してエンジニアとして法人向けソリューション事業に従事してきた。
話は生成AI活用の現在地から始まった。ソニーグループは約6万人の従業員に対して独自の生成AIアプリを開発・導入している。ただし平山氏は、「企業変革に至るのは、まだこれからです」と留保をつける。
日本企業全体を見ると、ツール導入は進む一方で現場への浸透に課題が残る。総務省の情報通信白書によれば、業務における生成AIの利用率は米国の68.8%に対し、日本は26.7%にとどまった。
一方、開発現場の数字は別の様相を示す。GitHubの利用データでは、AIエージェント関連のマージ済みPR数が2025年5月の8.3万件から2026年3月には230万件へ、28倍に増えた。自律型のAIエージェントがコードを書いてPRを出す開発サイクルが、標準になりつつある。
『組織構造』と『企業文化』がAI活用を阻む
では、なぜ日本の現場への浸透が進まないのか。平山氏は2つの側面から整理した。
1つ目は利用環境と推進方針だ。使いたいAIツールが現場に用意されていない。業務に不可欠な社内データがAIと接続できていない。各部門がバラバラに進めて個別最適にとどまる。導入しても、使いこなすための習熟度が組織全体に浸透しない。
2つ目は、より根深い日本特有の組織構造と文化の問題だ。企画、設計、開発、運用が分業されすぎて部門間のシナジーが生まれない。ジョブ型雇用が定着していないため、仕事が人に紐づく。そのため現場のボトムアップで抜本的な改革をしようとしても動かしにくい。
そしてもう一つ、トップと現場の乖離が問題になる。「企業トップやマネジメントは、AI活用を推進するものの、具体的なゴール設定や推進の詳細な実行計画は、現場に任せきり、あるいは丸投げになっているケースがある」。このような状況では、経営層の期待と現場の推進状況が噛み合わない。
そのうえで平山氏は、この日もっとも強く伝えたいメッセージへ進んだ。「AI推進を通じて企業変革を成し遂げるためには、AIをツールとして導入し、活用を推進していくだけでは不十分であり、企業トップやマネジメント自らが、AI時代に即した組織や事業体制を作っていくと考えることが不可欠だと私は思っております」
この記事は参考になりましたか?
- DeveloperZine Press連載記事一覧
-
- 生成AI活用により本番インシデントは242%増──ソニーグループが考えるAI時代の「統制と...
- dotsの特徴は「委任可能な射程の長さ」──OpenAI CTOが語るChatGPTの進化
- CVE公表数は1ヵ月に1万件──フロンティアAI時代のセキュリティ課題にデジタル庁はどう向...
- この記事の著者
-
中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)
金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
