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AI時代の「壁」を乗り越えろ。プロダクトマネージャーが直面するカオスと、現場を動かす「仕組み化」のリアル

ProductZine Day 2026

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「PMM JAPAN CONFERENCE 2026」イベントレポート

なぜ今、PMMなのか──「作る力」がコモディティ化した時代の勝ち筋

「PMM JAPAN CONFERENCE 2026」イベントレポート 第1回

 7月13日、プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)にフォーカスした国内初の専門カンファレンス「PMM JAPAN CONFERENCE 2026」が開催された。AIによって「作る」ことが数分で誰にでもできるようになった今、「良いものを作れば売れる」という前提はもう通用しない。プロダクトの良しあしだけでは勝てなくなり、市場で勝たせる職種としてPMMへの注目が高まっている。基調講演と最新の実態調査から浮かび上がったのは、日本のプロダクト組織に足りないのが人材でも意欲でもなく「型」だという現在地だった。なぜ今PMMなのか、その背景を読み解く。

国内初のPMM専門カンファレンスに集った越境者たち

 「PMM JAPAN CONFERENCE 2026」の主催は、今年1月に「国内初のPMM専門コンサルティングファーム」として創業したプロデリア・パートナーズ。米国にはPMM専門のコンサルティングファームが数十社あり、数千人規模のコミュニティも存在するが、日本にはそうした場がなかった。本カンファレンスは、その空白を埋める最初の一歩となる。

 会場に集まったのは、PMMを「これから」の職種として捉える実務家たちである。主催が運営するPMMコミュニティの参加者に前職を聞くと、マーケティング、プロダクトマネージャー、エンジニア、セールス、カスタマーサクセスと実にバラバラだという。基調講演に立ったプロデリア・パートナーズの吉澤和之氏は「PMMは、どの専門分野からでも道は開けています。実際、コミュニティの方々の前職を聞くと、本当にバラバラです」と語った。

 では、なぜ今これほどPMMが注目されるのか。

基調講演に立ったプロデリア・パートナーズの吉澤和之氏
基調講演に立ったプロデリア・パートナーズの吉澤和之氏

「作れば勝てた時代」は終わった

 吉澤氏の講演は、一つの宣言から始まった。

 「『良いものを作れば売れる』という時代は、もう終わりました」

 その象徴として同氏が挙げたのが、いわゆる「SaaS is Dead」の議論である。AIエージェントが複雑な知的業務を自律的にこなせると実証されて以降、SaaS企業の株価が急落した局面を引き合いに、「作れば勝てる」時代の終わりを告げる号砲だと位置づけた。

 背景にあるのは、AIによる「作る」のコモディティ化だ。「AIは『作る』を一瞬でコモディティ化しました。企画も要件定義もコーディングも、コピーライティングもデザインも画像もコード実装も、すべてAIがもう数分でやってしまう」と吉澤氏は言う。結果として何が起きるのか。同氏の言葉が鋭い。

 「『作る力』は、これまでは勝つ条件でした。それがいよいよ、参加資格条件になってしまう」

 かつては機能の数、品質、改善ループの速さといった、プロダクトの「中身」で差がついた。だが、その中身が誰でも数分で作れるようになれば、差別化の場所はプロダクトの外側へ移らざるをえない。吉澤氏はこの日、聴衆に持ち帰ってほしいことを3点に凝縮した。

 「1つ、『作る力』はもう差にならない。2つ、差は『勝たせ方』に移った。3つ、PMMの本質は『越境』である」

PMMとは「市場で勝たせる」職業

 では、勝敗を分ける「勝たせ方」とは何か。吉澤氏はまず、プロダクトが選ばれるまでに越えるべき「3つの壁」を提示した。認知の壁、比較の壁、そして選択の壁である。

プロダクトが選ばれるまでに越える「3つの壁」。投影資料より
プロダクトが選ばれるまでに越える「3つの壁」。投影資料より

 とりわけ同氏が重視したのが、最後の「選択の壁」だ。認知され、比較して良いと評価されても、「今はいいや」と後回しにされれば受注には至らない。「なぜ今、あなたのお客さまがそのプロダクトを欲しているのか、必要としているのか。この設計がないと選ばれない」。いわゆる「Why Now」の設計こそが、勝敗の最終関門になるという指摘である。

 この壁を越え、「市場で勝たせることに責任を持つ」職種。それが吉澤氏の定義するPMMだ。同氏は「PMMとは何かを一言で言えば、『プロダクトを市場で勝たせる専門の職業』です」と定義する。作る側(開発・プロダクトマネージャー・技術)と届ける側(営業・マーケティング・カスタマーサクセス・インサイドセールス)のあいだに生じる「空白」を引き受け、両者を翻訳し調整する役割だという。

 具体的な仕事は3つの動詞に整理された。市場・顧客・競合を構造で捉え、どの課題なら勝てるかを「見極める」。勝ち筋を物語化し、GTM(Go-To-Market)を「設計する」。そして組織を同期させて「動かす」。吉澤氏はこれを「ウィンデザイン(Win Design)」と呼んだ。

データが示す「足りないのは人ではなく型」

 こうした問題意識は、講演者の実感にとどまらない。プロデリア・パートナーズが実施した実態調査「日本PMM市場レポート2026」は、日本のプロダクト組織が抱える課題を数字で浮かび上がらせた。有効回答は166名。回答者はSaaS・IT系が8割を占め、「ほぼB2B SaaSを主軸とした実態調査」だと吉澤氏は説明する。

 まず、GTM、すなわち市場への「届け方」に課題を感じている回答者は87%にのぼった。うち「強く感じる」が45%と、半数近くが強い課題感を抱く。そしてつまずくフェーズを聞くと、最も多かったのは「市場に出す段階」で45%。作ることよりも、届けることでつまずいている実態が読み取れる。

GTMに課題を感じる回答者は87%にのぼった。「日本PMM市場レポート2026」より
GTMに課題を感じる回答者は87%にのぼった。「日本PMM市場レポート2026」より

 興味深いのは、PMMという機能そのものは「ないわけではない」という点だ。何らかの形でPMM機能が存在すると答えた回答者は92%。ところが、専任の肩書き(PMM)として置かれているのはわずか28%にとどまった。約7割の企業には、PMMという専任機能がないのである。

 さらに調査は、整っていない「3つの型」をあぶり出した。役割分担、型・メソッド・教育、キャリアパスである。5点満点で聞いた充足度は、役割分担2.4、型・メソッド2.3、キャリアパス2.2といずれも低い。機能はあっても、それを回すための型が組織に根づいていないのだ。

 こうしたデータを踏まえ、吉澤氏はこう結論づけた。「日本のGTMに足りないものは『人』ではなく『型』であった」。作る力は十分にある。足りないのは、届ける職能とその型だ。これが調査の示す現在地である。

 だが、この現在地にたどり着いたのは、プロデリア・パートナーズだけではなかった。

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同じ結論に至った、もう一つの調査

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...

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