AIとともに組織を進化させる──モノタロウが挑む「熱量」から「文化」への昇華
【B-10】AIと共に、組織をどう進化させるか? 〜 “熱量”を“文化”へ昇華させる、持続可能なAI活用の仕掛けづくり 〜
生成AIをめぐる動きが慌ただしくなるなか、多くの開発組織が「AIツールを導入したものの、一部のメンバーしか使いこなせていない」という状況に直面している。ライセンスを購入し展開すれば普及するはずだ──そう考えた施策が期待通りの成果をあげないケースは珍しくない。株式会社MonotaROでプラットフォームエンジニアリング部門長を務める香川和哉氏は、この課題に対し「キャズム理論」を組織変革に応用。エバンジェリスト制度、AIトレンドラボ、社内道場という3つの仕組みで、一部の熱意あるメンバーの「熱量」を組織全体の「文化」へと昇華させる取り組みを2023年から推進してきた。ツールを展開した先に何が待っているのか。2年間の実践から得た知見と、次のキャズムへの挑戦を語った。
※本記事は講演時点(2025年9月)の情報をもとに構成しており、現在の取り組みと異なる場合があります。
ツールを配れば組織は変わるか?
香川氏は2016年の中途入社後、BigQueryを中心としたデータ基盤の構築・運用に従事し、現在はデータマネジメントやエンジニア育成、AI駆動開発の推進を担っている。
MonotaROはBtoB向けに間接資材を自社在庫で販売するEC企業だ。商品採用から物流、SCM、マーケティング、ITまでを自社開発・自社運用する「フルスタックECカンパニー」を標榜し、売上高2,761億円、ユーザー数1,014万人、取扱商品2,475万点(いずれも2024年単体)という規模を持つ。エンジニア組織は正社員・パートナーを合わせて400名規模で、5つの部門に分かれている。
香川氏が率いるプラットフォームエンジニアリング部門は、サーバインフラやデータ基盤、開発・保守基盤、DevOps/Webセキュリティなど、価値提供の基盤となる領域を担っている。
「内製で高速化できる」という仮説
MonotaROのAI活用は2023年に始まった。まず取り組んだのは、Slack上で動くChatGPT連携ボットの開発だ。エンジニア以外も含む全社員が使い慣れたSlackからAIにアクセスできるようにしたことで、生成AIを業務で試す入口を社内に用意した。同年7月にはGitHub Copilotを全エンジニアに展開し、社内標準エディタであるVS Codeの全利用者、当時約350名がコード補完AIを使える状態になった。
2024年に入ると、状況が変わってきた。自然言語からアプリケーションを生成するLovableやv0、あるいはプログラミング言語間のコード変換ツールなど、AIを活用した開発支援サービスが次々と登場した時期だ。香川氏はCTOの普川氏とともに、これらのAIをモダナイゼーションに活用できないかを頻繁に議論していたという。
同社が抱えていたのは切実な課題だった。25周年を迎える同社には、20年以上稼働し続けているシステムが存在する。継ぎ足し継ぎ足しで運用されてきたため巨大なモノリスとなっており、モダナイゼーションは喫緊の課題だった。
そこで香川氏が立てた仮説は「AIを使ったコーディングはすでに大きな成果を出せるレベルにある。特にモダナイゼーションに適用できるのではないか」というものだ。さらに、大きな成果を出すためにはプロセス自体を構造的に変える必要があり、そのためのプロセスとツールを内製すべきだという考えに至った。CTO-Officeに小規模な専任チームを置き、AIによるモダナイゼーションプロジェクトが始動した。
会員登録無料すると、続きをお読みいただけます
この記事は参考になりましたか?
- Developers Summit 2025 KANSAI セッションレポート連載記事一覧
-
- AIとともに組織を進化させる──モノタロウが挑む「熱量」から「文化」への昇華
- 小さな課題意識から全社の「協創」へ──ダイキン工業はソフトウェア開発をどう変えてきたのか
- エンジニアリングマネージャーという役割の正体──はてなが進めるEMキャリアラダー
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
