4か月の成果と、想定外の結論
プロジェクトでは、LangChainを用いたソースコード分析から仕様書作成へのワークフロー、コード間の依存グラフを構築・可視化するツール、そしてモダンなアプリケーションへリプレイスするためのコード生成ワークフローを構築した。
仕組みとしては、レガシーなソースコードをLLM(大規模言語モデル)に読み込ませて仕様書を生成し、並行してコード間の依存関係をグラフとして可視化する。その仕様書と依存グラフをもとに、GoやNext.jsといったモダンな言語・フレームワークによるコードを生成するという流れだ。
4か月間の取り組みで、仕様書作成にかかる工数が「1日から10分」に短縮されるなど、モダナイゼーション全体の工数をおよそ半分に削減するという成果が得られた。AIを使ってモダナイゼーションを進めるうえで、どのようなプロセスが有効かも見えてきた。
ところが、ここで想定外の事実が判明する。プロジェクト期間中に並行して検証を進めていたCursorやDevinを使えば、内製ツールと同等のことができると分かってきたのだ。モデルやツールの進化スピードが凄まじい中、「現時点では内製はあまり効果的ではない」と判断し、内製ツール作成は一旦中止となった。
キャズムを越えるための3つの仕掛け
2025年1月、MonotaROはCTO-OfficeにAI駆動開発チームを改めて組成し、方針を転換した。ただし、ツールを配布すれば自然に広まるとは考えなかった。香川氏が意識したのが「キャズム理論」だ。新しいサービスの市場普及過程を説明するマーケティング理論だが、香川氏はこれを組織内の文化変革にも当てはまると捉えた。社内にはすでにレビューやテスト生成などでAIを積極的に活用しているメンバーが一部いる一方で、多くはそこまで使いこなせていない。この「熱意のある少数」と「そうでない多数」の間に横たわる溝がキャズムだ。
「イノベーター、アーリーアダプターのようなメンバーの熱量を、仕組みでもってキャズムを超えて文化に昇華させていくことが重要」という考えのもと、3つの施策が実施された。
一つ目が「AI駆動開発ツール価値探索プログラム」とエバンジェリスト制度だ。ツールを希望するチームに対し、プログラムへの参加と、チームから1名のエバンジェリスト選出を条件とした。エバンジェリストは「情熱を持った文化の牽引役」として、チームでのツール活用方法を積極的に探索する役割を担う。全チームの約3分の2がプログラムに参加している。
二つ目がAIトレンドラボだ。エバンジェリスト同士の取り組みを共有し、横のつながりを生むための場として定期開催している。CursorやDevinの使いどころ、社内での発展的な活用事例などをテーマに発表が行われ、過去4か月で6回の開催、延べ300名以上が参加した。
三つ目がAI駆動開発ツールDOJOだ。社内のエンジニア育成機関である「道場」の研修メニューとして、CursorやWindsurfの基礎的な使い方を学ぶ講座を設けた。延べ40名程度が参加し、エバンジェリストが自チームで活動する際の土台となるスキルを習得する機会を提供している。
