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CTOインタビュー

常識を疑い、歴史に学ぶ──AIエージェント時代のオブザーバビリティデータ基盤とは?

Imply Data, Inc. Field CTO/Chief Architect エリック・チェッター氏インタビュー

 オブザーバビリティの浸透によってシステムの安定的な運用が実現する一方、ログは増え続け、課金額も上がり続ける。ゆえに現場では蓄積するログに優先順位をつけ、限定することもある。これが今後AIエージェントを活用していくうえでどのようなリスクをもたらすのか。東京大学大学院の修士号を取得し、「Apache Druid」の共同開発者で、元Splunk Fellow、現在、ImplyのField CTOとChief Architectを務めるエリック・チェッター氏は、従来のセオリーに疑問を投げかける。流ちょうな日本語を操り、データ基盤の進化に貢献し続けてきた同氏が見いだすのは、かつてBIツールの世界で起きた「デカップリング(分離)」の波だ。業界の常識にとらわれない新たなデータ基盤の思想と、その背景にあるエンジニアとしての哲学を聞いた。

Imply Data, Inc. Field CTO/Chief Architect エリック・チェッター(Eric Tschetter)氏
Imply Data, Inc. Field CTO/Chief Architect エリック・チェッター(Eric Tschetter)氏

オブザーバビリティの世界の垂直統合、その裏に潜むリスク

 オブザーバビリティツールやSIEM製品の多くは、データの収集から保存、検索、可視化を一気通貫でまかなうカップリング(垂直統合)が形成されている。例えば、データ基盤の「Elasticsearch」+収集の「Logstash」+可視化の「Kibana」、いわゆる「ELKスタック」だ。あるいは「Grafana」+「Loki」+「Alloy」のように同じ系統で揃える。「New Relic」や「Datadog」は収集から可視化まで1社で完結できる一体型SaaSの代表格と言える。

 こうした「一気通貫」は運用上のメリットがある一方、裏を返せばサイロ化による弊害を生みかねない。例えば社内で部署やチームごとに好みの組み合わせを導入してしまうと、データの管理方法やデータ形式がベンダーのシステムに閉じているため連携が困難になる(できなくはないが)。他ツールへの移行も難しくなる。

 また垂直統合型(一体型)の製品では、一部の層だけではなく全体を一元的にスケールさせる必要があるため、データが増えればライセンスとコストも高騰してしまう。結果として「このログ、要らないよね?」とログを間引くことにもつながる。あるいは検索が遅いストレージに退避させることもある。

 どのログを残し、どのログを捨てるか。項目の取捨選択もさることながら、保存期間の設定も難しい。もしその判断を誤れば、インシデント調査で足をすくわれてしまいかねない。例えば標的型攻撃のなかには、攻撃者が侵入してから検知されるまでの期間(滞留時間)が数カ月から年単位に及ぶこともある。これには長期間潜伏することでログの保存期間が過ぎて廃棄され、侵入経路の特定を困難にさせるねらいもある。ログを捨てるということは、こうしたリスクも抱え込むことでもあるのだ。

 また、今後はAIエージェントでの活用を見すえたリスクも考慮しておきたい。AIエージェントのベースとなる大規模言語モデル(LLM)は推論や判断などの思考の中枢を担うものの、それ自体には長期記憶の仕組みを持たない。過去を踏まえた振る舞いをさせるには、外部に何らかのデータ基盤を用意して、必要なときに参照できるようにしておく必要がある。

 オブザーバビリティにおいて、外部記憶の有力な実体となるのがログだ。ところがコスト削減のために間引かれ、あるいは検索の遅いストレージに追いやられてしまうと、AIエージェントの活用で不利になりかねない。しかもAIエージェントは人間よりもはるかに多くのクエリを投げる。これからのデータ基盤には大量のデータを捨てずに蓄積可能で、高速に検索できることが求められるようになる。

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BIツールで起きたことは、オブザーバビリティツールでも必ず起きる

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレーターも担当しています。Webサイト:http://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

CodeZine編集部所属。

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