はじめに
筆者は普段、AWSの技術コンサルタントとして顧客の課題解決を支援しています。その現場で非常によくいただくのが次のような質問です。
- 「クラウドの費用が高い気がするんだけど、何から手をつければいい?」:まだ具体的な問いになっていない相談
- 「〇〇で基幹システムを動かしている事例はありますか? ハマりどころは?」:先行事例と注意点を求める質問
- 「この構成の場合のベストプラクティスは何ですか?」:推奨構成と根拠を求める質問
これらに答えるには、AWS公式ドキュメント、ブログ、AWS規範ガイダンス(Prescriptive Guidance)、Well-Architected Frameworkを横断的に調べ、社内の有識者にも当たって……と、1つの質問に数時間から数日かかることも珍しくありません。回答の品質も担当者の経験に依存しがちです。本記事では、この調査・回答業務をKiroで仕組み化する方法を紹介します。
なお、Kiroを取り上げるのには時事的な理由もあります。2026年4月30日、AWSはAmazon Q DeveloperのIDEプラグイン等のサポートを2027年4月30日で終了すると発表し、移行先としてKiroを案内しました。なお、サポートが終了するのはVS CodeやJetBrainsなどのIDEプラグインや有料サブスクリプションなどであり、マネジメントコンソールやSlack・Microsoft Teams連携といったAmazon Q Developerの機能は引き続き利用できます。あくまでIDEを用いたAI開発体験がKiroへ集約されていくという位置づけのため、その中心となるKiroは早めに押さえておきたいアップデートと言えるでしょう。
Kiroの最新アップデート
Kiroは、AWSが開発した「仕様駆動(spec-driven)」を特徴とするエージェント型IDEです。Kiro自体の概要や仕様駆動開発については第34回で紹介していますので、本記事ではSpec機能には深入りせず、チャットベースの調査・回答ワークフローに焦点を当てます。まず直近半年あまりの主要アップデートを整理します。
| 時期 | アップデート | 概要 |
|---|---|---|
| 2025/12 | Kiro Powers発表 | MCPサーバー・ステアリング・フックを1パッケージにした拡張機構。会話内のキーワードでオンデマンド発火 |
| 2026/2 | Agent SkillsのIDE対応 | SKILL.md(手順・知識のモジュール)をIDEでも利用可能に |
| 2026/2〜 | AWS公式Powerの拡充 | AWS Observability、AWS Transform、AWS SAM、Aurora DSQLなどが順次追加 |
| 2026/4 | Kiro CLI 2.0 | Windows対応、ヘッドレス実行(CI/CD組み込み) |
| 2026/5 | Kiro Web登場、Claude Opus 4.8対応 | ブラウザ版Kiroの提供開始。Opus 4.8は1Mトークンコンテキストに対応。Specsの高速化も実施 |
| 2026/6 | Kiro WebのSpec・GitLab対応 | ブラウザ版でもSpec駆動の開発ワークフローとGitLab連携が利用可能に |
MCP(Model Context Protocol):AIエージェントが外部のツールやデータと連携するための標準プロトコル。ステアリングはエージェントへの常設の指示ファイル、フックはイベントに連動して実行される自動処理です。
本記事で主に使うのはPowersとAgent Skillsです。両者は似ていますが、役割が異なります。
- Powers:MCPサーバー設定・ステアリング・フックを「Power」と呼ばれる単位のパッケージにまとめた拡張機構。キーワードに応じてオンデマンドで発火するため、必要なときだけツールと知識がロードされ、コンテキストを汚しません
- Agent Skills:SKILL.mdに記述した手順や回答の型をエージェントに与えるモジュール。タスクとの関連性で自律的に発火します
本記事では、仕組み・機能の名称を「Powers」、個々のパッケージを「Power」と表記して区別しています。
もう1つの主役が AWS Knowledge MCP Server です。AWSが提供するフルマネージドのリモートMCPサーバーで、最新のAWSドキュメントに加え、ブログ、What's New、アーキテクチャ参照資料、Well-Architectedガイダンスといった公式コンテンツを横断検索できます。なお、AWS Observability Powerなどに同梱される「AWS Documentation MCP Server」はドキュメント検索のみのため、「事例ありますか?」に答えるにはKnowledge MCP Serverが必要です。これを含む公式Powerは執筆時点では存在しないため手動で設定しますが、必要なのはURL1行で、認証も不要です。
