エンジニアリングリーダーの約46%が燃え尽きを経験──技術進化と人間の認知限界にあるギャップ
コーディングエージェントの導入によってコード生成の速度が上がり、エンジニアの仕事は劇的に楽になると思われた。しかし、現実の開発現場では、AIの導入が皮肉にも新たな疲労感を生み出している。
エンジニアリングマネージャーやテックリードを対象としたグローバルなコミュニティ「LeadDev」が実施した2025年の調査では、「クリティカルなレベルで燃え尽きを感じた」と答えた人が22%、「中程度の燃え尽きを感じた」という人が24%に上り、合計で46%ものエンジニアリングリーダーが深刻な燃え尽きを経験していることが明らかになった。
さらに別の設問では、38%の回答者が「労働時間が増加した」と報告している。「席を外している時間にコーディングエージェントに開発してもらうために、事前にプロンプトを投げておく。寝ている間に開発してもらうためにプロンプトを投げておく。そうやってズルズルと夜遅くまで働いてしまうことが増えた実感があります」と宇佐美氏が指摘するように、AIエージェントという眠らない存在が、人間の労働と休息の境界線を曖昧にしてしまっている。
エンジニアリングリーダーの46%が燃え尽きを経験した
宇佐美氏はこの状況を分析し、現場を疲弊させている要因として、大きく3つの仮説を提示した。
第一に、「コンテキストスイッチの増加」だ。AIエージェントは非常に優秀で、並列で複数のタスクを処理することができる。エンジニアは朝出社して、3つの異なるタスクを複数のエージェントに投げ分ける。しかしそれは、自身が監視・確認しなければならないプロセスが同時並行で複数走ることを意味する。
1つのエージェントから返ってきたコードを確認している最中に、別のエージェントに修正プロンプトを投げ、そうこうしている間に同僚から新たなコードレビューの依頼が飛んでくる。一つひとつの作業は小さくとも、脳内では絶え間なくコンテキスト(文脈)の切り替えが発生し続ける。結果として、1日中働き詰めであっても「今日は何か大きな困難な課題を解決した」という手応えがないまま、ただ認知的な疲労だけが蓄積していく。
第二に、「プルリクエスト(以下、PR)レビューの負荷の爆発」だ。これについては次章で詳細に分析するが、生成されるコードの量に対して、それを確認する人間の処理能力が全く追いついていないという深刻な問題がある。
第三に、「コードを書く楽しみの喪失」だ。パズルのように複雑なロジックを少ない行数で組み上げたときの高揚感や、リファクタリングによってコードベースが洗練されていく過程を眺める喜びは、多くのエンジニアにとって仕事を続ける上での重要なモチベーションだった。
しかし、そうした「一番楽しい部分」をAIが瞬時に代替してしまうことで、エンジニアの業務はプロンプトの調整や他者のコードのレビューといった、相対的に単調な作業の比率が高まってしまったのだ。
技術の進化スピードと、人間の認知限界・体力との間に生じたギャップこそが、現在のソフトウェア開発現場における課題の根本原因と言えるだろう。
