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Developers CAREER Boost 2023 セッションレポート(AD)

不安を抱えながらも歩んできたエンジニア人生、3回の転職で見えた成長する道とは

【A-6】エンジニアリングの軌跡:失敗から学び、成長する道

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 「保険業界のアップデート」を目指して2017年に設立したhokanは、保険代理店向けシステムを開発している。2021年に同社へジョインしCREチームを率いてきた小倉隆宏氏が若手エンジニアに向けて、同氏が若手時代に経験してきたこと、学んだことを若手エンジニアに向けてつまびらかに語る。

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不安と焦りのなか、資格取得に迷走した20代

 若手に向けて、自身の経験を語ってくれるのは株式会社hokan 開発責任者 小倉隆宏氏。2021年2月に入社、CRE(顧客信頼性エンジニアリング)を立ち上げ、30社ほどの顧客企業の導入支援に従事してきた。2023年5月より開発責任者を担当している。小倉氏にとってhokanは4社目。1社目に13年、2社目に6年勤めたため「社会人としての人格を形成したのは最初の2社」と話す。

小倉氏のこれまでのキャリア
小倉氏のこれまでのキャリア

 小倉氏が就職したのは2000年。バブル崩壊後の不景気の影響で「就職氷河期」と呼ばれ、就職浪人もいた時代だ。ただしIT業界は別だった。インターネットバブルや2000年問題への対応があり、求職は活況だった。そうした後押しがあり、小倉氏もシステム開発会社に入社した。

 1社目となるシステム開発会社では、保険や共済のシステム開発・保守案件を多くこなした。入社後に最初に配属されたのは大手損害保険会社で、帳票システム開発などを経験した。また、共済の基幹システム保守開発案件にも従事した。なお、共済は保険と似ているものの、営利目的ではなく、加入できるのは組合員と家族のみで構成されているのが特徴だ。さらに損害保険会社にて、社員代替としてシステム開発会社と要件定義のとりまとめや、社内向けシステムの開発も担当した。

 そして1社目の最後には、大規模なシステムリプレイス案件に立ち上げから参画することになった。アサインされた時に小倉氏は10〜15年かかる規模のプロジェクトだったため「先のキャリアを考えた時これでいいのか悩んだことを覚えています」と話す。

 仕事はおおよそ順調そうに見えるが、小倉氏の脳裏には焦りや不安もあった。学生時代にプログラミングやシステムを熱心に学んでいたとは言えず、2008年にはリーマンショックによる影響で常駐先の仲間が次々と撤退していく姿も見た。当時はその自覚がなかったものの、いま振り返ると「迷走していた」と小倉氏は言う。そう感じていたのは、がむしゃらに資格取得に励んでいたからだ。

 資格を取得すれば少なくとも報奨金が出る。1度きりとはいえ、いい収入になる。小倉氏は「当時の社会情勢から、給料アップやボーナスが不安な時代でしたので、どうしたらいいか焦り、まずはさまざまな資格を取りました」と語った。まずは基本情報技術者、ソフトウェア開発技術者(応用情報技術者)、データベーススペシャリスト、プロジェクトマネージャ、Oracle認定JavaプログラマなどIT技術者向けの資格はもちろん、日商簿記2級、ファイナンシャルプランナー3級など金融系にも手を広げ、さらにTOEICも定期的に受験していた。

取得した資格
小倉氏が取得した資格

 さまざまな資格を取りながら業務を行う中で、社内活動にも参加した。小倉氏が所属する会社では多くの社員が派遣先企業に常駐していたため、会社への帰属意識が薄かった。こうした状況を改善すべく、若手社員と経営陣が月次で意見交換する委員会が立ち上がり、小倉氏はここに参加した。自身の体験をもとに経営に提言し、行動に移していた。

 なお、1社目では社内・社外の研修受講の機会が豊富にあった。小倉氏は「35歳エンジニア定年説というのがあり、プログラミングだけでは35歳以降生き残れないという話を真に受けていたので、マネジメントやリーダーのための研修も熱心に受講していました」と話す。

 1社目の経験を振り返り、小倉氏は「とにかく迷走していました。皆さんも周囲を見て焦ることもあるかと思いますが、恐らくこれは誰もが経験する普通のことです。いろいろ悩むことも経験してください。また資格や研修受講は若い時期がいいと思います。30歳を過ぎると家庭を持ち、子どもを育てる人もいますし、職場で責任ある立場を任されることもあり、自分に使える時間が減ってきます。若いタイミングでキャリアの基盤を固めるために、技術研さんすることはとても大事なことです」と提言する。

転職活動を重ねて見えてきた印象的な指摘

 世界的に不景気に陥ったリーマンショックのころ、システム開発会社でも仕事が減り、人員削減でどんどん人が現場から「剥がされていく」のを小倉氏は目撃していた。当時アサインされていたのは長期プロジェクトで「これを終えたら10〜15年過ぎている。その後、自分はどうなるだろう」と不安が募り、転職活動を開始した。面接を重ねていく中で、印象的な指摘があったという。

 1点目は「なぜ30歳を過ぎて転職活動するのか。普通は20代のうちに転職するものだ」という指摘だ。この発言に小倉氏は「確かに。20代で自分のキャリアプランを立てて、若いうちから転職なり行動していくのがいいのだろう」と頷きつつも、「30歳を過ぎて転職してうまくいくケースも多々ある」とも言う。

 2点目は「君の尖ったものは何か」という指摘だ。言い換えれば専門性や得意分野であり、これをしっかり言語化しておく必要があるということだ。「これなら誰にも負けません」というものを、日々の仕事や生活のなかから見いだし、伸ばしていくことはとても有益だ。

 そうした折、損害保険会社に勤めている知人からの誘いを受け、転職する運びとなった。まずは社内向け業務支援システム開発から着手し、次第に仕事ぶりが認められ、主要業務となる自動車保険基幹システムの保守やプロジェクト運営を任されるようになった。

 その後も新商品となる火災保険や団体保険などのシステム導入プロジェクトで、パッケージやベンダーの選定、予算組みなど大きな仕事を任されるなど仕事は発展していった。さらに経営企画で使うデータ分析基盤においても、Tableau(BIツール)導入やデータウェアハウス構築にも携わった。

 2社目で小倉氏は「大きな会社に入社して気づいたのは、何を決めるにも時間がかかるということです。特に事前の根回しが必須。伝える内容も大事ですが、『この人が言うなら間違いないだろう』と人を見られることも多いので、人を磨くことも大事」だという。また「部門横断のプロジェクトでは他部署に仲間がいると心強い。仲間を作るには、普段の仕事で地道に成果をあげていくことが大事」と小倉氏は強調する。

 これはどの会社でも通じることではないだろうか。何かプロダクトを開発する時、開発部門だけではなくビジネス部門や他部門との連携が必要になるため、社内における人脈を広げていくことは大事だ。

 時には社外の人脈も重要になる。小倉氏は「他業界でも同じようなものですが、保険業界は内部のつながりが強く、他保険会社の方と情報交換をすることもあります。業界内の転職も多く、保険会社から別の保険会社だけではなく、保険会社のシステム開発をしていた人が保険会社に転職することもあります。そのため日々の業務で出会う人たちと、なるべく良好な関係を築くことが将来にも役立ちます」とアドバイスする。

自分の「尖った武器」とは? これまでのキャリア全体の振り返り

 3社目はスタートアップに転職し、Webサービス開発やスマートフォンアプリ開発を任された。システムは完成したものの、コロナ禍の不遇もありサービス展開は伸び悩んだ。そこでまた業界の知人から声をかけられ、現在のhokanへと転職する。

 hokanではCREを立ち上げ、組織の拡大に成功した。後任が見つかったため、2023年5月からは開発責任者としてエンジニア組織全体の拡大や生産性向上に注力しているところだ。

 これまでのキャリア全体を振り返り、小倉氏は「保険業界に特化してきたのは結果としてよかった」と考えている。もともと保険に熱意があったわけではないものの、長く経験を積んだことで業界知識が豊富になり、自分の強みにつながった。まさに最初の転職で問われた「尖った部分」にあたり、小倉氏にとって大きな「武器」へと育った。

 またこれまでの転職は3回とも知人からの紹介で実現した。小倉氏は聴衆に向けて「運が良かったなと思えますが、きっとそうではなく、1つずつ目の前の仕事を積み重ねてきた結果だと思っています。ですので、皆さまも将来への不安や期待もあるかと思いますが、目の前にある仕事を着実にこなしていくこと、信頼を得ていくことは非常に大事です」と語る。

 ただし小倉氏にも後悔がある。それは技術研さんが足りなかったこと。テック企業にいて高いスキルを持つエンジニアを見ていると「若い時に業界知識やリーダー、マネジメントに注力しすぎて、もう少し技術研さんに力を入れればよかったな」と思うそうだ。聴衆となる若手エンジニアに向けて「皆さまも日々技術研さんをしっかりやっていただけたらと思います。私はキャリア終盤ですが、まだまだ技術研さんに励みたいと思いますので、皆さまと一緒に頑張っていけたらと思います」と抱負を述べた。

これまでのキャリアでの気づき
これまでのキャリアでの気づき

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