「誰もが当事者になれる場」をつくる、PyCon JPの多様性の実践
PyCon JPは歴史的に言語的なダイバーシティに強く、英語トラックの設置などを通じて海外からの参加者も全体の15~20%ほどを占めている。しかしその一方で、日本のIT業界全般の課題と同様に、女性参加者の比率が依然として低いという課題を抱えてきた。
本家である米国開催の「PyCon US」では女性の参加比率が約40%に達している。この背景には、Python創始者のグイド・ヴァンロッサム(Guido van Rossum)氏が20周年・30周年記念インタビューで「女性向けの活動をしなければコミュニティは細ってしまう」と語っていたように、Python Software Foundationが早くから強い危機感を持って取り組みを推進してきた歴史がある。日本でもこうした世界的な流れを受け、単に「技術を発表・勉強する場」にとどまらず、多様な人々が等しく集まれる環境作りが進められている。
昨年の「PyCon JP 2025」では、メインプログラムとしてD&Iをテーマとしたスペシャルセッションが行われた。このセッションは「性別による悩み」だけに限定しない構成がとられ、エンジニアとして活躍する女性だけでなく、非エンジニアでありながら業務でPythonを活用している参加者、海外出身のエンジニア、学生など、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が登壇した。
PyCon JP Association理事として女性エンジニアのコミュニティ支援に携り、PyLadies Tokyoのオーガナイズメンバーも務める石田真彩氏は、「D&Iと聞くと、まず性別格差が注目されますが、本来はバックグラウンドや置かれた環境の多様性すべてを指すものです」と語る。「自分とは異なるバックグラウンドを持つ人が、どうPythonと向き合っているか」を共有することで、会場の男性参加者からも「自分たちにできるサポートは何か」といった前向きな質問が飛ぶなど、非常に良い対話の機会となった。
また広島県在住で、女性向けAI/ITスキリングプログラムのCode Without Barriers in Japan(CWBJ)アンバサダーを務め、主催メンバー(オーガナイジングメンバー)の一人として参加した槇野未来氏は、製造業の非エンジニア部門に所属しながらプログラミングを学び、運営に参画している。昨年は、医療現場でデータ分析を行うためにPythonを学んだ保健師も登壇していた。「エンジニアではないけれどPythonが好き」という立場であっても対等に参加し、キャリアの広がりを実感できる場があることは、多くの非エンジニアや初心者にとって大きな励みとなっている。
