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Developers Summit 2024 KANSAI セッションレポート

「うまい棒1本分」のコストで1年3か月分の処理を高速化! OpenAI Embedding APIで実現するレコメンド機能開発

【B-7】誰でもできる!OpenAI Embedding APIを活用して、高度なレコメンド機能を実現してみよう

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 OpenAI社のEmbeddings APIは、文章をベクトル化し、分散表現技術を活用することで、コストを抑えつつ高度なレコメンド機能を実現できるAPIである。株式会社マネーフォワードの近藤豊峰氏は、AI人材不在、学習データも乏しいという制約下で、このEmbeddings APIをクラウド連結会計プロダクトに導入し、勘定科目の意味的関連性に基づいたレコメンド機能の構築に成功した。本セッションでは、近藤氏が実践したEmbeddings API導入の背景や技術的な要点、AIとクラウド技術の活用でコストを抑えつつプロダクト価値を高めた同社の事例について語った。

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複雑な会計用語の関係性を数値化する

 株式会社マネーフォワードの近藤氏は、同社クラウド連結会計プロダクトにAIレコメンド機能を導入し、2023年8月にリリースした。この機能はOpenAI Embeddings APIを活用し、勘定科目の類似性に基づき、親会社と子会社の科目差異を補完する仕組みだ。経理担当者が効率的に科目を選択できるよう支援することを目的としている。

株式会社マネーフォワード クラウド連結会計開発部 近藤 豊峰氏
株式会社マネーフォワード クラウド連結会計開発部 近藤 豊峰氏

 近藤氏は、「子会社が残高試算書をアップロードすると、AIがその勘定科目に類似する親会社の連結科目を3件レコメンドし、経理担当者が適切な勘定科目を選択できるよう支援する機能だ」と説明する。勘定科目とは、各取引を記録するための「家賃」や「売上」などの会計上の分類項目を指す。連結会計においては、これらを親会社の連結科目に集約する必要があり、異なる名称や言語であっても「意味的な類似性」に基づいて正確に対応させなければならない。

マネーフォワード社がレコメンド機能を実装したクラウド連結会計プロダクト
マネーフォワード社がレコメンド機能を実装したクラウド連結会計プロダクト

 従来は、経理担当者が名称の異なる連結科目を手作業で補完しており、特に海外子会社を含む場合は、言語や名称の違いにより単なる一致検索では不十分だった。そこで、科目の名称に依存せず、その「意味的近さ」をベースに、連結科目を自動でレコメンドする必要が生じたのである。

 しかし、レコメンド機能開発当初は、プロダクトリリース直後で学習データが不足しており、さらに独自の機械学習モデル構築には高額なコストや専門人材が必要という課題もあった。そのため、リソースを抑えながらも高精度のレコメンドを実現できる方法として、近藤氏が目をつけたのがOpenAI Embeddings APIだった。

 このサービスの利用にあたり前提知識として必要になるのが、文章ベクトルと分散表現(Embedding/Word2Vec)だ。テキストデータを数値化し、機械学習モデルで扱いやすい形に変換する技法を指す。Embeddings APIは、この文章ベクトルと分散表現技術をAPI経由で提供することで、テキストの意味を捉えたレコメンドや分類を可能にしている。

 文章ベクトルは、複数の浮動小数点の配列で構成される。ここで言う浮動小数点の配列とは、座標として表現できるものを指す。例えば、「現金」と「負債」のように意味が異なる2つの科目があった場合、それぞれをベクトル化することで数値的に区別され、空間上では離れた位置にプロットされる。これにより、2つの異なる単語の関係性が数値的に表現され、名称が異なっても意味がどの程度類似しているかを把握できるということだ。

「現金」と「負債」の関係性を数値化、視覚化できる
「現金」と「負債」の関係性を数値化、視覚化できる

次のページ
Embeddings APIによるベクトル化のメリットとは

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この記事の著者

水無瀬 あずさ(ミナセ アズサ)

 現役エンジニア兼フリーランスライター。PHPで社内開発を行う傍ら、オウンドメディアコンテンツを執筆しています。得意ジャンルはIT・転職・教育。個人ゲーム開発に興味があり、最近になってUnity(C#)の勉強を始めました。おでんのコンニャクが主役のゲームを作るのが目標です。

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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