みずほ銀行が開発組織の技術標準を作るまで──メンバー3人・適用先ゼロから始めた挑戦
【16-A-5】ゴールデンパスは敷いただけでは道にならない ─ 企画部門のエンジニアが技術標準を事業価値に変えるまで
技術標準は、作れば自然と使われるわけではない。みずほ銀行のセキュアな開発基盤として「ゴールデンパス」の整備を任された松尾優成氏は、当初、適用先ゼロという壁に直面した。技術選定では現場のTerraform経験とのギャップに向き合い、組織改編では施策そのものが立ち消える危機も経験している。技術企画部門のエンジニアが、技術標準を「使われ続けるプロダクト」に変えるまでの試行錯誤を追う。
「ゴールデンパス」を整備することで何が解決できるか
みずほ銀行では現在、全社的にAI活用が加速しており、業務効率化や情報収集・分析、ビジネス支援など幅広い領域でAI案件が急激に増加している。その結果、セキュアで統一された開発環境が求められるようになった。同社の情報数理工学研究所デジタル技術開発部で上席主任研究員を務める松尾優成氏は、この「安全に、速く」開発を進める仕組みとして、標準化されたインフラ構成一式「ゴールデンパス」の整備を担当している。
みずほ銀行では閉域ネットワーク環境が前提となっており、ゴールデンパスはそうした複雑な基盤要件や社内統制を吸収しつつ、開発者が迷わず安全なルートでアプリ開発に集中できる構成を目指すものだ。松尾氏はゴールデンパスの立ち位置を、強制力の高いプラットフォームチームと、自由度の高い案件側との「間」にあるものと説明する。統制と自由度の中間でどう安全な道を提供するかに加え、プラットフォームチームと案件チームという部門をまたいで現場に届けなければならない点が、技術企画部門に所属する松尾氏にとって難しさの核心だった。
松尾氏が技術標準化のミッションを担当してほしいとアサインされた当時、チームメンバーはわずか3名。実案件は目の前の期限に追われて従来技術ばかりが選ばれがちな状況だったため、腰を据えて現場で使われるベストプラクティスを先行投資として用意する、プロダクトアウト型のミッションだった。ただし、届ける先はあえて決めずにスタートしている。
最初に着手したのは、プラットフォーム側だけでなくユーザー側を知りにいくことだった。プラットフォームにプロダクトマネジメントの手法を適用する「Platform as a Product」を長く実践してきた松尾氏は、案件側が真に解決したい課題は何かを強く意識するようになった。キャリア面談で「アプリやビジネスに近い領域をやりたい」と発信したことをきっかけに、技術企画部門から内製開発案件へ兼務で参加できるようになり、ユーザー側の景色やアプリ目線が見えてきた。
プラットフォーム側から越境したことで、標準化すべき課題は明確になった。兼務メンバーで案件特有の課題を収集したところ30件を超える件数が集まったが、目立っていたのは案件固有の課題よりも、案件をまたいで横断的に繰り返される課題だった。すべてが技術で解決できるわけではなく、組織論的な課題も混じっていたため、「案件ごとに技術スタックがバラバラ」「スピード優先でセキュリティが後回し」「デプロイが手作業で時間がかかる」といった、技術で解決できそうな部分を仕分けて拾い上げていった。
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中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)
金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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丸毛 透(マルモ トオル)
インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。
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