AIの正確な理解に必要なのは「同じことを繰り返す」考え方
GitOpsエンジンを選び、実際のIDPを構築できるようになった今、新たな変数として加わったのがAIだ。
開発者からは「自分のAIエージェントをどこに接続すればいいのか」という質問が増え、KubernetesでAIを動かすこと自体は容易でも、GPUの共有はCPUの共有よりずっと難しく、マルチテナンシーを考慮したプラットフォームへの統合は簡単ではない。
さらに、HolmesGPTのようなAI SREエージェントは、もはや人間のようにプラットフォームを「使う」存在ではなく、アラートを受け取りログ・メトリクス・トレースという豊富なコンテキストをもとに根本原因を調べ、GitHubへのプルリクエストという形で是正までこなす、プラットフォームを「操作する」存在になりつつある。
ここでLajko氏が強調するのが、AIには「プレーンなデータ」が必要だという点だ。Don't Repeat Yourself(DRY)を志向するConfiguration as Codeに対し、AIが確実に理解し生成するために必要なのはむしろ冗長な「Configuration as Data(CaD)」であり、Write Everything Twice、つまり「同じことを繰り返す」考え方だという逆説を指摘する。加えて、EUのCyber Resilience Actのような規制が、ソフトウェアやプラットフォームを提供する事業者にサプライチェーン全体の把握を求めるようになっており、これもGitOpsが扱うべき領域になってきている。
最後にLajko氏は、業界がまだ解決していない課題も率直に共有した。IntuitのシニアスタッフエンジニアであるMichael Crenshaw氏のLinkedIn投稿を引用し、Git自体がIDPにとって最大の課題であり続けているとし、抽象化(DRY・開発者体験の両面)、実際のスケールでの性能問題、OCIによる不変アーティファクト、ハイドレーション、可視性という6つの領域が未解決のまま残っていると述べた。Helmの構文には十分なスキーマ管理やAPIバージョニングがなく、Kustomize-over-Helmもほとんどサポートされていない、という具体的な指摘も紹介している。
GitOpsは9年かけてローカルの手作業からエージェントベースの自動化へ、Gitのみの運用からOCIとの併用へ、そして人間中心の運用からAIエージェントとの協働へと形を変えてきたが、まだ旅の途中にあるというメッセージで、Lajko氏はセッションを締めくくった。
