エンタープライズ向けプロダクトならではの悩みとは
システム構築と自社プロダクト開発の2つを事業の柱とするドリーム・アーツ。自社プロダクトとしては、大企業向けEIP型グループウェア「INSUITE」、BPM型Webデータベース「ひびきSm@rtDB(スマートDB)」、多店舗運営支援用コミュニケーションツール「Shopらん」などがよく知られ、国内有数の大企業・団体等への豊富な導入実績を持つ。
「自社プロダクトと言っても、事業領域はエンタープライズIT。一つひとつシステムを作り上げていくSIerの皆様もいろいろと苦労されていると思うが、プロダクトメーカーとしての我々も悩みは尽きない」と石田氏は語り、「エンタープライズプロダクトの悩み」として次の3点を挙げた(※順位は石田氏個人の感覚による)。
- 第1位:保守が困難
- 第2位:UIを変えにくい
- 第3位:ブラウザが古い
まず、「ブラウザが古い」という悩みについて、石田氏はある製品のサーバのログ(2016年2月時点)からユーザーエージェントの集計結果を紹介。それによると、ブラウザはIE(Internet Explorer)8が最も多く、29%を占めていた。IE8はWindows XPが最後にサポートしていたバージョンであり、IE6も5%含まれていたことから、石田氏は「Windows XPを使われているお客様もまだまだ多い。これがエンタープライズの現実」と指摘。
「UIを変えにくい」悩みについては、ある製品のバージョンアップ時にボタンの位置が「1ピクセルずれていた」という事例を紹介。見た目にはわからないレベルの違いだが、実際に「社内用のマニュアルでキャプチャをすべて撮り直さなければならない」というクレームにつながってしまったという。
「市場やお客様のニーズに応えていくためにも機能強化・追加などのバージョンアップは必須だが、なるべく旧バージョンと見た目が変わらないようにしなければならない。この事例のように“なるべく”というのが場合によっては“1ピクセルもずれないこと”を意味することもあり、慎重な対応が必要」(石田氏)
第1位の「保守が困難」という悩みについては、石田氏はいくつかの理由を提示した。1つは、オンプレミス環境が多いこと。最近ではエンタープライズシステムでもクラウドが増えてきたとはいえ、大多数は旧来のオンプレミス。顧客のサーバに自社製品をインストールすることになるが、“ファイアウォールの向こう側”で動いているため、ログ一つ取得するのにもかなりの手間がかかってしまう。
カスタマイズが多いことも理由の一つ。パッケージソフトを“素のまま”入れて使うことは稀で、顧客の業務に合わせたきめ細かなカスタマイズやアドオンによる機能追加を実施する場合が多い。当然そこまでは想定内なのだが、顧客側での「野良カスタマイズ」や「魔改造」のような想定外のことも多々起きているという。
そして、もう一つ大きな理由として挙げられるのが、多数のバージョンが存在すること。ドリーム・アーツでは、製品のリリースから6年間をサポート対象期間としている(この間に何か不具合等があれば、パッチリリースやアップデートリリースに対応)。そのため、同じ製品でもさまざまなバージョンが実際に使われている。
「『INSUITE』と『ひびきSm@rtDB』について、細かいマイナーバージョンアップも含めて6年間でどれくらいあるのか数えてみたところ、およそ100バージョン(!)あった。これだけのバージョンを保守していくのは、やはり大変な負荷がかかる」(石田氏)