最適なゲームインフラのためには密な連携が重要
2010年1月から提供されている富士通のパブリッククラウドサービス「ニフティクラウド」は、短時間で利用/停止できるオンデマンド性や、時間単位の従量課金、国内データセンターによる高いパフォーマンスなどを特長としている。現在の利用数は、4,000案件を越えており、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」など数多くのヒットゲームシリーズを開発・提供してきたスクウェア・エニックスも、ニフティクラウドの有用性に着目し、活用している会社の一つだ。
コンシューマゲームのイメージが強い同社だが、現在の主力コンテンツの一つとして、いわゆる「基本プレイ無料」モデルのソーシャルゲームも挙げられる。
現在、ゲームのインフラ部分を担当している船寄氏であるが、ソーシャルゲーム開発の悩みとして、スピーディーな開発を求められるにも関わらず、多くの案件が同時進行していること、インフラ規模が大きいことを挙げる。船寄氏は「開発を外部の複数の会社に依頼していることもあり、使う言語やOS、ミドルウェアも様々。それぞれの風土に合わせるのが大変」と語る。
ゲームのリリース後の運用フェーズでは、負荷は常に注視しなくてはならない。負荷テストはしているものの、予測以上のユーザーが集まった場合の対策も必要だ。
こうした高いアクセスに耐えられるインフラとして同社が考えるのは、ネットワーク帯域では10Gbps、ユーザーとサーバ間のレイテンシは数十ミリ秒、ディスク性能は少なくとも数千、できれば数万IOPS(1秒あたりに処理できるI/O数)は必要、インスタンスタイプも柔軟に選べるというもの。
インフラのみ優れていればよいかといえばそうでもなく、スピーディーなゲーム開発のための取り組みも必要だ。インフラ構築スピードを劇的に上げて機会損失を防ぐことと、新技術も含め多種多様な環境を扱うため、それらを扱うノウハウの取得が重要になる。
そんな課題を持つ同社がニフティクラウドを採用した理由として、多種多様な技術要素によるプロジェクトへの対応が可能なラインナップの豊富さがあった。インスタンスをいつ立ち上げても品質が一定であり、耐障害性が高いのも評価できるポイントだという。
また、サポート体制も手厚く、同社とニフティとで定例会を設け、課題や要望の共有など、問題解決へ向けて共同で取り組む姿勢が築けているという。「ここが一番大事なポイント。対面で話し、方向性を明確にしていかないと、フラストレーションが溜まってしまう」と船寄氏。もちろん、障害に対して即時対応できる体制が整っている。また経営層へ訴求できる点として、品質保証(SLA)の数値も基準を満たしていた。
「ニフティクラウドとは、定期的なやりとりを通じ、課題の解決・提案を両者で探っていけた。こうした姿勢で長いおつきあいができたことが、一定の成果につながった」と船寄氏は振り返る。