書籍『プロダクトマネージャーになりたい人のための本』という書籍が、『プロダクトマネジメントのすべて』と同じく翔泳社から2023年6月に発売された。執筆したのは、これまで1200名以上のプロダクトマネージャー職の転職を支援してきたというクライス&カンパニーのキャリアアドバイザーの3名だ。この書籍は日本のプロダクトマネージャー業界に対し、どのようなインパクトを与えうるのか。同書の出版記念パーティに参加したVPoPの面々による率直な声をもとに、その注目ポイントを紹介する。
より多くの人がプロダクトマネージャーを目指すきっかけとして
『プロダクトマネージャーになりたい人のための本』の執筆のきっかけとなったのは、『プロダクトマネジメントのすべて』の共著者の一人であり、クライス&カンパニーの顧問も務めているTably(テーブリー)の及川卓也氏だ。
及川氏は、プロダクトマネージャーカンファレンスを有志とともに2016年に立ち上げ、プロダクトマネージャーの知名度が低かった日本の黎明期から「プロダクトマネージャーが日本を救う」というビジョンを掲げ、プロダクトマネジメントの重要性や、そのノウハウの認知啓蒙活動を行ってきた。
近年は、プロダクトマネージャーカンファレンスが4000名規模の集客を記録するなど、プロダクトマネージャーへの関心が高まるようになった一方で、プロダクトマネージャー関連の検索トラフィックは、「プロダクトマネージャー/プロダクトマネジメントとは」といったものがいまだに多く、他業種に比べて、その先の実践とをつなぐ情報に乏しいと及川氏は考えていた。そこでプロダクトマネージャーの転職・キャリア支援に対し、国内でも有数の経験を経て知見も有するクライス&カンパニーから書籍を出さないかと企画を持ち掛け、本書の実現に至ったという。
及川氏は、出版記念パーティ冒頭の挨拶で「本書が、多くの人がプロダクトマネージャーを目指すきっかけになり、プロダクトマネージャーがまさに日本社会をさらによりよい形にするきっかけになれば」と、本書に対する期待を寄せた。
プロダクトマネージャーの一生に寄り添う一冊。未経験者にも広がるチャンス
では、プロダクトマネージャーとして人を受け入れる企業側の反応はどうなのだろうか。
同パーティでは、ゲストとして参加していた、エムスリー株式会社 取締役CTO兼VPoPの山崎聡氏、株式会社SmartHR 執行役員・VP of Product Managementの安達隆氏、株式会社UPSIDER VPoPの森大祐氏のベテラン3名に、コメントをもらう機会を得た。ここでは、彼らが考える「この本が業界に与えるインパクト」や「プロダクトマネージャーというキャリアのやりがい」などについてお伝えする。
エムスリーの山崎氏は、及川氏同様、日本のプロダクトマネージャーはまだ絶対数が圧倒的に足りていないと言う。先述のようにプロダクトマネージャーの知名度は上がりつつある一方で、もっと人材のすそ野を広げる取り組みが必要であり、本書がすばらしい役割を果たすのではと期待を述べている。
『プロダクトマネージャーになりたい人のための本』では、プロダクトマネージャーが担う仕事の説明に加え、多様なバックグラウンドからプロダクトマネージャーへ転職する際のガイドなどが細かく記されている。職務経歴書の書き方がテンプレートとして用意されている実用性の高さも山崎氏は評価した。
また、入社後の取り組みとして、一人のプロダクトマネージャーとして自立するところから、最終章ではプロダクトマネージャーとしての高みを目指すところまでを書ききっており、「プロダクトマネージャーの一生」ともいえる構成が特に関心を誘ったという(詳しくは、書籍の目次を参照)。
SmartHRの安達氏は、面接対策の解像度の高さが特に目を引いたようだ。「社内に面接時にチェックすべき点をまとめたドキュメントがあるが、それを参考にしたのかと思うほどよく研究されている」という。書籍での解説が現場判断に近く、実用的な書籍だと評した。
一方で、応募者全員がこの本を読んできたとすると、企業側としては底上げされた平均点に対し、「より自社にフィットする人を見極めるスキルや仕組みを工夫していく必要がありそうだ」とも言う。
職務経歴書のテンプレートも、しっかりしていて採用側の書類選考の負担が軽減されそうなほか、最近力を入れているポテンシャル採用に対しても、より応募者のポテンシャルを見極めやすくなり、日本のプロダクトマネージャー業界に素晴らしい影響があるのでは、とした。
なお、クライス&カンパニーによるプロダクトマネージャーの面接における知見(求職者および採用側)は、過去のインタビュー記事でも紹介しているので、併せて参考にしてほしい。
UPSIDERの森氏は、本書の感想について次のように述べた。
「プロダクトマネジメントという文化が根付いていない企業が多い中で、プロダクトマネージャー職が日本に浸透し、採用したいという企業が増えてきた実感はある。また、プロダクトマネージャーを目指したい人も増えてきた一方で、『何をすればよいのかわからない』という課題感があった。本書は、そのような課題を解決する入門書や参考書として価値があると思うし、プロダクトマネージャーのすそ野が広がる一因にもなれるので喜ばしい」(森氏)
この本をきっかけにプロダクトマネージャーを目指し、プロダクトマネージャーとなって一人前になり、実績を出して『もうこの本は必要ない』と言えるような状態に行きつく人が増えてほしいとも述べた。
なお、プロダクトマネージャーの仕事については、「プロダクト価値の創出や最大化と事業成果の両方を常に求められるため、よりシビアなビジネス判断や、さまざまな壁にぶつかることが多いと思う。プロダクトマネージャーはやり抜く力(GRIT)が一番重要となるので、困難に直面した人が書籍を読んだり、プロダクトマネージャーのコミュニティに頼ったりすることで、鼓舞されるような環境が広がっていくとよいと思う」とアドバイスした。
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斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)
株式会社翔泳社 ProductZine編集長。1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以来担当し、2011年4月から2020年5月までCodeZine編集長を務めた。教育関係メディアの「EdTechZine(エドテックジン)」...
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