「言葉にしてから作る」という越境
同じ「越境」を、PMMの側から実践する事例も紹介された。ログラスで事業執行役員としてPMMとBizDevを兼務する浅見祐樹氏は、PMMの関与フェーズが開発工程の「かなり後ろ」に寄りがちだという課題から出発した。関与が遅いと価値が後付けになり、発信がばらけ、「何が価値だったんだっけ」とぼやけ、初速も落ちる。
そこで同社が取り組むのが「プレスリリース駆動開発」だ。「想定するプレスリリースを、開発を始める段階で先にドラフトする」。社内で「妄想プレスリリース」とも呼ぶこの手法では、どう世に届けたいかを設計段階からプロダクトマネージャーやデザイナーと議論し、想定プレスリリースに顧客の声まで先に入れて、そこからUIを逆算する。ログラスがこの実践に掲げた言葉が、「価値は、言葉にしてから作る」である。作ってから届け方を考えるのではなく、届け方であるGTMを前倒しで設計してから作る。これもまた、職種の境界を越える1つの形だ。
職種化は、もう始まっている
会場では9割が「初めて聞く」と答えた職種だが、その制度化はすでに動いている。パネルの最後、道家氏はこの領域の課題を解決する「協議会」と、事例や考え方のフレームをまとめた「書籍」の準備を予告した。スライドの告知によれば、書籍『GTMエンジニアリングの教科書』は2026年9月、「グロースエンジニアリング協議会(GROWTH ENGINEERING COUNCIL)」は2026年10月の始動が予定されている。
名前がつけば、育成もキャリアパスも体系化が始まる。道家氏が予告した協議会と書籍は、その最初の一歩だ。「作る」の外側に立ち上がりつつある新しい職業の輪郭は、来場者の9割がまだ名前を知らないうちに、もう現場で数字を動かし始めている。
