VC開発の難所は「組み合わせ設計」にある
事例の増加に伴い、「身分証明をデジタル化したい」「本人確認を数秒で完結させたい」「自社が発行元となる証明サービスを提供したい」といった要望が高まっている。しかし、実際の実装には高いハードルが存在する。藤田和成氏は、競合する仕様が乱立する現在の状況を「標準仕様のジャングル」と表現する。
データモデルだけでもW3C VCDM、SD-JWT VC、ISO mdocと複数存在し、プロトコルもOID4VCIとOID4VPに分かれる。提示要求のクエリ言語にはPresentation ExchangeとDCQLがあり、データの表現形式にもJWTやCWTが存在する。さらに識別子や鍵の管理まで含めると選択肢は膨大であり、ユースケースごとに最適な組み合わせを検討しなければならない。また、仕様の多くは現在もドラフト段階で更新が続いており、一度読めば完了するものではない。結果として開発者は、仕様書の確認だけで1日を費やす状況に疲弊してしまう。
さらに深刻なのは、複数の仕様を組み合わせる段階である。実際のシステムでは、データ形式、発行・提示プロトコル、署名や鍵、DIDやメタデータ、検証条件を同時に整合させる必要がある。その結果、仕様選定、検証負荷、差分吸収、仕様更新への追従という4つの負荷が発生する。藤田氏は、実装の難所は仕様の個別要素ではなく、複数レイヤーが複雑に絡み合う「組み合わせ設計」にあると説明する。早期に顧客へ価値を提供しつつ標準規格にも準拠したいが、特定の仕様への依存や、仕様変更に伴う手戻りは避けたいのが開発現場の本音である。現在求められているのは、仕様の違いや変更に耐えうる「実装の土台」である。

