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0と1のインターネットに「信頼」を組み込む ──慶應大×CTCが挑むOSS「VC Knots」とは?

【17-A-6】インターネットへの「信頼」の実装 ―Verifiable Credentials に産学連携で挑む話 #openid4vc #vcknots

産学連携で育てるVCエコシステムの未来とOSS 「VC Knots」

 実装の土台としてCTCと慶應義塾大学が共同開発しているオープンソースソフトウェアが「VC Knots」である。データ流通の信頼性向上に取り組む慶應義塾大学SFC研究所とCTCの共同研究プロジェクト「Trust Knots」から誕生したOSSのSDKであり、VC実装を通じて得られた知見を開発者が活用できる形へと落とし込んでいる。PoCや技術学習、導入検討の起点としての活用を想定している。

 特徴は大きく3つある。1点目は、発行モジュール・Walletモジュール・検証モジュールの3要素でIssuer・Holder・Verifierを網羅している点である。IssuerやVerifierのみを構築してもPoCの全容は把握できず、Walletを含む「発行・保管・提示・検証」の一連のフローを稼働させる必要があるためである。2点目は、仕様の差分をプラグインで吸収できる点である。IssuerとVerifierにはProvider、WalletにはDispatcherというプラグイン登録機構を備え、データ形式、プロトコル、ストレージ、識別子や鍵などの領域を柔軟に差し替えられる。3点目は、稼働するサンプルコードから着手し、要件に応じて拡張できる点である。

VC Knotsが提供するもの
VC Knotsが提供するもの

 プラガブルな設計を重視する理由は、VCを運用するシステムの前提条件が単一に定まらないためである。業界やユースケースに応じてmdocが適する場合もあれば、SD-JWT VCが適する場合もあり、暗号方式や鍵管理技術も進化を続ける。藤田氏は、選択権は利用者に委ねるため、SDK側で特定仕様に固定せずプラグインで差し替えられる設計を採用したと説明する。

 また、OSSとして公開する理由について藤田氏は、VCにおける信頼は単一企業のみでは構築できないためだと語る。VCはIssuer、Wallet、Verifierが連携して初めて価値を発揮する。特定企業の実装に閉じ閉鎖的になるのを防ぎ、誰でも検証・学習できる環境を提供するとともに、他社製ウォレットとの相互運用性を実装レベルで示していく方針である。

 標準準拠の検証には、OpenID Foundationが提供するConformance Testを活用し、第三者基準での仕様準拠を実証している。現在、OID4VCI 1.0のIssuer機能はテストを通過済みであり、Wallet機能およびOID4VP 1.0への対応を進めている。今後は標準対応と並行し、AWS環境への対応、ドキュメントの拡充、サンプルアプリの整備など、利用環境の改善にも取り組む予定である。

 本プロジェクトでは産学連携ならではの知見も得られた。企業(CTC)側は実務要件やPoCの視点を持ち込んで課題を抽出し、研究テーマとしてアカデミアへフィードバックする。学生はそのテーマを検証する土台としてVC Knotsを活用する。この改善と学習の循環が産学連携の価値を生み出している。

 学生側の視点について、慶應義塾大学の橋本晃太朗氏は、デジタルアイデンティティウォレット(DIW)の研究においてエコシステム全体の課題発見や設計が求められる一方、初学者がゼロからウォレットを実装するのはハードルが高いと指摘する。VC Knotsを活用すれば手元で容易に検証環境を構築でき、卒業研究や実証実験にも展開できる。国際ワークショップ「IIW(Internet Identity Workshop)」への参加やアイデアソンの開催など、研究の視野を広げる契機にもなっている。

慶應義塾大学 環境情報学部 4年 橋本 晃太朗氏
慶應義塾大学 環境情報学部 4年 橋本 晃太朗氏

 また開発面について伊藤有汰氏は、想像以上に仕様の広がりが大きいプロジェクトであったと振り返る。credential_issuerというパラメータを1つ検証するだけでも、仕様書のCredential Offerの項目からIssuerメタデータの取得手順、Security Considerationsへと複数のドキュメントを参照する必要があり、Nonce Responseを読み解くにはDPoPを定義した別仕様のRFC 9449まで辿る必要があった。

 伊藤氏は、1つの調べ物が次の調査へと連鎖する状況であったが、複雑な仕様対応をライブラリ側でカプセル化してくれるVC Knotsの価値を開発の現場で実感できたと語る。CTCメンバーとのスクラム開発を通じて、タスクの優先順位付けやコードレビューを実践的に学べた点も大きな収穫であったという。

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士1年 伊藤 有汰氏
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士1年 伊藤 有汰氏

 最後に貞弘氏は、社員証や会員証、学修歴・資格証明、サプライチェーン、医療、行政、契約・KYCなど、「資格」や「属性」の証明が求められるあらゆる場面でVCが活用できると示した。信頼は技術によって実装可能である。標準仕様の差分は避けられないものの、VC Knotsを活用すればその障壁を克服できる。貞弘氏は、VC Knotsの利用やGitHubでのスター送付、コミュニティへの参加を呼びかけ、Issue・PR作成や実証実験を通じたエコシステムの共同推進を訴えて締めくくった。

伊藤忠テクノソリューションズからのお知らせ

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレーターも担当しています。Webサイト:http://emiekayama.net

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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DeveloperZine編集部(デベロッパージン編集部)

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