「Unity」のスキルを武器に、自動車業界へ
──自動車産業はSDVの潮流により、ソフトウェア中心の開発へとシフトしています。お二人はもともと自動車業界ではなく、ゲームやXR業界で培った「Unity」のスキルを武器にマツダへ飛び込まれました。まずはマツダへ参画した経緯や、現在の役割について教えてください。
君嶋 良太(以下、君嶋):私は10年以上にわたり、ゲーム業界をはじめVRやメタバースの分野でUnityエンジニアとしてキャリアを積んできました。現在はマツダの東京拠点に1人目のUnityエンジニアとして入社し、エンジニアリング組織の立ち上げやマネジメント、車載ソフトウェアにおける3Dグラフィックス・UI領域の技術監修を担っています。
自動車業界へ転身した理由は、ゲーム開発からメタバースへと領域を広げる中で、自身の興味が徐々に「リアルに近いプロダクト」へと向かっていったためです。当時、マツダが車載領域でUnity社とパートナーシップ契約を締結したリリース(2024年4月発表)を目にしました。これまでゲーム開発で培ってきた技術スタックをリアルの領域で活かせるのではないかと考え、思い切って飛び込みました。
長谷部 直起(以下、長谷部):私は現在、CX-5のCID(センター・インフォメーション・ディスプレイ)における描画関連の開発をメインで担当しています。前職では、VRやARを用いた産業向けアプリケーションの開発を手がけていました。
最初から自動車業界を目指していたわけではなく、自身の強みであるUnityを軸に次のフィールドを探していた際、マツダの動きを知り惹かれました。Unityが活きるジャンルはゲームや昨今のXR領域が中心で、どうしても限定的なコミュニティになりがちです。そこに「自動車」という巨大な新天地が現れ、これから技術がどう活用されていくのか純粋に興味が湧きました。
君嶋:私が1人目だったUnityチームは、現在11名ほどの体制に拡大しています。メンバーのほとんどが、ゲームやメタバースなどのエンタメ業界でUnityを扱ってきた出身者です。Unityという共通の技術言語を持つコミュニティからのリファラル採用も進んでおり、従来の製造業のイメージとは異なる、ゲーム業界さながらの賑やかで活気あふれる開発環境になっています。
──Unityを用いたデジタルコンテンツ開発を経験してきたお二人ですが、「自動車」という巨大な物理プロダクトを作る面白さはどこにあるのでしょうか。
長谷部:これまで私が作ってきたのは、産業向けに「こんなことができますよ」と示すPoC(概念実証)向けのテストアプリがメインでした。しかし今回は、自分たちが書いたコードが実際のクルマに組み込まれ、これから何十年も世の中に残り続ける製品になります。街を走るCX-5を見かけた際、「自分たちの作ったプログラムも一緒に走っているんだな」と実感し、プロダクトに対して強い愛着を感じています。
君嶋:サーバーと対になって動作するコンテンツの場合、後からリメイクされることはあっても、当時のソースコードそのものが動き続けるケースは多くありません。一方で自動車は、物理的なプロダクトとして存在し続けます。もしかすると100年後や200年後、どこかの博物館に私たちのソフトウェアを搭載したクルマが保管され、修復して通電した際に当時のまま動いてくれるかもしれません。そうした期待を持てる点は、リアルなハードウェア開発ならではの魅力です。
