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【製造業IT最前線】ハード×ソフトでリアルを動かす!

なぜ村田製作所は社内で「FDE的な活動」を進めるのか──異業種出身のエンジニアが伴走する価値

 情報システム部門に籍を置きながら、事業部の執務スペースに席を借りて、週に何日かはそこで働く。村田製作所で製品の設計情報を管理するシステムを内製する栃川晃佑氏と林恵史郎氏は、自分たちの働き方をFDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)的でありながら、「FDEという役割からはみ出ることもある」と話す。大企業のDX推進現場ではいま何が起きているのだろうか。

設計から量産に至るまで、製造業の「縦の流れ」をシステムで作る

 林氏は冒頭、ECM(Engineering Chain Management)とSCM(Supply Chain Management)の違いを、「サプライチェーンがいわゆるものを調達して作って売るまでの横の流れだとしたときに、ECMはその製品を作るまでの『縦の流れ』のイメージになります」と説明した。

村田製作所 経営DX本部 ITビジネスエンジニアリング統括部 ECM・DCMバリューチェーンDX推進部 ECM基盤構築推進課 林恵史郎氏

村田製作所 経営DX本部 ITビジネスエンジニアリング統括部

ECM・DCMバリューチェーンDX推進部 林恵史郎氏

 つまり、ECMは、ものづくりで量産に至る手前、設計から開発、試作、量産までの一連のフェーズを指す。ここでいう「エンジニア」はソフトウェアエンジニアではなく、製品の設計、開発の文脈でのエンジニア、つまりハードウェア寄りの職種だ。

 では、栃川氏、林氏が担う役割はどこにあるのか。それは、商品企画から設計、試作、評価、量産移行までの情報と業務をつなぐプラットフォームを整備し、開発の手戻りとリードタイムの短縮を実現することにある。そのうえでミッションは、そのプラットフォームを使ってもらって得た知見を反映し、他の部門にも展開できるようプロダクトを作り込むことだと話す。現場の要望をそのままシステム化するのではなく、その本質的な課題を捉えて、さらにそこで得られた知見を全社に通用する共通機能としてカタログ化することがゴールだ。

村田製作所が進めるバリューチェーンDXの全体像

村田製作所が進めるバリューチェーンDXの全体像

 2人の経歴は対照的だ。栃川氏は2026年2月の中途入社。2021年にエンジニアとしてのキャリアを始め、前職ではSaaSを開発するWebエンジニアとして、バックエンド、フロントエンド、インフラと幅広く開発に携わってきた。林氏は2024年2月の中途入社で、前職は鉄道業界。ITやデジタル寄りの業務ではなかったが、キャリアの終盤に訪れた駅業務のデジタル化の動きで、ローコードプラットフォームを使った業務改革に関わった経験が、現在担う役割につながった。

 現場に入り込んで課題を形成し、打ち手を作る動き自体は当初からあった。今年に入って変わったのは、その手段であるシステムの構築も内製で回すようになったことだ。

村田製作所はなぜ「FDE的なやり方」で課題を発見するのか

 2人は自分たちの働き方をFDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)的であると話す。ただし、厳密な定義を置いているわけではない。

 「既知の課題に対して現場に入って、課題の整理とそれをどのように解決していくかというのを、伴走支援という形で一緒に活動しています。いわゆる『FDE的な活動』が、我々がいまFDEと呼んでいるものです」(栃川氏)

村田製作所 経営DX本部 ITビジネスエンジニアリング統括部 ECM・DCMバリューチェーンDX推進部 ECM基盤構築推進課 栃川晃佑氏

村田製作所 経営DX本部 ITビジネスエンジニアリング統括部

ECM・DCMバリューチェーンDX推進部 栃川晃佑氏

 FDEと一口にいってもその役割はさまざまだが、村田製作所で二人が担う役割は「顧客伴走しながら既知課題を解決し、自部門プロダクトへ還元をする形のFDE」と整理され、Palantirなどで採用されている形に近い。課題を見つけるところから入るのではなく、すでに顕在化している課題に並走する。そして現場で得たものを自分たちのプロダクトに戻す。

 だから、エンジニアを派遣して人材リソースを補充するという意味合いはほとんどない。「どちらかというとしっかりと入り込んだ上でこの知見を持ち帰って自分たちのプロダクトを磨き込んでいく」と栃川氏は言う。

 もう1つ、従来のFDE像と違う点がある。「世間でいくと結構個別解決型が多いのかなと思うのですが、我々はあくまで全社としての視点を持ちながらも、各事業部に入り込んでいって知見を集約していくという形を取っています」。FDE的な活動を通して全社展開を目指すという構えのため、やっていること自体はFDEとは少し異なる。

 現場への入り方も決まっている。ECMの取り組みそのものが、事業部門とCFT(クロスファンクショナルチーム)を組む形で進み、事業部が自分たちで定めたKPIとKGIを達成するために情報システム部門として何ができるのかを、課題を作るところから一緒にやる。

 社内横断の組織といえば、FDEが広まる前からCoE(センター・オブ・エクセレンス)があった。栃川氏のこれらの組織との違いを改めて、以下の通り整理した。「我々の場合だと、まず最初主体としては我々が入り込み、徐々に事業部側にプロダクトを渡していきます。時間軸で見た時の主体の移り変わりはCoEの活動とは異なる印象です。」

仮説提案型で案件を進める4ステップと、主導権の移り変わり。現場理解からPoC、共同での開発・運営、段階的な移管・定着まで
栃川氏、林氏が仮説提案型で案件を進める4ステップ

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この記事の著者

中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)

 金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

関口 達朗(セキグチ タツロウ)

フリーカメラマン 1985年生まれ。東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。2児の父。旧姓結束。趣味アウトドア。

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