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「こんなこともできるのか」と思える瞬間があるから前に進める──JTBグループが進めた財務基盤刷新

【D-2】JTBグループの挑戦。AIで「過去を報告」から「未来を動かす」財務へ

中野 佑輔(編集部)[著]

 JTBグループは約3年半をかけて、国内外54社の財務会計システムをOracle Fusion Cloudへ統合した。Fit to Standardを貫き、標準機能を95%活用したこの刷新は、AIエージェントを受け入れられる「AI-Ready」な基盤をもたらした。2026年10月6日に開催された「Oracle AI Forum」で、同プロジェクトで全体統括を務めたI&Jデジタルイノベーションの小川一氏と日本アイ・ビー・エムの佐藤洋氏が、稼働直後の実情とAI活用の現在地を語った。

目指すは老朽化対応ではなく、事業の舵取りに使える基盤の構築

 このプロジェクトは、会計システムの老朽化対応として始まったものではない。背景にあるのは、JTBグループが掲げる長期ビジョン『OPEN FRONTIER 2035』だ。

I&Jデジタルイノベーション株式会社 取締役 第三ビジネスソリューション本部 本部長 小川一氏
I&Jデジタルイノベーション株式会社 取締役 第三ビジネスソリューション本部 本部長 小川一氏

 旅行需要に依存した事業構造から脱却し、インバウンド、地域創生、法人ソリューションなどを含めて事業ポートフォリオを多角化する。「旅行会社」から「交流価値創造企業」への転換を掲げたビジョンだ。I&Jデジタルイノベーションの小川一氏は、コロナ禍を経てこの方向性が切実なものになったと説明する。

目指した経営基盤。長期ビジョン『OPEN FRONTIER 2035』と、目指す経営基盤の姿
目指した経営基盤。長期ビジョン『OPEN FRONTIER 2035』と、目指す経営基盤の姿

 実際、グループの事業はすでに旅行の枠を超えている。コロナ禍に広がったBPO事業や、コンサルティングやイベント運営を担う会社があり、ものづくりをする会社もある。近年は各地域のコンテンツの買収にも広がった。

 「単純に会計システムをリプレイスするということではなく、多角化していく、あるいは成長に向かっていくための企業基盤を作るというコンセプトで、約3年半ぐらい前にこのプロジェクトが始動しました」

 求められたのは、単に旅行事業の集計ができるシステムではない。事業構造の変化に柔軟に対応し、サブセグメント別の収益状況を可視化して事業の舵取りに使える基盤だ。小川氏はこれを「大きなチャレンジ」と表現する。

 会計領域のプロジェクトオーナーを務めた日本アイ・ビー・エムのほか、日本オラクルなどの協力を得て、約300名に及ぶ大規模なプロジェクトが始まった。

国内外グループ54社を統合しながら、既存機能を95%残す

 結果として構築されたのは、国内外グループ54社を統合する財務会計基盤だ。内訳は日本22社、米州14社、アジア太平洋16社、MIC 2社。欧州はグループ連結・管理会計を統合するシステムのみを利用する形を取っている。

刷新後の経営基盤。2026年1月以降の財務会計システムのグローバル概況と、54社・95%の数字
刷新後の経営基盤。2026年1月以降の財務会計システムのグローバル概況と、54社・95%の数字

 国内のグループ会社とJTB本体で先行して導入したのが2025年4月、海外拠点が2026年1月。それまで各拠点がそれぞれの会計システムを持ち、情報がサイロ化してタイムリーな把握ができず、集計する帳票にも統一性がないという課題があった。刷新では財務会計に加えて、管理会計と連結決算の領域までを統合している。

 特筆すべきは、Fit to Standardを貫いた点だ。ERPパッケージとEPMの領域で、Oracle Fusion Cloud Applicationsの標準機能を95%活用している。小川氏はこれを「なんとか生み出した成果の一つ」と位置づける。苦労がにじむその言葉の裏を、小川氏は率直に振り返る。

 「正直なところを言うと、ようやく財務会計上の数値がなんとか出来上がるという状態で、移行後の半年ぐらいは混乱がありました」

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3年半かけてできあがった「AI-Ready」の基盤

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この記事の著者

中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)

 金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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