作るものが変わっても、構造は変わらない──人とAIの共通言語としてのOOUX
プロダクトの地図の描き方──OOUXではじめる構造設計 第4回(最終回)
AIによって変わること、変わらないこと
OOUXの作業にも、AIを活用できる場面は増えています。
まず、オブジェクトの抽出です。RFPや業務資料、既存画面の項目一覧などをAIに読み込ませれば、そこに登場する名詞を抽出し、オブジェクトの候補を短時間で挙げてもらえます。ただし、それぞれの言葉がどのような文脈で使われているのかは、単純な抽出では見えにくく、オブジェクトへの理解も浅くなりがちです。そのため、特に重要な部分やあいまいな部分は、人が資料を読み込み、文脈を理解したうえでオブジェクトを抽出することを推奨します。
次にAIを活用できるのが、プロトタイプの作成です。整理したオブジェクトマップをAIに渡せば、見た目は完成形に近いプロトタイプを短時間で作ってもらえます。オブジェクトマップには、開発の都合で作られるER図とは違い、ユーザーがシステムをどう認識しているかが反映されているため、画面もユーザーの感覚に沿ったものになりやすくなります。構造を描いた段階で、すぐに触れる形で方向性を確かめられるので、ラウンド4(Representation)を大きく短縮できます。
AIによって変わるのは、作り方だけではありません。作るもの自体も変わりつつあります。すでに、成果物が画面ではなく、業務の一部を肩代わりする小さなツールや、AIを組み込んだワークフロー、問い合わせに答えるAIの仕組みであるケースも増えています。ただ、形は変わっても、言葉で何かを伝える限り、そこには必ず「何が」「何と関係し」「何ができ」「どんな性質を持つのか」、つまりORCAの4つの要素があります。人にとっては理解しやすく、AIにとっては解釈がぶれにくい情報とは、この4つがしっかり定義されている情報です。
AIが実行を担うようになるこれからは、何を実現したいのかというアイデアそのものが問われるようになるはずです。必要なのは新しいアプリではなく、AIへの指示を構造化したものだけ、ということもあるでしょう。そして、肝となるアイデアをAIに抜け漏れなく、明確に伝えるためにこそ、ORCAを定義しておく必要があるのです。
構造を、人とAIの共通言語にする
本連載では、画面や機能を考える前に構造を定義することの意味(第1回)、オブジェクトの見つけ方と呼び名の揃え方(第2回)、関係性・アクション・属性による構造の具体化(第3回)を紹介してきました。そして今回は、描いた構造をどう使うかを見てきました。
通して伝えたかったのは、画面や機能の議論に入る前に、プロダクトが何を扱い、それらがどうつながり、誰が何をできるのかをチームで揃えておくことの大切さです。
本連載は、「AIは、あなたのあいまいさも速くする」と題して始まりました。発見も整理も表現もAIで速くできるようになった今、その前提となる構造の重要性は、むしろ高まっています。構造は、人が議論でき、AIが解釈できる共通の言語だからです。
プロダクトの意思決定を担う人に、まず試してほしいことがあります。今関わっているプロダクトの中心となるオブジェクトを3つ書き出し、それらの関係をチームで確認してみてください。答えが揃わない問いが見つかれば、それが構造設計の第一歩です。
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- この記事の著者
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伊藤 環(株式会社PIVOT)(イトウ タマキ)
国内外の企業を経て株式会社PIVOTに参画。業務システムからコンシューマー向けアプリまで、幅広いプロダクトの情報設計・UXデザインに従事。複雑な業務要件を整理し、ユーザーとビジネスの双方にとって分かりやすい情報構造・体験設計を得意とする。2025年、Sophia V. Prater氏が提唱する「OO...
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