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生成AI活用により本番インシデントは242%増──ソニーグループが考えるAI時代の「統制と自由」

【GitLab Epic Tour 2026 Japan】統制と自由度の両立で加速するAI駆動開発

中野 佑輔(編集部)[著]

人がタスクを整理して分配し、しっかりとした意図をAIに渡す

 AI活用前は、企画メンバーが要求仕様定義までを行い、その後の開発行為はすべて開発リーダーやメンバーが個別に対応していた。静的・動的解析、OSSチェックリスト、脆弱性診断、SBOM生成といったスキャンも、QMS規定のチェックやAI倫理の確認も、すべて人の工数で回していた。

 AI駆動開発のサイクルでは、ここが入れ替わる。守るべきルールと網羅すべき項目を持たせたAIエージェントが、企画・リサーチから設計、実装、レビュー、スキャン、デプロイまでを主導する。人が担うのは初期のインプットと、修正・承認だ。

 「人がやることは、しっかりとした意図や指示をコンテキストで伝えること。また、AIに対してタスクの内容のチェックや、コードの修正、承認、マージを行う形になります」

 ただし平山氏は現時点の限界も添えた。AIエージェントは大きくて長い処理では勘違いを起こしやすい。だから役割と権限を明確にし、なるべくタスクを分割して実行させる。人がタスクを整理し分配することが重要になる。

 分担はこうなっている。CI/CD、ソースコード管理、各種セキュリティスキャンはGitLab Ultimate。レビューやテスト、チェックと修正はGitLab Duo。設計とコード実装はClaude CodeとKiro。AWS上の運用保守はAWS DevOps Agentだ。これらをGitLab Duo Agent Platformでつなぎ、統制された開発プロセスを変更せずにAI駆動開発を載せる。

レビュータスクへのAIエージェント導入成果。工数50%削減と待ち時間の解消
レビュータスクへのAIエージェント導入成果。工数50%削減と待ち時間の解消

 成果はレビュー工程に表れた。開発リーダー1人あたり週6時間かかっていたレビュー工数が3時間になり、50%削減された。レビュアー約20人分を積算すると、月240時間の削減になる。

 だが平山氏が最大の効果として挙げたのは別のところだった。マージリクエストを出してから、PLが忙しいために数時間から数日かかっていた待ち時間が、まったくなくなった点である。ルールや規定されたチェックはAIが行い、人はビジネスロジックの整合性と、AIの指摘やセキュリティ対応の精査に集中する。

熱意やビジョンを、どうAIに伝え、開発に組み込んでいくか

 平山氏は、AIエンジニアリングの進化を4段階で整理した。2023年からのPrompt Engineering、2025年からのContext Engineering、2026年のLoop Engineering、2026年7月以降のGraph Engineeringである。

 同社はLoop Engineeringの仕組み化に着手している。示されたのはGitLab.comとAWS上のAIエージェントを組み合わせた構成で、EC2インスタンス上のcronが10分ごとにエージェントを起動し、ラベルの付いたIssueやマージリクエストの存在を確認する。設計書を作るPlan agent、それに基づいて開発するDeveloper agent、MRをレビューするReviewer agent、パイプラインを監視するRelease watcher。これらを回しながら人が承認していく。

 この構図を、平山氏は「統制と自由」という言葉で整理した。統制側のGitLabが担うのは、セキュリティとガバナンスの担保、一元管理とトレーサビリティ、ワークフローの強制。自由側のClaude CodeやKiroには、コストと適材適所、拡張性、エンジニアの意向が入る。会社が指定したツールを使えと言うより、エンジニアが使いたいもので開発が動く仕組みを作るという考え方だ。

統制と自由度が両立するループエンジニアリングの実践。GitLabが担う統制と、Claude Code・Kiroが担う自由
統制と自由度が両立するループエンジニアリングの実践。GitLabが担う統制と、Claude Code・Kiroが担う自由

 組織面では、AI活用推進事務局の設立やAI駆動開発チームの立ち上げ、専用の予算を確保した経営陣と一体の推進が紹介された。AIの出力には必ず人による監査を入れる。一方で自社でもAIエージェントによるインシデントは起きており、情報漏洩やDBの破壊が現に発生していると平山氏は明かす。

 最後に示されたのが、変えたいものと変えたくないものの対比だった。変えたいのは開発スピード、生産性、品質。変えたくないのは、お客様への想いとサービス満足度、新しいユーザー体験へのこだわり、そして人の創造性である。

 「AIが進化して自動的にコードを作ってくれたり、業務を代行するようになっても、やはり一番重要なのは人の思いです」

 社員一人一人の熱意やビジョンを、統制された開発環境のなかでどうAIに伝え、開発に組み込んでいくか。平山氏はそこに、ソニーグループのパーパスである感動を生み出すサービスを創出するための要点を置いている。

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この記事の著者

中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)

 金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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