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生成AI活用により本番インシデントは242%増──ソニーグループが考えるAI時代の「統制と自由」

【GitLab Epic Tour 2026 Japan】統制と自由度の両立で加速するAI駆動開発

中野 佑輔(編集部)[著]

単一のプラットフォームがAI駆動開発を実現する絶対条件

 では、その変革のなかで同社はどう開発プロセスを作ってきたのか。ソニービズネットワークスがGitLabを導入したのは2015年だ。

 当時は新サービスの立ち上げに向けた開発環境の刷新で、Subversionからの移行だった。スクラム開発やアジャイル開発が始まったばかりの頃で、複数チームである程度の規模の開発を進めたい、Git flowを使いたいという現場のニーズがあった。

 その条件だけならGitHubでもよかった、と平山氏は振り返る。決め手は別のところにあった。GitLabの長所は、セルフマネージドで運用でき、ソニーグループの厳しいセキュリティ要件を満たせることである。自社で統制しやすい点が要件に合致した。

 導入後の10年間は、GitLabを中心にソニーグループ基準のセキュリティ要件を整備する期間だった。サービス開発プロセスガイドラインを作り、テストやセキュリティ環境と開発プロセス全体を構築していった。

開発プロセスの整備とGitLab Ultimateへの統合。2016年から2025年までの経緯
開発プロセスの整備とGitLab Ultimateへの統合。2016年から2025年までの経緯

 転機は2025年のGitLab Ultimateへの移行だ。Ultimateへの移行に伴い、ライセンスコストは上がる。だが複数のDevOpsツールとセキュリティツールをUltimateに統合したことで、それぞれのライセンス費用と、それらを運用するエンジニアの工数を大幅に削減できた。確実なROIを狙った投資だった。

 そしてこの統合が、のちのAI駆動開発の必須条件になる。「単一のプラットフォームであることは、現在私たちが取り組んでいるAI駆動開発を実現するための絶対に欠かせない条件でした。なぜなら、開発に関わる全てのコンテキストがGitLabにあるからです」

「速度を前借りして、品質の負債を背負う」ことにならないか

 AI活用の前に、同社は自社の開発プロセスを分析した。社員の工数のうち、コードを書く作業は約30%にすぎない。残りの70%は、要件定義、設計、レビュー、テスト、そしてソニーグループ基準のセキュリティガバナンス対応に費やされていた。

 現場の課題も具体的だった。スキル差による品質のばらつき、上流工程の要件漏れによる見積もりとの乖離、設計工程の人的ミス、レビューの属人化とボトルネック化。自社でサービスを作る事業者は常に新しい企画を打ち出し、設計、実装、リリースに追われる。時間がない中で要件定義が進んでいく。

 だからこそ、と平山氏は言う。「AIを使ってコード実装のスピードを上げるだけでは、これらの課題は解決しないと思っています」

 その根拠として示されたのが、米国の調査データだった。25万人規模のエンジニアを分析したレポートなどによれば、個人のコーディング速度は30〜58%向上し、プルリクエストまでの時間は48〜58%短縮される。技術スキルが高いシニア層ほど恩恵が大きい。

米国調査に見るAI導入のトレードオフ。速度の向上と、レビュー時間やインシデントの増加
米国調査に見るAI導入のトレードオフ。速度の向上と、レビュー時間やインシデントの増加

 問題は、生成AI活用の負の側面だ。同じ調査で、PRレビュー時間は441%増、バグは58%増、本番インシデントは242%増という結果が出ている。生成コードの脆弱性は15〜18%増え、手戻り率は2.6倍になった。「なぜそうなるのか」という技術理解度の低下も指摘されている。

 平山氏はこれを一文にまとめた。「コーディング速度の向上以上にマイナス面があり、開発するだけのツールとして活用すると、開発速度を前借りして、後から品質の負債を背負ってしまうことになります」

 取るべき方向は明確だった。ツールを導入して推進するだけではなく、組織とチームとして機能するAI駆動開発を導入する。要件定義から実装、テスト、リリースまでをGitLab上で一元的につなぎ、法人サービス品質の開発プロセスを実現する。

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人がタスクを整理して分配し、しっかりとした意図をAIに渡す

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この記事の著者

中野 佑輔(編集部)(ナカノ ユウスケ)

 金融系SIerでの勤務を経て2025年よりCodeZine編集部所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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