分断されたデータを活用するには? IDでつなげる顧客接点
TOKYU IDの開発・導入支援を担当する高橋圭釈氏は、グループ全体の顧客データが断片化しているという課題について語った。
「データはある。でも、使えない」。東急が長年リアルアセットに頼ってきたゆえの課題を端的に示す言葉だ。交通・不動産・生活サービスなどの各サービスのシステム上で顧客接点や会員情報がバラバラに存在しており、1人のユーザーが東急の複数サービスを利用していても、東急側からは別人として扱われていた。「電車に乗っているAさん」と「東急ストアで買い物をしているAさん」は同一人物として認識されていなかったのだ。
TOKYU IDは、断片化した接点を横軸でつなぐために作られた共通IDだ。「TOKYU IDは共通IDのため、作っただけでは価値がなく、各サービスに導入されお客さまに使っていただいて初めて価値が生まれます」と高橋氏は説明する。高橋氏は各サービスへの導入支援とアドバイザリーを担いながら、各サービスへの導入後も運用上の課題に向き合い続けている。
こうした支援にあたっては、OIDC(OpenID Connect)に基づく認証基盤としての一貫性を保つことも重要になる。そのうえで、改善の相談を各サービスチームから受けながら、仕様の範囲内で改善策を探り、各プロダクトとともにIDの価値を育てている。「IDを登録したくてたまらない」というユーザーは基本的に存在しない。良いサービスがあるからこそIDを登録してくれるのであり、「ただデータを集めること自体が目的ではないので、データを活用してお客さまに良い体験を提供することを目指しています」と高橋氏は語る。顧客のデータを対価に体験の質を上げていく価値の循環こそが、TOKYU IDの設計思想の核心といえる。

データがつながる時代、エンジニアの価値は「実装」の先にある
セッションの終盤、「10年後のエンジニアは何を作る人になっているか」という問いに3人はそれぞれ答えた。星野氏はオフィスビルへのAI導入による、働く体験の変化に期待を寄せた。中川氏はAIの普及でデータが集まる時代だからこそ、「どこまでをAIに渡してよいか」「どう安全に管理するか」という守りの設計の重要性を説いた。膨大なデータが集まっても信頼を失えば意味がない、というのが中川氏の考えであり、「安心・安全の東急」として、お客さまが安心してデータを預けられる関係性を築いていくことが次の100年の基盤になると語った。高橋氏は、東急エリアのリアルとデジタルが自然につながり、AIが最適な体験を提供する世界を目指すと述べた。
最後に、野口氏はセッションのまとめとして「AIが行動を変えていく時代だからこそ、エンジニアの価値は単に実装することだけではありません。これは東急の内製開発だけでなく、これからの時代にすべてのエンジニアに求められるスキルではないか」と語り、「次の100年も東急のまちづくりを進化させていく」と締めくくった。
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