3か月が4時間になった開発に、従来のツールは追いつかない
Olson氏によれば、イノベーションと開発のスピードは従来より格段に速くなっている。毎月1回リリースするペースではなく、1時間に1度アップデートしていく速度感だ。前提が変われば、従来の開発ツールは使い物にならなくなる。必要になるのは「自己治癒するシステム」、つまり状況を把握し、改善点を自分で見つけ、自分で修正してより良い使用感へアップデートしていく仕組みである。
これを実装したソリューションが「Novus」だ。Novusは開発中のソースコード(デモではGitHub)に直接連携し、そのアプリケーションがどう使われているかを常時リアルタイムに把握する。特徴的なのは、コードに変更が加わるたびに、計測方法をどう変えて何を見る必要があるか、どこをアップデートすべきかを自己判断して設定する点だ。従来は人手で回していた計測の追随を、システム側が引き取る。
さらに、ユーザーがエージェントに入力した言葉からつまずきを分析し、ソースコードに立ち返って修正案を即座に導入、結果として何が変わったかまで見られる。中核の「Cortex」に蓄積されたナレッジをもとに、Slackへの共有やIssue起票、OpenAIやCursorといったコーディングエージェントへの直接の指示も可能だという。Olson氏はこの延長で、現状を伝えるだけでなく、どういう問題があり次に何をすべきかという助言までを含めてアナリティクスと呼ぶべきだと述べた。
プロダクトマネージャーの立場でこれを読み替えると、論点は担当領域の移動になる。計測項目の設計と維持は、プロダクトが速く変わるほど積み上がる運用負債である。そこが自動化される前提に立てば、プロダクトマネージャーに残るのは「何を計測するか」の維持ではなく「何を問うか」の設計になる。冒頭のシェルフウェア問題に引き戻せば、それは「自社にとって『活用されている』とは何か」を定義する仕事にほかならない。
日本市場での打ち手──12月のハッカソンと「Leo」
発表されたPendo Agent Toolkitは、ユーザーの行動データをAIエージェントに連結し、個別最適化されたオンボーディングやプロアクティブなワークフロー支援、解約リスクの早期検知、フィードバックの自動分類までを担う。世界で最初のリリース地は日本で、グローバルリリースは同じ週に予定していると質疑応答でOlson氏は明かした。スイート形態のライセンス提供で、エージェントアナリティクスは会話数に応じたライセンスであるため従量課金的な性質を持つ。日本では、社内向けに大和ハウス工業、社外向けにJR東日本アプリといった採用事例がある。
今後の日本での取り組みは2つ。一つは、Novusの日本ローンチに向けたハッカソン。Novusは導入してすぐ成果が出る種類の製品ではなく、1か月ほど運用して初めて示唆が出てくる。その特性を踏まえ、運用を経てチームや個人単位に発表してもらいアワードの形にする流れを12月に予定している。Novus自体の価格は未定で、クレジットやトークンをもとにした値付けの可能性があるという。
もう一つが新製品「Leo」だ。Pendoに蓄積された行動データ、感情、操作の記録に対して、プロンプトベースで問いかけられるようにする製品で、日本のデータセンターでも利用できる。花尾氏が強調したのは、到達できる人の範囲が変わる点だった。ビジネスユーザーがITリテラシーを問われずに、「なんで今売上が上がっているのだろう」と自然言語で聞いて示唆を引き出せる。
「SaaS is Dead」への答えと、意思決定の再設計
質疑応答では、「SaaS is Dead」という潮流への見解も問われた。Olson氏の答えは、この言葉を突き放すものではなかった。
「正直、やはりそのSaaSが顧客の満足度に十分至っていなかったから、こういうヘッドラインになってしまったんではないかと私は思います」
だからこそ「SaaSは死んだ」と言われないように満足度を上げていく、その支援をするのがPendoの役割だという整理である。あわせて同氏は、MCP経由でのやり取りは、UIを介さない「ヘッドレス」な選択肢が増えたという意味だと説明した。
花尾氏の締めも同じ方向を向いていた。開発のスピードは上がり続け、やがて民主化してSIerだけができるものではなくなる。だからここから先で重要になるのは判断力であり、意思決定のスピードと質こそが競争を決める。この日繰り返された「意思決定の再設計」は、翌日開催された同社のフラグシップイベント「PendomoniumX Tokyo 2026」が掲げたテーマ「AIとともに『判断できる組織』へ」ともそのまま重なる。
見えていないものを、どう定義するか
冒頭の問いに戻る。作ったエージェントが本当に使われ、成果を出しているのか。それに答えるには、エージェントとのやり取りを含んだ行動データを計測する基盤が必要になる。これがこの日のPendoの回答であり、Agent Toolkit・Novus・Leoという3つの製品はいずれもその線上に並んでいた。
ただし、この回答が届く範囲には限界がある。基盤を入れれば「AIが使われているか」は見えるようになる。だが「どこで価値が生まれているか」から先は、何を価値と呼び、どの指標で経営層に説明するかを決める作業を通らなければ埋まらない。それは製品が代行できる部分ではなく、導入する側に残る仕事である。
読者が自社に持ち帰るとすれば、問いは3つに絞られる。
- 自社は「活用されている」状態を何によって定義しているか
- エージェントとの対話ログは、行動データとして計測できているか
- その数値は、そのまま経営層への説明に使える形になっているか
棚に置かれたままのエージェントを探すより、この3つに答えられない状態を見つける方が、おそらく先となる。
